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DPI日本本会議の意義

山田昭義

DPIとは

 1980年、カナダのウイニペグで開催された第14回RI(国際リハビリテーション協会)世界会議直前の理事会で、リハビリテーション当事者である障害者がRIの決定機関の各国代表団の半分は障害者団体の代表であることを求めた提案が否決されました。
 この事実に対して、会議に参加した数百人の障害者は、怒りをあらわにし、障害者自身による国際組織結成の意思を示しました。
 この怒りが、「私たち(障害者)ではなく社会、環境こそが問題である」ことを活動理念とするDPI誕生の起点となったのです。
 DPIは、Disabled Peoples’ Internationalの略で、日本では、障害者インターナショナルと呼ばれていますが、こうした経過をたどり、81年12月に「我ら自身(障害当事者)の声」をスローガンに、53か国の障害者がシンガポールに集い、結成されました。その活動方針は、「障害者自身の主体性」とさまざまな「障害種別を超えた取り組み」、障害者の抱えるさまざまな課題を「人間の尊厳及び権利性の視点」でとらえることを基本としており、世界の障害者の「完全参加と平等」の実現に向けた行動を展開しています。
 そして、「障害者が生活しやすい環境は、すべての人々にとっても住みよい社会」であると考え、「すべての人々は、等しく価値ある存在であり、すべての人々が尊重される社会の実現」を目標としています。
 現在、158か国が加盟し、国連経済社会理事会(ECOSOC)、世界保健機関(WHO)及び国連教育科学文化機関(UNESCO)の諮問機関としての立場にあり、国際労働機関(ILO)でも協力関係にある団体として特別リストに載っている、世界最大の障害種別を超えた障害当事者による非政府組織(NGO)です。
 日本では、86年3月にDPI日本会議が設立され、これまで、障害者施策の向上や交通アクセスの改善、欠格条項撤廃、発展途上国への支援などの活動を進めてきました。
 このDPIが活動を進めるうえで、全体的な指針や取り組みなどが報告、検討、討議される場として4年に一度、世界大会が開催されてきました。
 98年に開催された第5回メキシコ大会において、2002年の第6回大会の開催地として、日本の札幌が決定されました。

DPI世界会議札幌大会とは

 2002年の10月15日から18日にかけて第6回DPI世界会議札幌大会が、札幌市の北海道立総合体育センター「きたえーる」で開催されます。
 この大会は、「あらゆる障壁を取り除き、違いと権利を祝おう(Freedom From Barriers: Celebrating Diversity and Rights)」を会議テーマとし、福祉、自立、平和、貧困、環境、女性などの課題についての報告と議論が展開され、「障害者の権利条約制定」「ユニバーサルデザイン推進」等21世紀という新時代の方向性についての指針を、日本から障害者の視点で発信することになるでしょう。
 札幌大会には、過去の大会の状況から、国内外100か国から2,000人(車いす利用者500~1,000人)の参加を想定した準備を進めています。
 この大会を成功させるためには、内容についての設定も大切ですが、同時に、ホストとしての責任も重要なものがあります。
 世界会議ということで、文化や習慣、言語の違いに伴う受け入れ態勢の確保は当然のことながら、障害者の参加に伴う配慮もしなければなりません。
 特に、通訳は、英語、フランス語、スペイン語、日本語の音声による通訳以外に手話や要約筆記の配置が必要であり、日本語と英語の点字資料も用意しなければなりません。
 また、車いす利用者を中心とした参加者の移動や宿泊施設、会場の利便性の確保、盲導犬や介助犬などに対する宿泊施設等への理解を促進しなければなりません。
 札幌では、大会の成功のため、現在、北海道と札幌市から、準備経費の補助と職員各1名の派遣がなされており、各行政内部には関係部局を横断的に結ぶ会議を設置するなど、積極的な対応が図られています。
 こうした行政からの支援のほかにも、やはり広く一般市民や企業、団体などの理解と協力、そして参加が必要です。現在、札幌組織委員会では、そうした体制の確保と大会開催の明確なビジョン、目標を鋭意設定中です。
 昨年、札幌では、手こぎ自転車による道内1,600キロメートルを走行したキャンペーンキャラバン。札幌大会で使用するシンボルマーク、キャラクター、キャッチフレーズを一般市民を対象に公募したパブリックキャンペーン。札幌市民へDPI周知を進めるため、市内各区で開催した「DPIって何だろう?」講座や大会ボランティア養成のための「英会話教室」などの事業を展開しています。

札幌大会開催の意義と意味

 DPIの参加者が、その活動を制限される環境は、大きく二つの面が想定されます。
ひとつは、車いす利用者など、肢体に障害のある人々にとっての移動手段、宿泊施設といったハード面です。
 もうひとつは、聴覚、視覚に障害のある人々、さらには、外国からの参加ということでの情報保障といったソフト面です。
 これらの課題を解決するためには、アクセシビリティーや宿泊施設のユーティリティーの改善、インターネット、iモードの利用などの対応が必要になるでしょう。そして、こうしたものと同様に、何よりホストとして、迎える私たち一人ひとりの意識と姿勢もまた重要となるのです。
 障害者の定義は、その人の身体や知的や精神などの機能に、何らかの理由で損傷を受け、日常生活において、そうではない人々が当然に利用しているものが利用できなくなり、社会的に不利な状況が認められた時、その人は障害者として位置付けられます。
 また、こうした状況を緩和するための施策が福祉サービスとして位置付けられていますが、国によっては、このサービスが、妊婦など一時的な制限を日常生活においてもたらされる人にも適用される場合があります。
 障害者の定義は、現在、世界保健機関により再検討されています。そして、今年、新たな定義として、その人を取り巻く環境改善とその活動保障の中で制限を取り除くことの重要性が示される予定であり、社会環境のあり方に問題提起をすることになるでしょう。
 障害者が、多数集うDPI札幌大会は、まさに、まちづくり、情報保障、ものづくりといった面におけるユニバーサルデザインの重要性が認知される機会であり、大会開催までの期間で改善できるものを進めることと、その後の社会のあり方を大きく問いかけ、考える絶好の機会となります。
 21世紀は、超高齢社会であり、こうした方向性を明確に打ち出すことは、すべての人が安心して安全で快適な暮らしが保障される地域づくり、環境づくり、ものづくりを進めていくための道しるべとなることでしょう。
 私たちは、この大会の開催により、まちが変わり、社会が変わり、ひとが変わっていくことを期待して、準備を進めています。
 そして、日本の21世紀が、まさにすべての人々が尊重され、当たり前の生き方ができる共生社会となること、また、この実現に札幌大会が寄与できることを、私たちは、強く願っています。

(やまだあきよし DPI日本会議議長)