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資料
国連の障害者に関連する
条約、宣言、勧告、規則等

中野善達

1948年

●世界人権宣言

 12月10日、国連総会決議217A(3)(第3回総会)によって採択された全30条の宣言。
 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等である。人間は、理性及び良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」(第1条)とし、この宣言に掲げるすべての権利と自由が差別なくすべての人に享受される(第2条)とした。
 これら諸権利には、「生命、自由、身体の安全についての権利」「奴隷の状態や隷属状態に置かれない権利」「非人道的な待遇や刑罰を受けない権利」「法の前に人として認められる権利」「法の前に平等で、平等な保護を受ける権利」「基本権の侵害に対し救済を受ける権利」「恣意的な逮捕、抑留または追放を受けない権利」「裁判所の公正な審理を受ける権利」「無罪の推定、遡及刑の禁止に関する権利」「私生活、名誉、信用の保護を受ける権利」「移動と居住の自由に関する権利」「迫害からの庇護を受ける権利」「国籍をもつ権利」「婚姻及び家族の権利」「財産権」「思想、良心及び宗教の自由についての権利」「意見及び表現の自由に関する権利」「集会及び結社の自由についての権利」「参政権」「社会保障の権利」「労働の権利」「休息及び余暇の権利」「相当な生活水準についての権利」「教育の権利」「文化的権利」「社会的及び国際的秩序への権利」が含まれる。また、すべての者の社会に対する義務も規定された(第29条)。広範な人権法の集大成ともいえるもので、以後の国連における人権に関する諸文書の基本となっている。

1955年

●障害者の職業リハビリテーションに関する勧告

  (勧告第99号)
 6月1日、ILO(国際労働機関)第38回総会で採択。
 障害者が職業訓練や雇用の機会に完全に参加する権利の促進に関する画期的な文書といえる。
 1.定義(職業リハビリテーション、障害者)、2.職業リハビリテーションの範囲、3.障害者の職業ガイダンス、職業訓練、職業紹介の原則と方法 4.行政組織、5.職業リハビリテーションサービスの利用を可能にする障害者のための方法、6.医療と職業リハビリテーション、組織間の調整、7.障害者の雇用機会を拡大する方法、8.保護雇用、 9.障害者と若年者に対する特別な規定、10.職業リハビリテーションの原則の適用、これらが42項目にわたって詳述されている。
 定義に関しては次のようになっている。
 「職業リハビリテーション」という用語は、障害者がふさわしい雇用を手に入れ、かつ、それを維持することを可能にするよう企図された職業サービス、たとえば職業ガイダンス、職業訓練や選択方式による職業紹介を提供することを含む、継続的で調整されたリハビリテーション過程の部分を意味している。
 「障害者」という用語は、身体的もしくは精神的なインペアメントの結果、ふさわしい雇用を手に入れ、かつ、維持する見込みが実質的に減退させられている個人を意味する。
 また、職業リハビリテーションの範囲は次のように規定された。
 障害の原因や性質のいかんにかかわらず、また、年齢のいかんにかかわらず、障害者がふさわしい雇用を手に入れ、かつ維持していく合理的な見込みが得られるように準備され、また、それを持ちうるよう提供される職業リハビリテーションサービスが、すべての障害者に利用可能なようにされなければならない。

1958年

●雇用及び職業における差別に関する条約

  (条約第111号)
 6月25日、ILO第42回総会で採択、1960年6月15日に効力発生。
 職業訓練を受けること、雇用及び特定の職業につくこと、並びに雇用の条件における差別問題を扱った総合的なILO文書。全14条にわたり、原則を記述した、いわば宣言的な条約である。第5条〔特別の保護、援助〕の2には次のような記述がある。「加盟国は、代表的な使用者団体及び労働者団体がある場合にはそれらの団体と協議したうえ、性、年齢、障害、家庭責任または社会的もしくは文化的地位を理由に、特別の保護及び援助を必要とすると一般に認められる者の特別の必要を満たすことを意図した他の特別措置が、差別とはみなされないことを決定することができる。」

