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1000字提言

若手の障害者のリーダーを育てよう

野澤克哉

 最近は障害者の欠格条項の見直しが国において具体化してきているということは、国民も障害者が一般と同じ条件で資格を制限している職に従事することを是認してきているためと言える。世論の支持、合意が障害者の権利実現のための欠格条項改正には絶対条件となる。このことを私は昭和40年前半の道路交通法第88条の改正運動、昭和50年前半の民法第11条の準禁治産者条項改正運動、平成9年の民法第969条の公正証書遺言の作り方に対する改正運動を通じて経験した。つまり、障害者側の要求がたとえどんなに正しく、人権にかかわっても、世論の支持がなければ法改正は実現しないという事実である。
 最近は障害者問題で世論の支持が得やすくなってきているということは、それだけ日本の社会も成熟してきているということだろう。私も一昔前のように差別的な言葉や視線を経験することが少なくなった。そのためか、若い障害者には差別が具体的に見えたり、実感しにくくなってきているようで、あたかももう障害者差別はなくなったように思って障害者運動に関心を持たない若い障害者が多いのではないか。このことは最近、障害者団体の役員に若い人のなり手が大変少なく、障害者の集会に出ても若手の参加が極端に少ないことが示している。
 障害者運動の目的は障害者への理解を広め、深めてもらうことと、広い範囲の共感者とともに暮らしやすい社会の実現に努力していくことであり、障害者が便利な社会はすべての人に便利な社会である。したがって、この運動が中身、方法は変化してもなくなるとは思わない。しかし、今の若い障害者は優秀であり、目的、目標がわかればきちんと行動する能力は持っている。そのため、私は2年に一度の割で聴覚障害大学生を中心にアメリカの聴覚障害大学や情報保障体制の視察、専門家として成功している聴覚障害者を訪問・交流する企画を作って、アイデンティティ作りや欠格条項の資格に挑戦させている。方法を示唆すれば若者は行動力はあるので、今の中高年中心の障害者運動はもっと若手のリーダーを育てていくことに力を入れるべきではないか。

(のざわかつや 関東ろう連理事長)