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フォーラム2000

国際障害同盟(IDA)が発足

高田英一

国際障害同盟(IDA)が発足

 去る2月6日と7日の2日間、ニューヨーク市で第2回「国際障害者団体長同盟」(International Disablity Presibens Alianc:略称IDPA、事務局所在地南アフリカ・ケープタウン)会議が開催された。
 出席者はリサ・カウピネン氏、筆者(世界ろう連盟=WFD)をはじめ、世界盲人連合 (WBU)、障害者インターナショナル(DPI)、知的障害者親の会(II)、精神治療利用・生還者世界ネットワーク(WNUSP)、世界盲ろう連盟(WFDB)の6団体から各2人ずつ計12人のほか、オブザーバーとして国連の「障害者の機会均等化に関する標準規則」特別報告者ペンクト・リンドクビスト氏が出席した。この会議の議長はリサ・カウピネン氏(WFD)、事務局長はリディア・プレトリウス氏(南アフリカ)であった。
 IDPAは1999年2月に南アフリカ・ケープタウンで、スウェーデン国際障害者支援協会(SHIA)主催の国際人権会議と合わせ、最初の会議がもたれた時に結成された。その後、スウェーデン視覚障害者連盟(SRF)から資金提供を得て活動を継続している国際障害者当事者団体長からなる国際組織である。
 今回の第2回会議で、今後の協力・共同活動強化のために、もっと組織的で継続的活動を行うにふさわしい名称に変更しようというSRFの提案により、論議の結果、IDPAは発展的に解消し「国際障害同盟」(Internaional Disablity Aliance:略称IDA)が誕生した。新議長にヨシュア・マリンガ氏(DPI)があたり、事務局長はリディア・プレトリウス氏が引き続き務め、事務局所在地は南アフリカ・ケープタウンである。

IDAの目的

 第1回「国際障害者団体長同盟」(加盟6団体のうち、障害者当学者団体でないのはIIのみ、現段階では知的障害者の国際組織は存在しない)は、障害者当事者組織を中心に協力・共同の国際活動ネットワークのあり方を探るという目的で開催されたものだが、この会議でその目的を「世界政治と国際障害領域において、障害者の声を強化し、障害者に影響する共通課題に関する合同戦略を確立する」ことを確認した。
 IDAの結成を主唱したキキ・ノルドストレム氏(WBUまたSRF)は、最初に会議開催の経過と背景説明で次のように述べている。「諸国際障害者当事者団体には長い間共通課題、たとえば北京会議において課題となった性差別問題などについて緊密に連携し、活動したいという希望をもっていた。別に懸念されることは、ある組織が国連の諮問過程において権限なく他団体のために発言するよう依頼されることがあった。さらに「国連専門家パネル」特別報告者(リンドクビスト氏)が共通の理解、構想、戦略の下にすべての障害者当事者組織が所属組織を代表して発言できる最高のレベルで共同活動を奨励している」。
 また、IDAは次のような点を指摘している。「国際的には障害者にかかわっていくつものNGOがあるが、IDAからみればICOD(国際障害協議会)は障害者の声としての任務がないのに運営されているという疑念と懸念があり、同協議会は解散すべきであり、IDF(国際障害財団)は国際的に障害者の声と称して財源を独占しょうとする傾向がある」。
 以上のキキ氏の発言、さらにIDAの指摘は障害者当事者組織の共同活動の背景説明であるとともに、国際的障害者当事者組織の意義を強調したものである。この第1回会議の成果を踏まえ、第2回会議において発足したIDAは、目標として次の項目を掲げた。
1.世界政治と国際障害領域において障害者の声を強化する。
2.国際障害権利組織が積極的に参加している既存のネットワークを強化する。
3.国連制度における「障害者の機会均等化に関する標準規則」特別報告者に助言する「国連専門家パネル」を援助する。
4.国際レベルで共同活動を行うよう国際障害権利組織の会員を励ます。
5.障害者に関する共通課題に関する広範な位置付けと合同戦略を確立する。
 また、成果として次のことを確認した。
1.IDAにおいて、国連制度と同様に国際レベル、地球規模で障害者代表として効果的に発言し、メディアを通して障害問題を擁護する能力をもつ。
 さらに合同政策の対象として、
1.障害と人権
2.障害女性と「女性差別撤廃条約」
3.障害児と「子どもの権利条約」
4.障害、開発、貧困の減少
等を挙げている。