●雇用及び職業における差別に関する勧告

  (勧告第111号)
 6月25日、ILO第42回総会で採択。
 上記条約の補足的な勧告であり、条約内容の具体的な措置は各国の国内条件に応じて各国の手に委ねられるが、そのための具体的な指針である。

1960年

●教育における差別を禁止する条約

 12月14日、ユネスコ第11回総会で採択、効力発生は1962年5月22日。
 全19条の条約であり、世界人権宣言が無差別の原則を主張し、すべて人は教育を受ける権利を有することを宣明していること、すべての者のために人権の普遍的尊重と教育機会の均等とを助長する必要性のあることを認識して定められた。

●教育における差別の禁止に関する勧告

 12月14日、ユネスコ第11回総会で採択。上の条約を補足するもの。

1965年

●あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約

 12月21日、国連総会決議2106A(20)(第20回総会)で採択、効力発生は1969年1月4日。

1966年

●経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約

 12月16日、国連総会決議2200A(21)(第21回総会)、1976年1月3日に効力発生。
 公正かつ好ましい条件のもとで働く権利、社会保障、適切な生活水準、到達可能な最高水準の身体・精神の健康を享受する権利、教育を受ける権利、文化的自由と科学の進歩の思想を享受する権利、さらに、これら権利への差別の禁止が規定された。世界人権宣言の規定を一歩前進させ、法的な拘束力のあるものにし、さらに締約国の順守を監視する機関を設置することとした。

●市民的及び政治的権利に関する国際規約

 12月16日、国連総会決議2200A(21)(第21回総会)、1976年3月23日に効力発生。
 世界人権宣言に示された人権のうち、市民的及び政治的権利を法的拘束力をもつものとした。移動の自由、法の前の平等、公正な裁判と無実と推定される権利、思想及び良心と宗教の自由、意見と表現の自由、平和的な集会、結社の自由と公務及び選挙への参加、少数者の権利の擁護などを規定している。

1969年

●社会進歩と開発に関する宣言

 12月11日、国連総会決議2542(24)(第24回総会)で採択。
 第1部 原則─第1条~第9条、第2部 目的─第10条~第13条、第3部 手段及び方法─第14条~第27条。身体的・精神的に不利な立場にある者の権利を保護し、その福祉とリハビリテーションを確保することの必要性を宣言した。すなわち、第11条で、包括的な社会保障制度や社会福祉サービスを病人、障害者、高齢者、一時的もしくは恒久的に生計費をかせげない人、そうした人本人、その家族、扶養を受けている人を対象に整備し、このような人々に適切な生活水準を保障することを宣言している。

1971年

●精神遅滞者の権利に関する宣言

 12月20日、国連総会決議2856(26)(第26回総会)。
 国連における障害者を対象とした最初の宣言である。採択は投票によるもので、賛成110、反対0、棄権9であった。前文で、世界人権宣言、国際人権規約などの諸原則、ILOなどの憲章、条約、勧告及び決議で設定された社会進歩のための諸基準を想起し、社会進歩と開発に関する宣言が、身体的・精神的に不利な立場にある者の権利を保護し、その福祉とリハビリテーションを確保する必要性を宣言したこと、精神遅滞者の諸能力を発展させることの援助の必要性を認識していることが記されている。
 第1項「精神遅滞者は、最大限実行可能な限り、他の人びとと同じ権利をもっている。」
 第2項「精神遅滞者は、適切な医療ケア及び理学療法を受ける権利ならびに、その能力と最大限の潜在的可能性を発展させうるような教育・訓練、リハビリテーション及び指導を受ける権利をもっている。」
 第3項「精神遅滞者は、経済的保障及び、しかるべき基準の生活を送る権利をもっている。彼は生産的労働を行う権利もしくは能力の最大可能な程度に、他のなんらかの有意義な職業に従事する権利をもっている。」
 第4項では、可能な場合は家族もしくは里親と一緒に生活をし、さまざまな形の地域生活に参加すべきこと、家族が援助されるべきこと、施設入所が必要な場合は、可能な限り通常の生活に近い環境でそれが提供されるべきことが規定されている。
 また、第5項では、必要な場合には有資格の保護者をもつ権利のあることが示されている。
 第6項「精神遅滞者は、搾取、虐待や見くだすような取り扱いから保護される権利をもっている。もしもなんらかの犯罪行為で訴えられたならば、その精神的責任の程度が十分に考慮され、法の適正な手続きをうける権利をもっている。」
 第7項では、障害が重いことのため諸権利の行使が不可能だったり、制限されたり否定される場合には、適正な法的保護がなされなければならない、と規定している。
 この宣言では、精神遅滞者の定義がなんら示されなかったこと、他の人と同じ権利が認められたわけではなく、最大限実行可能な限りという限定が付されていることなどに問題はあるが、とにかく反対なしに採択されたことに評価が高い。

