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1000字提言

バリアフリーの真の意味

吉浦美和

 このごろ町中で、入り口にスロープが付いていたり、車いすマークを描いた広めの駐車場がある店や建物を見ることが増えました。いわゆる『バリアフリー』です。ハートビル法、交通バリアフリー法、福祉条例やテレビドラマなどの影響でしょう。
 しかし、簡単には喜べません。ハンディキャップ駐車場に、すでに車が停めてあることが多く、車いす利用の運転手は駐車を断念せざるを得ないからです。普通の駐車場では狭くてドアを開けるスペースがありません。ハンディキャップ駐車場が一台分でも二十台近くあっても、私の実感では五回に三回は止められません。中には駐車禁止除外指定車証を提示している車もありますが、ほとんどは無理解による行動です。
 でも、車いすでなくても高齢者や幼児、赤ちゃんが乗っている時などには、ハンディキャップ駐車場の設置場所や止めやすさは便利だと思います。駐車場は、幅が車いすのために広いものと、普通の広さで事情のある人に優先利用のものが、複数必要だと思います。
 ところで、ハートビル法、バリアフリー法にも、福祉条例にも正式名称として「障害者や高齢者のために…」という枕詞が必ずついています。「住民の幸せのために」ではなく、高齢者や障害者のためのものです。私は一部分の人たちのためという言葉がついている間は、設備が普及しないという危惧を持っています。利用者が増えないと理解につながらないからです。駐車場一つでも「今までが間違っていた。だれにでも使いやすくないと自分たちも歳をとったり病気の時に困る。現在の障害者の権利も支援しよう」となってほしいものです。
 実際に、町の中で車いすマークが付いているものを拾ってみましょう。入り口、エレベーター、駐車場、トイレなどがあります。しかし、どれも「障害者用」というより、「機能的でだれにでも便利で使いやすい」ものです。ハンディキャップトイレは多目的利用が増えています。つまり、これまでは一般用と呼ばれていたものが、「利用できる人が少ない貧弱なもの」だったわけですね。
 本当のバリアフリーというのは、障害者や高齢者だけの優先や専用ではなくて、健常者中心仕様を反省し、一般と呼ばれているものの改善を意味すると思います。駐車場もトイレも数と理解が増えれば、取り合いが減り、気持ちよく使える人々が増えてくると思います。

(よしうらみわ 電車に乗るぞ障害者の会副代表)