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社会福祉基礎構造改革と
障害福祉関係法の改正について

厚生省障害保健福祉部企画課

1 社会福祉事業法の改正

 第一四七回通常国会において、いわゆる社会福祉基礎構造改革のための「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律案」が平成十二年五月二十九日に成立し、同六月七日に公布されました。この法律により、社会福祉事業法の改正のほか、障害福祉関係では、身体障害福祉法、知的障害者福祉法及び児童福祉法について一部改正が行われましたので、それらの改正の概要等について紹介します。

 これまでは、社会福祉事業の公明かつ適正な実施を目的にしていましたが、これに加えて、福祉サービスの利用者の利益の保護や地域福祉の推進が目的に加えられたことを踏まえ、法律の名称が「社会福祉法」に改められました。
 そして、社会福祉法においては、福祉サービスが個人の尊厳の保持を旨として提供されなければならないこと、またサービス事業者は利用者の意向を十分尊重してサービスの提供に努めなければならないことが明記されました。
 また、知的障害者等のための「福祉サービス利用援助事業」を含む障害福祉に関するいくつかの事業(後述)が社会福祉事業として追加されるとともに、通所型の社会福祉事業の規模要件について、政令で定めるものは「十人以上」でよいこととされました。これにより、「小規模通所授産施設」が新たに制度化されることになりました。
 サービスの質の向上に関しては、事業者に、自ら提供するサービスの質の評価を行うことなどにより利用者の立場に立って良質で適切なサービス提供を求めるとともに、国には、福祉サービスの質を公正かつ適切に評価するための措置を講ずることを求めています。

2 措置から利用(契約)へ 

  -障害福祉各法共通の改正-

 措置制度は、行政が、サービスの内容や利用できる事業者を決定して、そのサービスを自ら提供するか、事業者にサービス提供を委託するというものです。そのように事業者に委託する方式の場合、サービスの利用者とサービスの提供事業者との法的関係は不明確であり、またサービスは画一的になりがちであり、サービスの質の向上に取り組むインセンティブが働きにくいといえます。
 それに対して、利用制度(支援費支給制度)においては、サービスの内容や事業者を利用者自らが選択し、事業者との契約に基づきサービスを利用することになり、個々の利用者のニーズに応じたサービス提供が行われるようになることが期待されます。
 行政(市町村)は、知事が指定した事業者が提供するサービス利用について、障害者に対して利用料の助成(法律では、その助成費のことを「支援費」と言う)を行います。ただし、利用者が立て替え払いをしなくてもいいようにするなどの理由から、サービス提供者が代理受領するという形を取っています。
 なお、利用料の助成は全額について行われるのではなく、一部自己負担があります。自己負担額は、本人及び扶養義務者の負担能力に応じて決まります。このような「応能負担」の考え方は、これまでと変わりません。ただし、これまでの「費用徴収」と異なり、自己負担金は、サービス提供事業者に支払うことになります。
 支援費支給制度に移行するのは、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ、更生施設、授産施設、身体障害者療護施設、知的障害者通勤寮及び知的障害者グループホームです。
 支援費支給制度の仕組みは、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法及び児童福祉法の中で示されていますが、市町村が支援費の支給決定を行う際には、その支給期間も示すことになります。在宅サービスの場合は、支給量も示されます。
 施設サービスの支援費の基準額については、障害の程度に応じて設定されることになります。
 この支援費支給制度への移行は、準備期間を考慮して、平成十五年四月からとされています。

3 身体障害者福祉法の改正

 身体障害者福祉法上の法定事業として、身体障害者相談支援事業、身体障害者生活訓練等事業及び手話通訳事業が加えられ、法定施設として盲導犬訓練施設が追加されました。
 身体障害者相談支援事業は、身体障害者またはその介護を行う者に対する情報の提供・相談・指導やサービス利用に関して関係機関との連絡調整等の援助を総合的に行う事業ですが、現在、市町村障害者生活支援事業として実施されているものの一部です。
 身体障害者生活訓練等事業は、点字や手話の訓練・その他の日常生活・社会生活を営むために必要な訓練等の援助を行う事業ですが、現在、障害者生活訓練・コミュニケーション支援等事業や市町村社会参加促進事業として実施されているものの一部です。
 手話通訳事業は、聴覚障害者等に対して、手話通訳の便宜を供与する事業です。
 盲導犬訓練施設は、無料または低額な料金で、盲導犬の訓練及び視覚障害者に対して盲導犬の利用に必要な訓練を行う施設です。
 さらに、視聴覚障害者情報提供施設の機能強化のため、点訳、手話通訳等を行う者の養成・派遣等の事業が法律上の必須事業として追加されました。
 また、地方公共団体の責務として、視聴覚障害者の意思疎通を支援する事業、スポーツ活動への参加を促進する事業、その他の社会・経済・文化等あらゆる分野の活動への参加を促進する事業の実施に努めなければならないことが明記されました。

4 知的障害者福祉法の改正

 法律の目的として、知的障害者の自立と社会経済活動への参加の促進が追加され、国・地方公共団体の責務として、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するための援助が明記されました。
 これにより、知的障害者は、法律の上で、保護の対象から主体性を持った存在に位置付けが変化し、本人の意思を尊重したサービスの提供や利用がいっそう求められます。
 法定事業として、知的障害者相談支援事業及び知的障害者デイサービス事業が加えられ、知的障害者デイサービスセンターが法定施設として追加されました。知的障害者相談支援事業は、知的障害者または介護者に対する情報提供・相談・指導やサービス利用に関して関係機関との連絡調整等の援助を総合的に行う事業ですが、現在、「障害児(者)地域療育等支援事業」のうちの「地域生活支援事業」として実施されているものです。
 次に、施設サービスに関する事務が、都道府県から市町村に委譲され、すでに市町村の事務とされている在宅サービスと併せて、市町村が一元的に事務を行うことになります。施行は、平成十五年四月からです。これにより、在宅サービス、施設サービスとも、市町村が一義的な責任を持つことになりますが、都道府県も、市町村に対して専門的な観点から、適切な指導、助言を行う必要があります。

5 児童福祉法の改正

 法定事業として、障害児相談支援事業が加えられましたが、この事業は、「障害児(者)地域療育等支援事業」のうちの「地域生活支援事業」として実施されているものです。また、ショートステイに関する事務が市町村に委譲され、これにより、障害児に係る在宅サービスに関する事務は、市町村に一元化されることになります。施行は、知的障害者の施設サービスに係る事務の権限委譲に合わせ、平成十五年四月からとされています。