1975年

●人的資源開発における職業ガイダンス及び職業訓練に関する条約

  (条約第142号)
 6月4日、ILO第60回総会で採択、効力発生は1977年6月19日。
 全13条の条約であるが、その第3条で、加盟国は継続的な雇用情報の提供を含め職業ガイダンスのシステムと、適切な職業訓練のプログラムを、すべての障害者を含むすべての子ども、若者、成人にしだいに整備していくことを規定した。

●人的資源開発における職業ガイダンス及び職業訓練に関する勧告

  (勧告第150号)
 6月4日、ILO第60回総会で採択。
 上の条約を具体化するための詳細な勧告である。1.一般規定 2.政策と計画 3.職業ガイダンス 4.職業訓練 5.マネージャーと自営者の養成・訓練 6.経済活動の特定の地域に対する計画 7.人口の特定のグループ(学校教育を受けなかった人たち、高齢労働者、言語的また他のマイノリティ、障害者) 8.女性 9.移民 など15にわたる77項目の勧告。その第53項では、障害者も一般の人々に提供される職業ガイダンスと職業訓練プログラムにアクセスできるべきこと、障害の程度や性質、特定の障害グループのニーズによっては、特別に調整されたプログラムが提供されるべきことが規定されている。また、一般の人々、雇用主、労働者、医療関係者、パラメディカルの人々、ソーシャルワーカーらに対する障害者問題の教育の必要性と、障害者も可能な限り通常の労働環境で就労するという原則が明示された。

●障害者の権利に関する宣言

 12月9日、国連総会決議3447(30)(第30回総会)によって採択された全13項目の宣言。
 第1項「障害者という用語は、先天的か否かにかかわらず、身体的もしくは精神的能力における障害の結果として、通常の個人生活と社会生活の両方もしくは一方の必要性を彼自身もしくは彼女自身では全面的にもしくは部分的に満たすことができない人を意味する。」と、障害者の定義が示された。
 第2項では「障害者は、この宣言に示されたあらゆる権利を享受できるものとする。これらの権利はいかなる例外もなく、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的もしくは他の見解、出身国あるいは社会的出自、経済状態、出生または障害者自身もしくはその家族の置かれているなんらかの他の状況に基づく区別ないしは差別なく、あらゆる障害者に与えられるものとする。」と、宣言に示された諸権利があらゆる障害者に保障されるべきことを明示した。
 第3項では「人として尊厳に関して固有の権利をもっている。」とし、「なによりもまず、可能な限り通常のまた十分な、しかるべき生活を享受する権利を意味するところの、同年齢の周囲の人びとと同じ基本的権利をもっている。」とした。さらに第4項では「障害者は、他の人びとと同じ市民的・政治的権利をもっている…」。第5項では「障害者は、可能な限り自立することができるように企図された諸手段を受ける資格をもっている。」とされた。
 第6項は「障害者は、義肢・補装具を含む医学的・心理的・機能的治療を受ける権利をもち、その能力や技能を発展させ、彼らの社会的統合もしくは再統合の過程を促進する医学的・心理的リハビリテーション、教育、職業教育、訓練とリハビリテーション、援助、カウンセリング、職業斡旋サービスやその他のサービスを受ける権利をもっている。」と、かなり具体的に権利の内容を示している。
 第7項では「障害者は、経済的・社会的保障を受ける権利ならびに、しかるべき生活水準を保持する権利をもっている。…」とされた。また、第8項で「障害者は、経済的・社会的計画立案のあらゆる段階で、彼らの特別なニーズが考慮される資格をもっている」とされ、さらに第12項で「障害者の団体は、障害者の権利に関するあらゆる問題に有用な協議を受けることができる。」と、障害者のニーズの尊重と、障害者の権利に関する問題への障害者団体の関与が示された。
 第9項では「障害者は、その家族もしくは里親と共に生活し、また、あらゆる社会的・創造的活動もしくはレクリエーション活動に参加する権利をもっている。…もしも、障害者が専門施設に入ることが不可欠であったとしても、そこでの環境および生活条件は、彼もしくは彼女の年齢の人たちの通常の生活に可能な限り近づかなければならない。」とし、第10項で、差別的、虐待的もしくは見くだすような性質のあらゆる搾取や取り扱いからの保護が、第11項で、人格や財産の保護のための法的援助の問題が規定された。最後の第13項では「障害者、その家族および地域社会は、この宣言に含まれる権利について、あらゆる適切な手段によって、十分に知らされなければならない。」とされた。
 この決議案の協同提案国は51か国であり、障害者問題に関する歴史において画期的な宣言は総会で無投票採択された。

