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深谷市
「くるリン」乗車レポート

穐山晃弘

 深谷市に市内循環バスが導入された時、どういうバスだろうかと興味を持ち、ちょっと見に行ったことがありました。それは普通のバスで、「これじゃ乗れないなあ」と思ったものです。それが、今年の春、市の広報で車いすでも乗れるバスになったのを知り、乗ってみたいと思っていたのですが、なかなか実現できませんでした。そんな折、「ノーマライゼーション」編集部より循環バスに実際に乗った体験レポートを書いてほしいという依頼をいただき、ちょうどよい機会と喜んでお引き受けしました。
 近年、路線バスが次々と廃止になり、市民の足を確保するという目的で、深谷市の市内循環バスは、平成九年七月に試行的に導入されました。バスは観光型マイクロバスです。料金は無料で、月曜、火曜、年末年始が休みでした。そして平成十二年四月に通常運行になり、ワンステップバスとノンステップバスが導入されました。なぜ二つの種類のバスになったかというと、導入する時はワンステップバスが一般的で、かろうじてノンステップバスが間に合ったということだそうです。ですからノンステップバスは、まだ数も少ない状況です。料金は百円で、一回切符を買うと一日はその切符で何度でも乗り降りできます(未就学児無料)。年末年始は休みです。バスの愛称と車体のデザインは一般公募され、どちらも中学生の作品が採用されました。愛称は「くるリン」で、車体のデザインは「チューリップファミリー」といって、緑と黄色の地に赤いチューリップの家族が並んでいるものです。
 深谷市は南北に長く、市役所は市のほぼ中央にあり、国道17号線がそのそばを東西に走り、深谷を南北に分けています。バスは国道17号線を境に北と南のコースがあり、さらにそれぞれが東と西に分かれ、合計で四つのコースがあります。コースには市内の公共施設や病院が含まれ、全長で九〇キロになります。
 さて、私は十月三日(火)に、私の家のそばを通る南の西コースを企画係長と福祉課職員の三人で、市役所から市役所の一回りコースに乗りました。このコースは草花が多く、季節ごとに楽しめるコースです。私が乗ったのはワンステップバスですが、ノンステップバスと一週間でコースを交代します。ノンステップバスは前と中央に扉があり、中央の扉は車いすが入れるくらい広く、段差がなく全く平らです。スロープは足下にたたんであり、取り出して広げて立てかけるものです。ワンステップバスも同じところに扉がありますが、中央の乗降口に一段段差があります。スロープはステップのところから板を引き出すので、乗り降りする時は車体が少し傾きます。私は電動車いすに乗っており、運転手さんに押してもらったので難なく乗れましたが、少し勾配がきつく感じました。でも、歩道からならもっと勾配がゆるくなり、ノンステップバスだと、ほぼ平らになると思います。中に入ると、二つの座席を折りたたんで、車いすのスペースを開け、ベルトで車いすを固定します。ここで気付いたのですが、乗っている人を止めるシートベルトがありませんでした。運転手さんは安全運転をしてくれて、つかまるところもありますが、やはりシートベルトはあったほうがよいと思います。降りる時の合図のボタンも手元にあってよかったと思います。
 今回「くるリン」に乗ってみて、すでに常連のお客さんもいて、だんだん地元に定着してきたのを感じます。実際に新しいバスを導入して、曜日によって違いますが、利用者が増えているそうです。バリアフリーやノーマライゼーションの観点から障害者がたくさん利用して、どんどん要望を出していくのが重要だと思います。

(あきやまあきひろ 自立生活センター遊TOビア副理事長)