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日常生活用具給付にも規制緩和を

岩下恭士

 パソコンの画面情報を点字で表示する点字ディスプレー。紙に打ち出された点字と違って、点字を構成するピンが上下に動くことで、ホームページやE-メールをリアルタイムに表示できるため、英語ではRefreshable Brailleなどと言われている。
 この点字ディスプレー、点字の読める視覚障害者にとってはパソコン本体以上に貴重なもので、実際価格も高い(平均50万円前後)。
 昨年度から盲聾者に限って国の日常生活用具の給付対象になったが、自治体によっては柔軟な解釈で視覚単一障害者でも給付を受けられるケースがある。そこで試しに私の居住する渋谷区の福祉課に問い合わせてみたが、案の定「視聴覚重複障害者でなければ認められません」という杓子定規な答えが返ってきた。
 残念! 給付を受けたかったら寛大な横浜市などに住みなさい、ということか。しかし、自治体独自の予算枠で行っているところは理解できるが、国の事業枠内でありながら、自治体の裁量で違いが生じるというのはどこか納得できない。
 そこで、視覚障害者用情報機器専門の通信販売を請け負うA社に、公費負担による日常生活用具の購入事情を聞いた。
 同社によると、「一般的に、関西の自治体は柔軟。市販のMDプレーヤーでも差額を自己負担すれば盲人用テープレコーダーの扱い。自動朗読システム(スキャナ込み)も拡大読書機として公費申請できる。一方、特に厳格な東京23区などは、テレコの機種までカタログにあるものに限定される」という。
 唯一の国産ピンディスプレーメーカーのKGS社は、まもなく(5月)定価20万円を切る破格の携帯型点字ディスプレーを発売する。同社では「この価格で利益は全然出ませんよ」と話しているが、決して誇張とは思えない。
 ユーザーの立場から言えば、せっかく便利な機器ができても、すぐに生産中止になってしまい、高いお金を出して買った製品なのにメンテナンスも受けられず、壊れたらそれっきりというのではおいそれと購入に踏み切れない。
 もともとシェアが小さい福祉機器。エンドユーザーが評価するメーカー品の安定供給を図るためにも、給付対象品目の拡大と良質の福祉機器の開発を手がけるメーカーの新規参入を認める規制緩和が望まれる。

(いわしたやすし 毎日新聞社総合メディア事業局サイバー編集部)