1976年

●国際障害者年の宣言

 12月16日、国連第31回総会決議第123「国際障害者年」採択。全5項目の決議。
 第1項「1981年を、「完全参加」をテーマとする国際障害者年と宣言し」、第2項で「この年を以下を含む諸目的の実現にあてることを決定する。(a)社会への身体的・心理的適応が可能なよう障害者に助力をし、(b)障害者に妥当な援助、訓練、ケアおよびガイダンスを提供し、適切な労働を行う利用可能な機会をつくり、社会への完全な統合を保障する国内および国際的なあらゆる努力を促進し、(c)例えば、公共の建造物や輸送機内へのアクセスを改善することによって、障害者が日常生活に実際的に参加することを促進するように企図された研究や調査を奨励し、(d)経済的、社会的ならびに政治的生活のさまざまな側面に障害者が参加し、貢献する権利について公衆を教育し、また情報を提供し、(e)障害の予防および障害者のリハビリテーションに対する効果的手段を促進する」とした。さらに第3項で「あらゆる加盟国および関連組織に、国際障害者年の諸目的を実施するための手段や計画の確立に注意を向けるよう依頼」したのである。
 国際障害者年と題された決議は以後、1981年まで毎年、その内容を次第に整備しながら提出され、そのつど無投票採択がなされた。1979年12月17日の決議(34─154)で、国際障害者年のテーマが「完全参加と平等」に拡大された。

1978年

●アルマ・アタ宣言

 9月12日、WHO(世界保健機関)中心の国際会議で採択。
 諸政府、WHO、ユニセフその他の国際的諸組織が参加。保健、開発担当者などが、世界のあらゆる人々の健康を保護し、保健を促進するための、プライマリー・ケアに関する国際会議を開き、その最終日に宣言が出された。全10項目で、完全な身体的、精神的、社会的に望ましい状態である健康は、単に死亡や疾病がないというだけでなく、基本的な人権であり、健康の最も高次の可能なレベルへの到達が緊要な課題であること、2000年までに世界の人々すべてに対する、受け入れられる健康レベルの確立、達成が望まれることが示され、国内活動と国際的活動の活発化・促進が強調された。医師、看護婦、助産婦、助力者、地域ソーシャルワーカーらによる、健康の促進、予防、治療、リハビリテーションサービスの取り組みの重要性がうたわれた。「よりよい生活の質」を得るためにも、健康の促進と保護が不可欠とされている。

1979年

●女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約

 12月18日、国連第34回総会決議180。効力発生は1981年9月3日。
 第1部から第4部まで全30条で構成され、その第3部「経済的、社会的活動における差別の撤廃」中に教育における差別の撤廃、雇用における差別の撤廃、保健における差別の撤廃、その他の差別の撤廃がある。

