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「障害者緊急雇用安定プロジェクト」の現状報告     

輪島忍

 昨年2月から開始した「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は、これまで順調に推移しています。9月1日現在、47都道府県で、3498事業所から、4972人の受け入れ希望が日経連に登録されています。この中で3950人が職場実習を経験し、そのうち2756人がトライアル雇用に移行し、1574人が本採用となっています(表参照)。「職場実習・トライアル雇用」の実施目標は、平成11年度と12年度を合わせて4100人となっており、先程述べた通り、すでに3950人が職場実習を経験していますので、年度末を待たず目標数字が達成される見込みです。「障害者緊急雇用安定プロジェクト」の利用を検討されている方は、お早めに「職場実習計画書(様式1号)」を提出していただきたいと思います。

都道府県別・受付状況合計 (平成12年9月1日現在)

都道府県 実施件数 希望人数
(A)
実習のべ人数
(B)
トライアル
人数
B/A% 雇用移行
合 計 3498 4972 3950 2756 79.4 1574
北海道
青森
岩手
宮城
秋田
山形
福島
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
富山
石川
福井
山梨
長野
岐阜
静岡
愛知
三重
滋賀
京都
大阪
兵庫
奈良
和歌山
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
沖縄
49
53
110
56
13
76
22
31
34
36
163
65
460
221
32
24

15

80
15
70
92
39
16
195
570
187
10
34

22
130
56
12
29
10
11

196

27
39
58
40
14
59
80
80
123
80
13
96
35
42
56
40
237
131
702
341
40
25
11
16
10
102
30
97
183
48
17
230
829
220
11
45

30
161
95
13
36
12
11

266

37
56
92
65
20
90
64
60
114
50
12
82
31
34
48
38
196
66
472
284
38
24
10
11

82
15
74
129
42
14
197
693
204

42

21
141
70
13
32
10
10

220

33
53
77
29
14
70
44
44
82
32

54
19
26
35
28
137
47
346
216
23
13



55
11
48
91
28

136
481
132

25

16
101
50

18



163

18
38
52
21

44
80.0
75.0
92.7
62.5
92.3
85.4
88.6
81.0
85.7
95.0
82.7
50.4
67.2
83.3
95.0
96.0
90.9
68.8
40.0
80.4
50.0
76.3
70.5
87.5
82.4
85.7
83.6
92.7
81.8
93.3
100.0
70.0
87.6
73.7
100.0
88.9
83.3
90.9
100.0
82.7
100.0
89.2
94.6
83.7
44.6
70.0
77.8
24
24
55
14

28

13
17
11
76
30
201
146





30

26
42
10

72
308
84

18


52
38





96

12
19
32
12

16


 本プロジェクトがこのような成果を見せているのは、1.障害者の適職を見極めてから雇用するという企業側の主体性が保障されていること、2.申請事務が簡素化されており、事務処理が比較的スムーズに行われていること、3.知的障害者や精神障害者などこれまで雇用が難しいとされていた分野でも積極的に活用されていること、などが大きな要因と考えています。
 この「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は、厳しい雇用・失業情勢の中で、障害者が倒産や事業再構築により、離職するケースが増えている一方で、民間企業では平成10年7月1日から障害者雇用率が1.6%から1.8%に引き上げられ、企業として知的障害者を含めた障害者雇用を進めなければならないという状況にあるため、日経連は政府の緊急雇用対策「雇用活性化総合プラン」の一環として、「日経連障害者雇用緊急支援センター」(センター長=福岡日経連専務理事)を設立し、労働省からの事業委託を受けて実施しているものです。
 具体的には、企業に障害者を「職場実習(1か月)」の形で受け入れてもらい、障害者自身のことや障害者雇用に対する理解を深めてもらう。さらに、職場実習の修了者に、日本障害者雇用促進協会の地域障害者職業センターなど障害者雇用の専門家による助言やサポートを提供しながら、「トライアル雇用(3か月)」の形で受け入れてもらい、障害者雇用に試行的に取り組み、本格的な雇用のきっかけとする、というものです。
 このような職場実習やトライアル雇用に取り組む企業の利点は、第1に、受け入れた障害者を必ず雇用しなければならないという「雇用予約」がないので、障害者雇用の経験が少ない企業にとって、安心して挑戦することができる。
 第2に、「職場実習・トライアル雇用」の実施によって、障害者雇用に前向きな姿勢を示すことができる。そして、障害者雇用率の未達成企業にとっては、「雇入れ計画」の中に前向きな取り組みとして報告することができる。
 第3に、企業が障害者を実習生として受け入れた場合、職場実習期間中、企業に対して「職場実習奨励金(24,100円・16日以上)」が支給されると同時に、実習生にも手当(117,900円・16日以上)が支給されるので、企業の実習生に対する金銭的な負担がない。また、企業が職場実習を受けた障害者をトライアル雇用した場合、トライアル雇用期間中、企業に対して「トライアル雇用奨励金(59,000円・16日以上)」が支給される。他方、障害者にとっては、プロジェクト実施期間中に一定の賃金収入が確保できるとともに、終了後に引き続き雇用される可能性を期待できることになります。
 このように、「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は企業や障害者自身にとってメリットがあり、厳しい雇用・失業情勢の下で短期の雇用創出の効果をもたらすとともに、今後の障害者雇用の促進にとっても、大きなきっかけとなるものと考えています。プロジェクトの詳細については、日経連障害者雇用緊急支援センター(03-3212-4485)までお問い合わせください。
 労働省はプロジェクトの成果を大いに評価して、平成12年度限りの緊急措置を13年度以降も実質的に引き続き継続することを検討しています。現状ではどのようなスキームになるのかはっきりしませんが、既存のさまざまな事業の統廃合を図りながら、立派な障害者雇用推進施策として事業化されることを期待しています。また、日経連としても微力ながら事業推進のお手伝いをしたいと考えているところです。

(わじましのぶ 日本経営者団体連盟障害者雇用緊急支援センター雇用課長代理)


                               平成12年9月1日
  障害者緊急雇用安定プロジェクト実施状況
                  日経連障害者雇用緊急支援センター
図 障害者緊急雇用安定フロジェクト実施状況