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体験
「夢のたまてばこ」の実践から

吉澤雅之

 「夢のたまてばこ」。知的障害をもつ人たちによる古本屋をオープンして約1年を迎えました。この1年の経験は、知的障害者が店員として十分にやっていけるという確信であり、証明であると思っています。それとともに、無数の夢の可能性とそれを現実化する栄養分をいただいたような気がします。
 「キャッシュ・デスク・プログラム」。知的障害者向けレジスターという新しいコミュニケーションツール。「テレビ電話遠隔管理システム」というサポート機器により、このことが可能になりました。
 現在、4人の知的障害者と2人のサポーターで営業しています。従業員募集は、地域の施設の先生方から店員に向くであろう人たちを推薦していただき、さらに私どもが面接し、絞り込んで採用しました。
 一般の人たちの中に障害者を就労させるというのではなく、障害者が中心の一つのチームを作ろうという思いで採用したことがよかったように思います。今では、このメンバーで業種の違う物販でも営業できるなという確信があります。
 レジスターの操作は、全員が比較的簡単に覚えたようです。実際の業務では、早い、遅いの違いはあれ、全員ができます。中には、2けたの計算ができるようになった人など、経験が身に付いているようです。やはり、一番大きな収穫は、「できること」と「できないこと」「得意なこと」と「不得意なこと」の一人ひとりの特性が分かったことです。適材適所と言いますか、素直な性格の人たちなので、できないことや不得意なことを補うように組み合わせますと、非常に安定して強力な組織になります。
 「どうやって使い切るか」「むだなものはない」というのがリサイクルの理念です。これはまさに適材適所の考え方と全く同じものです。人も物も自分の機能を発揮したり、使い切った時がいちばん美しいものです。
 1年の経過は以上のような感じですが、私たちのような施設がたくさん増えればいいなという思いがあります。知的障害者が店員(物販業)に従事できることは明らかであり、そのためにはビジネスとしてしっかり押さえると言うことだと思います。
 行政が行う第3セクターは8割が赤字と言われます。そこで、行政はNPOという、より積極的に民間企業が公益事業に参加する政策を進めています。そのためにより多くの協力者を募る必要があります。
 失業率が過去最低という時代です。ボランティアだけでは続かないことは明らかです。たとえば、行政に好立地の施設を低額で貸していただき、その地方の有名店に商材を提供していただく、そこで就労する家族会が運転資金を提供する、このようなことが実現できれば、すばらしいことだと思います。私どもが経験した1年問の実績をどうぞ、いつでもお聞きいただきたいと思います。このような施設を運営される方に全面的に協力させていただきます。

(よしざわまさゆき 株式会社吉澤専務取締役)