1981年

●サンドバーグ宣言

 11月7日、国際障害者年を記念し、ユネスコによりスペインのトレモリノスで開催された「教育、予防、統合のための行動および方略に関する世界会議」で採択された。全16項目からなり、障害者の社会生活への完全参加と統合教育を基本とし、具体的に進むべき途や方法を提示した。
 第1項「すべての障害者は、教育、訓練、文化、情報への十分なアクセスができる基本的人権を行使できなければならない。」
 第2項「各国政府、国内─国際諸組織は、障害者による最大限可能な参加を保障するための効果的行動をとらなければならない。障害者の教育的ニーズや保健ケアニーズを目的とした行動に対し、また、障害者や彼らの家族の団体を設立したり、維持することに対し、経済的・実際的支援を行わなければならない。これらの団体は、障害者に関する分野での計画立案や決定過程に関与すべきである。」
 第3項「障害者は、彼ら自身のためだけでなく、地域社会を豊かにするため、彼らの創造的・芸術的・知的な潜在可能性を十分に発揮する機会を与えられなければならない。」
 第4項「障害者が参加する「教育的・文化的・コミュニケーション計画」は生涯教育というグローバルな枠組みの内で着想され、実施されなければならない。この点に関し、職業的リハビリテーション・訓練の教育的側面により多くの配慮がなされるべきである。」
 第5項「社会のサービスによって能力を最大限に発揮できるよう、障害をもつすべての人々、とりわけコミュニケーション問題を抱える人々は、彼らの特定のニーズに合わせられた教育的・文化的・情報計画にアクセスできなければならない。」
 第6項「「教育・訓練・文化・情報計画」は、通常の労働環境や生活環境の中に障害者を統合することを目指さなければならない。これを行うため、障害者は必要とされるかぎり、彼らの個別な状況(施設で、家庭で、学校で、など)にかかわらず、適切な教育や訓練を受けなければならない。」
 第7項「障害の出現とそのマイナスの影響を軽減するため、各国政府は非政府組織と協力し、障害の早期発見と適切な治療・措置を保障する責任をもっている。両親に対する情報やガイダンスが非常に重要な役割をもつ教育計画が、乳幼児期から組織されなければならない。」
 第8項「すべての障害者の教育・訓練・リハビリテーション・開発への、家族の参加が増大されなければならない。この分野で彼らの役割を実現するため、家族に助力するための適切な支援が提供されなければならない。」
 第9項「教育者ならびに、教育的・文化的・情報計画に責任ある他の専門家たちはまた、障害者の特定の状況やニーズに対応する力量・能力をもっていなければならない。したがって、こうした人々の研修はこの要件を考慮し、また、定期的に内容が最新のものに改められなければならない。」
 第10~15項ではメディアの問題、必要な施設や設備・備品、環境や居住地のプロジェクトの問題、研究とその適用の問題、職業経歴機会の問題、諸組織間の協力の問題が取り上げられている。
 第15項「この宣言を実施するのは加盟各国の責任であり、この目的のため、加盟各国はあらゆる可能な法的・技術的・財政的手段をとるべきであり、また、障害者、その団体や専門的非政府組織がこうした手段を練り上げるのに参加することを保障しなければならない。」
 サンドバーグは1968年からユネスコの特別教育計画の責任者であったが、1981年に死去した。