障害者当事者組織

 2月8日から17日まで開催された第38回国連社会開発委員会は、親機関である経済社会理事会に対し「障害者による、障害者のための、障害者の機会均等化のさらなる促進」と題する決議の採択を要請した。それは、「障害者の機会均等化に関する標準規則」の条約化を展望し、当面その継続と強化を基調としているが、タイトルを「障害者による、障害者のための、障害者の機会均等化のさらなる促進」としていることは意味深い。それは障害者当事者組織の意義と任務を象徴的に示しているからである。障害者の「機会均等」とその発展としての「完全参加と平等」の達成は、ほかならぬ障害者当事者によって達成されなければならない課題であることが明らかにされたわけであるが、この決議に先立つ障害者当事者の国際組織IDAの結成は、まことに時宜を得たものと評価できる。
 ただ、IDAにはIIという知的障害者の父母などの保護者組織、当事者でない組織が含まれるが、それはII自身が認める(IIは知的障害者が理事になるなど、当事者組織になるように努めていると発言している)ように過渡的なものと理解され、IDAが当事者組織である性格を本質的に変えるものではない。
 IDAは障害者の種別組織を認識した国際障害者統一組織である。そして、それはIDAを構成するどの障害者種別組織の優越性も認めず、相互に対等平等であることを確認している。
 たとえばIDA議長の任期は1年間として輪番制を採用する。IDPA時代の第1期はリサ・カウピネン氏(WFD)が務め、IDAとなった第2期はヨシュア・マリンガ氏(DPI)が務めることとなった。第3期は別の団体が務めることになっているが、それは構成団体の平等性を的確に表現していると思う。
 また、会議は1時間ごとに休憩を設け、進行速度は大変遅い。なぜなら、ろう者の手話通訳者や盲ろう者の触手話通訳者、リアルタイム点字オペレーターなどの疲労を考慮するからであり、これら通訳を配置することによって増える手数による会議のスローペースを配慮するからである。それは、もっとも遅れてくる者に合わせたやさしい会議のあり方と思う。あれやこれやを含め、IDAは統一組織の民主性を発揮した組織と言える。

その課題

 IDAを構成するWFD、WBU、DPI、II、WNUSP、WFDBはそれを構成する各国の単位組織は発展途上国はともかく、先進国では十分強力である。強力とは組織構成員にその国の当該障害者が多く参加し、政治的な影響力をもち、財政的にも安定していることを言う。しかし、国際組織としては、特定の先進国組織でなく、先進国も発展途上国も含む一つの国際組織として見た場合、IDAを構成する国際組織のどれをとっても、十分強力とは言えない。
 たとえば、WFDを構成する財団法人全日本ろうあ連盟あるいはフィンランドろう者連盟はそれぞれに強力であっても、その国際組織としてWFDは強力とは言えない。特に財政面においては極めて不安定である。そのため、国際統一組織を結成しても、その活動を実際に軌道に乗せることは決して容易ではない。何よりも情報を交換し、会議を開いて方針を決定し、具体的な行動を実施するには財源の保証を必要とするからである。
 そこで、当面何らかの国際的な基金機関に財政支援を仰がなければならないだろう。最初はSRFの基金拠出によってIDPAの結成とその発展としてのIDAの活動にこぎ着けることができたが、SRFが基金拠出を継続することは困難であろう。
 しかし、IDAの継続的な基金拠出機関としてスウェーデン国際障害者支援協会(SHIA)などが候補に上り、スウェーデンにおいてIIは政治的に極めて強力なので支援取り付けの可能性は十分あると思われる。しかもスウェーデンに限らずフィンランド、デンマーク、ノルウェーなど北欧諸国はこのような国際的障害者運動支援について経験豊かである。当面、このような基金機関から十分な財政支援を受けることがIDA発展と活動拡大の鍵となろう。
 より長期的な観点に立てばIDA自身が強力になること、そのためそれを構成するWFD、WBUなどの国際障害者種別組織が強力にならなければならない。ろう者組識であるWFDはその強化のための方策を今、模索しているが、どうやら展望がみえてきたところである。
 IDAがRIなど他の障害者支援組織と協力・共同しながら、「完全参加と平等」をめざす国際障害運動を盛り上げていくにはまだ時間はかかるが、そう遠い先のことではない。

(たかだえいいち 全日本ろうあ連盟副理事長、世界ろう連盟理事)