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静岡市
ノンステップバス100%導入
「県立病院高松線」レポート

山本佳昭

はじめに

 近年、全国各地でノンステップバスが増えていますが、静岡市にはノンステップバスがほぼ100%導入されている路線があります。それが「県立病院高松線」です。
 この「県立病院高松線」は、市街地の北部にある静岡県立総合病院を起点に静岡市の中心部を通り、市街地南部の登呂コープタウンまでを結ぶ路線で、平日の日中は十分間隔で運行しており、静岡市内では運行本数の多いほうの路線です。
 バスを運行している静岡鉄道によると、ノンステップバスは一九九八年十月から運行が開始され、現在十三台のバスが運行されています。沿線には病院や県庁、市役所などの公共機関があり、それらの施設を結ぶ路線であり、それがノンステップバスが導入された理由です。
 ちなみに静岡鉄道では全部で二十台のノンステップバスが導入されています。静岡市内でノンステップバスが運行されている路線は他に二路線あり、全体で一日平均二~三人の車いす利用の乗客があり、利用者は少しずつ増えているとのことです。「少ない」と思われるかもしれませんが、ノンステップバスが運行されるまでは、静岡には車いすのまま乗り降りできる路線バスはありませんでしたので、わずかな数でも大きな意味があると思います。

実際に乗車して

 小野瀬俊之さんは県立病院高松線の沿線に住んでおり、市中心部まで出るために一か月に一回の割合でノンステップバスを使っています。家の最寄りの停留所から静岡市の中心部(静岡駅前)まで約十五分。バスが使えるようになるまでは、電動車いすが足でした。家から市内中心部までは国道1号線の横断など車の往来が激しいために神経を使うところが多く、バスを利用することについて「安心して使える」ことが最大のメリットだと話しています。
 私と一緒に乗車したのは平日の午後。バス停の近くで信号待ちをしている間にバスが一台行ってしまいましたが、運転間隔が短く、なおかつすべてノンステップバスということで、時刻表を気にしなくても利用できることは評価できる点と言えます。導入当初は、時間のかかっていたスロープの出し入れや車いすの固定もスムーズに進み、十五分ほどで目的地へ到着。快適なミニトリップを楽しみました。
 小野瀬さんにとって、ノンステップバスは便利さとともに、困っていることもいくつかあります。一つは、一人で乗る時に運転手さんから行き先を聞かれると言語障害があるのでうまく伝わらないこと、そのためできる限りヘルパーや家族と一緒に乗っているそうです。もう一つは家まで帰る時、静岡駅前のバス停に行くのに国道を渡るために遠回りを強いられるということ。「健常者は地下道を使うことができるが車いすにはエレベーターがないので使えない。そこが不便」と話していました。
 ノンステップバスに少し違った期待をしているのは、視覚障害者の桑原正枝さんです。降車ボタンの位置が前の座席の背についていることがこのバスのお気に入りの点。「今までのバスは柱にボタンがあるので分かりにくい。前にボタンが付いているとボタンを探すのが楽。こういうバスならいつも使えるのに」と話しています。残念ながら彼女の家の最寄りの路線では、まだノンステップバスは導入されていません。
 一日も早い導入を期待しています。

さいごに

 静岡鉄道ではこれからもノンステップバスの導入を進めていくと話しており、運行されているバスがすべてこのバスになる路線が増えていくものと思われます。それを機に、ハンディをもつ人が今まで以上に、積極的に外出に利用できる環境づくりが進んでいくことを期待しています。

(やまもとよしあき 静岡県ボランティア協会)