1982年

●障害者に関する世界行動計画

 12月3日、国連第37回総会決議52で採択。
 国際障害者年諮問委員会が審議・決定した「障害者に関する世界行動計画」を採択(本決議第1項)した。国際障害者年が障害者問題の進展に寄与したことを評価し、障害の予防、リハビリテーションおよび障害者の社会生活および社会の発展への「完全参加」と「平等」の目標の実現に向けてまとめられた国連の基本文書である。目標達成のための具体的内容・方法を国際的レベル、地域レベル、国内レベルでいかに取り組んだらよいかを明示した、全201項目にわたる膨大な計画である。
 目次を示そう。
 1.目的・背景および概念 A.目的 B.背景 C.定義 D.予防 E.リハビリテーション F.機会の均等化 G.国連組織で採用された概念
 2.現状 A.全般的状況(開発途上国における障害、特別なグループ)B.予防 C.リハビリテーション D.機会の均等化(教育、雇用、社会的問題)E.障害と新国際経済秩序 F.経済的・社会的発展の影響
 3.障害者に関する世界行動計画の実施のための提言 A.序 B.国家レベルの行動(決定過程への障害者の参加、インペアメント・ディスアビリティ・ハンディキャップの予防、リハビリテーション、機会の均等化─法制、物理的環境、所得保障と社会保障、教育と訓練、雇用、レクリエーション、文化、宗教、スポーツ─、地域社会の行動、職員の養成、情報と公衆の教育) C.国際的行動(全般的側面、人権、技術的・経済的協力─地域間援助、地域・二国間援助─情報と公衆の教育) D.調査・研究 E.監視と評価
 精神的・身体的もしくは感覚的インペアメントの結果として障害を負っている人は、世界中で5億人以上いる。彼らは他のすべての人々と同一の権利を有しており、平等の機会が保障されなければならない(第2項前半)。
 定義では、WHOによるインペアメント、ディスアビリティ、ハンディキャップの区別がなされている。
 インペアメント(機能障害)─心理的・生理学的もしくは解剖学的構造ないしは機能の喪失または異常。
 ディスアビリティ(能力低下)─人間として普通とみなされている方法ないし範囲内で活動を遂行する能力が(インペアメントの結果として)制約され、または欠けること。
 ハンディキャップ(社会的不利)─インペアメントまたはディスアビリティによってもたらされる特定の個人にとっての不利益で、その個人の年齢、性別、社会的ならびに文化的諸要因によって、普通とされる役割の充足を限定または妨げられること(第6項)。
 したがって、ハンディキャップとは、障害者と彼らをとりまく環境の関係のあり方から生まれるものである。それは、他の市民が利用できる社会のさまざまなシステムについて、障害者の利用を妨げる文化的・物理的あるいは社会的障壁に障害者自身が実際にぶつかった時に生じる。このように、ハンディキャップとは、他の人々と平等に社会生活に参加する機会を喪失、または制約されることである(第7項)。
 予防とは、精神的・身体的ならびに感覚的インペアメントの発生を防ぎ(一次予防)、あるいはそれが生じた際、それが身体的・心理的ならびに社会的に不利な結果を引き起こすのを防ぐことを目的とした諸対策を意味する(第10項)。
 リハビリテーションとは、インペアメントを負った人が最適の精神的・身体的ならびに、または社会的機能水準の達成を可能にすることによって、各人が自らの生活を変えていく手段を提供することを目指した、目標指向的かつ時間を限定したプロセスを意味する。それには、(たとえば自助具によって)機能の喪失や機能の制限を補償するための手段や、社会適応もしくは再適応を促進するための他の方策も含まれる(第11項)。
 機会の均等化とは、物理的ならびに文化的環境、住宅および輸送、社会的サービスと保健サービス、教育や労働の機会、スポーツやレクリエーションを含めた文化的ならびに社会的生活といった社会の全般的なシステムを、すべての人にとって接近・利用できるようにしていく過程を意味する(第12項)。
 機会の均等化に関しては、次のような指摘もなされている。
 障害をもつ人々が社会の中でそれぞれの役割を遂行し、大人としての義務を果たすことを大いに期待すべきである。障害者のイメージは種々の要因に基づく社会の態度─それがおそらく参加と平等を阻む最も大きな障壁となっているといえるのであるが─によって決まる。われわれはえてして障害にばかり目を向け、白杖、松葉杖、補聴器や車椅子に注目するが、人間を見ようとしていない。いま求められているのは、障害者の障害にではなく、能力に目を向けることである(第27項)。

