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ブックガイド

障害者福祉全般を
理解するための私のおすすめ本

奥野英子

 今年から、障害者施設や障害者にかかわる地域事業に従事する方々が、障害者福祉の全体像を把握し、障害者福祉の理念、国際的動向、わが国における動向、実施体制、具体的な福祉サービス、その利用方法、一人ひとりのサービス利用者に対してどのように支援したらよいのかなどを勉強していただくための本をここにいくつかご紹介したい。

1.障害者福祉の全体を理解するために

 障害者福祉に従事する専門職には、国家資格としての社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士などがある。これらの資格を取得する際に「障害者福祉論」の科目が試験科目となっている。したがって、障害者福祉の全体を勉強するためには、さまざまな書店から発行されている「障害者福祉論」を入手して勉強することが適切であろう。各自でさまざまな「障害者福祉論」を手にしてみて、読みやすいものを選ばれたい。

『障害者福祉論』(三訂 介護福祉士養成講座3、中央法規出版、2000年、253頁)
 介護福祉士のテキストとして作成されており、障害者福祉の考え方、障害の概念と障害者の実態、障害者施策の体系、身体障害者、知的障害者、精神障害者、重複障害者・難病者に対する福祉サービス、教育・雇用・所得保障などの関連分野、それぞれの障害別の課題や援助サービスの具体例などがまとめられている。

『障害者福祉論』(三訂 社会福祉士養成講座3、中央法規出版、1999年、341頁)
 社会福祉士の資格取得をめざす人のためのテキストであり、通信教育にも使われている。障害者福祉の考え方、障害の概念と実態、障害者福祉の史的展開、障害者施策の体系、障害者福祉の根拠法、実施体制、各種障害者のための具体的な福祉サービス、関連分野、障害者運動と当事者参加、相談援助活動、援助活動事例などがまとめられている。

『障害者福祉論1』(新・社会福祉学習双書2000 第6巻、全国社会福祉協議会、2000年、265頁)
 新・社会福祉学習双書は社会福祉従事者の基礎資格である「社会福祉主事」養成課程のテキストとして20巻から構成されている。障害者福祉論1には障害全体に共通の総論と身体障害者にかかわる内容がまとめられ、知的障害と精神障害については、それぞれ下記のとおり2と3に分けてまとめられている。

 総論では障害の概念と範囲、障害者の実態、理念、沿革、身体障害者福祉では身体障害者福祉行政の沿革と今後の方向、実施体制とサービス、他法による福祉措置、身体障害者のリハビリテーション、福祉機器、民間活動、援助活動などがまとめられている。

2.障害別の入門書として

 上記の障害者福祉論1は、身体障害者福祉論にも相当する。

『障害者福祉論2』(新・社会福祉学習双書2000 第7巻、全国社会福祉協議会、2000年、247頁)
 知的障害者福祉論に相当するものであり、知的障害者福祉行政の沿革と今後の方向、知的障害者福祉法、民間活動、援助活動、知的障害者の自立と権利保障、心身障害者福祉、治療教育など、知的障害者、身体障害児、知的障害児、自閉症児、重症心身障害児を中心にまとめられている。

『障害者福祉論3』(新・社会福祉学習双書2000 第8巻、全国社会福祉協議会、2000年、212頁)
 精神障害者福祉論に相当するものであり、歴史、福祉行政、精神障害の基礎知識、福祉の概要、援助のあり方などがまとめられている。精神障害者への支援を行うための入門書とも言える。

3.障害者福祉に関する参考書、資料集として

『障害者のための福祉2000』(中央法規出版、2000年、342頁)
 身体障害、知的障害、精神障害のある人々の現在の状況、福祉施策の概要がまとめられているとともに、障害者の権利宣言、障害者プラン、各種審議会から出された主要な答申、指針などの資料も掲載されている。また、わが国において障害者福祉の取り組みが開始された昭和21年から現在に至るまでの障害者福祉の歩みが年表としてまとめられ、障害者にかかわる関連機関、施設のリストがあまねく掲載されているので、障害者福祉に従事している者にとっては、必携の1冊と言える。

『障害者白書』(総理府編、毎年12月発行)
 障害者白書は、障害者基本法(平成5年)に規定され「障害者のために講じた施策の概要に関する報告書」として毎年総理府が発行する政府刊行物である。総理府を中心とし、厚生省、文部省、労働省、通産省、建設省、郵政省等19省庁による障害者施策の最新の情報を得るためには貴重な本である。

4.その他、幅広い情報を得るために

 障害者福祉に関する全国の動向、国際的動向、障害当事者の運動、文化芸術活動、各種の支援活動に関する情報を幅広く得るために最もおすすめしたいものは、本誌「ノーマライゼーション-障害者の福祉-」である。ノーマライゼーションを毎月読んでいれば、障害者福祉に関する最新情報が入手できる。また、最も学習できる情報源は援助の対象者である。さまざまな障害をもつ援助対象者から、パートナーシップの姿勢でたくさんのことを学んでいただきたい。

(おくのえいこ 筑波大学大学院助教授)