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ボランティア活動をより広げるために
-長野市ボランティアセンターの新たな取り組み-

小林博明

1 ボランティア活動を広げる3要素

 ボランティア活動を広げていくには、いくつかの要素が必要です。長野市ボランティアセンターでは三つの要素を大切にしていこうと考えて進めてきました。一つは活動のよりどころとなる拠点、場の整備です。二つ目に、活動を担う人づくりです。三つ目に活動を進めていくための資金づくりです。この中で特に力を入れて取り組んできたのが、人づくりです。ボランティア活動を広げ、振興していくには、実際に活動を担うボランティアの養成も必要ですが、活動を調整したり後押ししたりするコーディネーターやアドバイザーも大切な役割をもちます。また、課題を発見し解決していく力をもった市民活動家が必要です。
 長野市ボランティアセンターは、長野市社会福祉協議会の事業として、昭和52年から始まり、58年にボランティアの拠点としての場を「ボランティアコーナー」として開設し、コーディネーターを配置し、ボランティア活動の振興に取り組んできました。その後、国のボラントピア事業の指定を受け、ボランティアコーナーから「ボランティアセンター」へその機能と場の拡大を図ってきました。そして、現在、5階建てのふれあい福祉センター開設に伴い(平成6年7月)、1階フロアをボランティアセンターとして設置し、年間6万人が利用するボランティア活動の拠点となっています。
 しかし、ボランティア活動に取り組む人は、実際には3万人程度で長野市の人口36万人からすると、その1割にも満たないのが現状です。そこで、ボランティア拡大策としていくつかの試みを始めました。その中の人づくりの事業に絞って紹介してみたいと思います。

2 ボランティアアドバイザーの養成

 市の中心部にあるボランティアセンターだけではボランティア活動は広がらない、ということで、地域のセンターづくりに取り組んでいます。地域にある福祉施設、学校、行政の支所などにボランティアセンターの機能をもってもらい、そのネットワーク化を進めています。そして、その機能を高めるために、地域のさまざまな組織、団体にボランティアの後押し役をする人「ボランティアアドバイザー」をつくることで、地域のミニボランティアセンターの活性化を進めようと、平成8年度から「ボランティアアドバイザー養成講座」を開催してきました。講座の内容は、次のような内容を基にして開いています(図1)。 

図1

1.ボランティア活動の基本 1.ボランティアの基本理念
2.アドバイザーの役割
3.ボランティア活動の現状
2.ボランティア推進機関の役割と連携 1.ボランティアセンターの状況
2.ボランティアコーディネーターの役割
3.アドバイザーに必要な技術 1.相談援助の方法
2.情報の収集・提供の方法
3.ネットワークの方法
4.アドバイザー同士の連携 1.交流会
2.今後の活動に向けての情報交換会


 通常の講義形式の講座ではなく、ワークショップを中心にして、アドバイザーとしての役割やボランティアセンターとの連携の仕方などを学び、ボランティア同士のネットワークを進めるための交流会も開いているのが特徴です。
 毎年、その年のテーマを決めて行っていて、ボランティアセンターの窓口業務を応援する「よりいい会」が生まれたり、なんでも気軽に相談に乗る「あいまい会」が生まれ、ボランティアセンターを中心にして活動を進めています。
 平成11年度は、さまざまなボランティア情報をどう伝えるかということにテーマを絞り、講座を進めてきました。その参加者が中心になり、ボランティアのホームページづくりのプロジェクトに発展しました。平成12年4月にはボランティア情報を伝えるホームページ「ボランティアネットながの」がスタートしました(URL http://www.vnetnagano.or.jp/)。このように、ボランティア活動の後押し役としてのアドバイザーの活動が少しずつ進み始めています。

3 市民活動プロデューサー養成塾

 ボランティアセンターの願いは、より住みやすい地域社会をめざし、市民が主体となって地域の課題解決に取り組む「市民活動」が活発に行われるようになることです。しかし、こうした思いはあっても、「何から始めたらいいか」と、一歩を踏み出せないでいる人が多いのが実情です。そこで、熱意ある「市民活動予備軍」を発掘し、自らの手で地域を変えようとする市民の先駆者となってもらおうと、平成11年に、初めて「市民活動プロデューサー養成塾」を開きました。ボランティアセンターの運営委員長が塾長となり、他の運営委員らが講師役の師範として、市民活動・ボランティア活動推進のノウハウを伝授しました。
 この養成塾では、「ボランティアアドバイザー」というボランティアの「後押し役」ではなく、自ら課題を発見し、解決に向けて仕掛けていく「仕掛け人」をつくろうというものです。仕掛け人が増えれば、多様な活動が広がり、それに伴いボランティアも増加していきます。
 講義に参加しただけでは「やったつもり」になりがち。そこで、課題発見からワークショップを取り入れ、講座の中で実践までしてしまおうというのがこの塾の特徴です。最後には活動の成果を発表し合い、優秀な活動には「コロンブス大賞」の授与という年間を通してのプログラムです(図2)。

図2

第1期   講義 ワークショップ
第1回 私の地域プロデュース手法論 目標設定・課題発見
第2回 市民活動型の市民活動論 課題の整理
第3回 地域活動型の市民活動論 活動計画づくり
第4回 実践プログラム作成の心得 実践プログラムづくりとプログラム発表会
第2期   中間報告会・活動相談会  
第3期   活動発表会・表彰式  


 初めての試みでしたが、70人もの参加があり、関心の高さに驚かされました。取り組んだ課題は、「手作りイベントで身近な町おこし」「ゴミ減量を考える環境藩」「地域での特別養護老人ホーム支援のグループづくり」「愚痴がこぼせる介護者サロンづくり」など、どれも今の時代の課題に真正面から取り組む内容でした。
 活動を成功させるうえで最大のポイントとなるのは課題です。その課題を発見することから塾がスタートしました。課題の見つけ方は「どんな小さなことでも自分が困っていること、悩んでいること、こうあったらいいな、実現したいなと思うことをじっくりみつめること」。住んでいるからこそわかる地域の課題、身近な生活感覚から生まれた問題だからこそ熱くなれる。さらに、「こんなことを考えているのは自分だけだろう」と考えずに、だれかに伝えることが前進につながる。
 塾では、課題発見の仕方についてみっちりとワークショップで習得してもらい、課題別の12のグループができました。現在、塾終了後もこれらのグループが、自分たちの見つけた課題解決に向けて着実に活動を進めています。
 今年度の塾のテーマは、「地域のミニ拠点づくり」です。近隣関係の希薄化、孤立・孤独の問題が浮き彫りにされてきている中で、安心して暮らせる地域づくりをめざして何ができるかを考え実践する「市民活動プロデューサー養成塾」の第2回目がまもなく始まります。
 アドバイザーや市民活動プロデューサーが地域のあちこちにいる環境を創り出すために、ボランティアセンターもその役割を試される時がきています。

(こばやしひろあき 長野市ボランティアセンター室長)