〈行動の提言〉

 今後の世界行動計画の展開および実施にあたっては、障害者および障害者団体の意見を聞くべきであり、このためには、地方、国内、地域および国際レベルの障害者団体の組織化を推進するためにあらゆる努力を払うべきである。彼らの体験に基づくユニークな知識は、障害者のためのプログラムやサービスを計画するうえで貴重な貢献をすることができる。障害者は問題の討議を通じて、彼らに関係のある人々を最も広く代表した見解を提示してくれる。障害者は社会一般の態度に影響を与え、障害者の協議を正当化し、また、変化への力となる。また、彼らは障害者問題を最優先事項とするうえで重要な影響力をもっている。障害者自身が自らの利益のために計画された政策、プログラムおよびサービスの有効性を決定するうえで、実質的な影響力をもつべきである。この過程に精神障害者も含まれるよう特別の努力を払うべきである(第85項)。
 加盟各国は、世界行動計画の目標達成のための国家レベルの長期計画に早急に着手しなければならない。こうした計画は、その国の社会経済発展に対する全般的政策の不可欠の構成要素でなければならない(第88項)。
 加盟各国は障害者が自らを組織し、それぞれの利害と関心に関する主張を調整してゆけるよう、障害者団体に対する援助を拡大しなければならない(第91項)。
 加盟各国は、できる限りの方法で、障害者によって構成される、あるいは障害者を代表する組織が発展するよう積極的に努め、かつ奨励するべきである。会員や意志決定機関の中で、障害者、場合によっては親族が決定的な影響力をもっている組織が多くの国にある。しかしそれらの組織の多くは、自己を主張し、自らの権利のために闘う手段を持ち合わせていない(第92項)。

●国連・障害者の十年の宣言

 12月3日、国連第37回総会決議53「障害者に関する世界行動計画の実施」中での宣言。
 全17項目の決議。この第11項「……長期プランとして1983年から1992年を国連・障害者の十年と宣言し、また加盟各国に、この期間を障害者に関する世界行動計画を実施する手段の一つとして活用することを勧め」がそれである。なお、この決議の中には次の2項目も含まれている。
 「国際障害者年の経験に照らし、WHOが障害者団体や他の適切な団体と協議し、インペアメント、ディスアビリティおよびハンディキャップの定義をレビューすることを要請」(第15項)。「事務総長に、……第42回総会で障害者に関する世界行動計画の実施を評価するのを事務総長が助力するのを可能にさせる報告書を準備するため、主として障害者から構成される専門家会議を1987年に開催する可能性を探ることを要請」(第16項)。

●拷問およびその他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いまたは体罰から、被拘禁者および被抑留者を保護するための、保健要員とくに医師の役割に関係のある医療倫理の原則

 12月18日、国連第37回総会決議194 1~6の原則。

1983年

●(障害者)職業リハビリテーションおよび雇用に関する条約

  (条約第159号)
 6月1日、ILO第69回総会で採択。効力発生は1985年6月20日。
 第1部 定義と範囲 第1条、第2部 障害者に対するリハビリテーションと雇用政策の原則 第2~5条、第3部 障害者に対する職業リハビリテーションと雇用サービスの開発のための国内レベルでの行動 第6~9条、第4部 最終規定 第10~17条。

〈定義〉

 第1条 この条約の目的からすると、「障害者」という用語は、ふさわしい雇用を手に入れ、かつ、それを維持すること、さらには職場で昇進・昇格する見込みが、正当に認定された身体的もしくは精神的なインペアメントの結果、実質的に減退している個人を意味する。
 第2条 この条約の目的からすると、加盟各国は、職業リハビリテーションの目的は、障害者が雇用を手に入れ、それを維持し、さらに職場で昇進・昇格することが可能なようにし、それによって、こうした人の社会への統合もしくは再統合を促進すること、とみなすべきである。
 第3条 前記の政策は、適切な職業リハビリテーションの手段が障害者のすべてのカテゴリーに利用可能であることを保障し、また、開かれた労働市場において障害者に雇用機会を促進することを目指さなければならない。
 第4条 前記の政策は、障害労働者と一般の労働者間の平等機会の原則に基づかなければならない。障害をもつ男女労働者に対する機会と処遇の平等が尊重されなければならない。障害労働者と他の労働者間の機会と処遇の効果的平等を目指した特別な積極的な手段は、他の労働者に対する差別とみなされるべきではない。
 第5条 雇用者と労働者の代表的組織は、職業リハビリテーション活動に従事する公的機関と私的機関間の協力と調整を促進するためにとられる手段を含む、前記の政策の実施について相談をするべきである。障害者の、また障害者のための代表的組織もまた、相談にあずかるべきである。

●(障害者)職業リハビリテーションおよび雇用に関する勧告

  (勧告第168号)
 6月1日、ILO第69回総会で採択。
 1.定義と範囲(第1~6項)、2.職業リハビリテーションと雇用の機会((第7~14項)、3.地域社会への参加(第15~19項)、4.地方における職業リハビリテーション(第20~21項)、5.スタッフの養成・訓練(第22~30項)、6.職業リハビリテーションサービスの開発への雇用者組織と労働者組織の貢献(第31~37項)、7.職業リハビリテーションサービスの開発への障害者と彼らの組織の貢献(第38項)、8.社会保障制度の下での職業リハビリテーション(第39~41項)、9.調整(第42項)
 第7項「障害者は、可能な際はいつでも、彼ら自身の選択に対応する雇用にアクセスし、それを維持したり、昇進・昇格といった面で機会と処遇の平等を享受すべきであり、また、こうした雇用に対する彼らの個人的適切性を考慮されるべきである。」

1984年

●拷問およびその他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰を禁止する条約

 12月10日、国連第39回総会決議46、効力発生は1987年6月26日。
 全33か条、障害を予防するのにきわめて重要な、世界的に適用可能な基準が含まれている。

1986年

●開発の権利に関する宣言

 12月4日、国連第41回総会決議128。
 全10か条、開発は人間の奪うことのできない権利であり、すべての人はそれに基づいてすべての人権と基本的自由が完全に実現できる経済・社会・文化・政治的開発に参加し、貢献し、享受する権利をもつと宣言。

1988年

●あらゆる形態の抑留または拘禁の下にあるすべての者の保護のための諸原則

 12月9日、国連第43回総会決議173。
 39の原則。これらは市民的および政治的権利に関する国際規約に基礎を置いているものである。差別の禁止については、女子(とりわけ妊婦、乳飲み子の母)、児童および少年、老人、病人、障害をもつ人を特に取り上げている。

1989年

●児童の権利に関する条約

 11月20日、国連第44回総会決議25で採択、効力発生は1990年9月2日。
 第1部〔実体規定〕 第1条〔児童の定義〕、第2条〔差別の禁止〕、第3条〔児童の最善の利益〕、第4条〔立法上、行政上その他の措置〕、第5条〔親などの指導〕、第6条〔生命に対する権利〕、第7条〔氏名および国籍についての権利〕、第8条〔身元の保全〕、第9条〔親からの分離の禁止〕、第10条〔家族の再会〕、第11条〔不法な移送および不帰還の防止〕、第12条〔意見を表明する権利〕、第13条〔表現および情報の自由〕、第14条〔思想、良心、宗教の自由〕、第15条〔結社および集会の自由〕、第16条〔私生活、名誉および信用の尊重〕、第17条〔マス・メディア〕、第18条〔親の育成責任〕、第19条〔虐待からの保護〕、第20条〔代替的養育〕、第21条〔養子縁組〕、第22条〔難民である児童の保護〕、第23条〔障害児の権利〕、第24条〔健康および医療についての権利〕、第25条〔収容された児童の定期的審査〕、第26条〔社会保障についての権利〕、第27条〔生活水準についての権利〕、第28条〔教育についての権利〕、第29条〔教育の目的〕、第30条〔少数民族および原住民の児童の権利〕、第31条〔休息、余暇などについての権利〕、第32条〔経済的搾取などからの保護〕、第33条〔麻薬および向精神薬からの保護〕、第34条〔性的搾取からの保護〕、第35条〔誘拐、取引の防止〕、第36条〔他の形態の搾取からの保護〕、第37条〔自由を奪われた児童の取り扱い〕、第38条〔武力紛争からの保護〕、第39条〔回復および復帰〕、第40条〔少年司法〕、第41条〔国内および国際法令の優先適用〕
 第2部〔実施措置〕 第42条〔条約の広報〕、第43条〔児童の権利委員会〕、第44条〔締約国の報告義務〕、第45条〔委員会と他の機関〕
 第3部〔最終規定〕 第46~54条
 この条約全体が障害児に関連をもっている。とりわけ第2条〔差別の禁止〕、第3条〔児童の最善の利益〕、第6条〔生命に対する権利〕、第12条〔意見を表明する権利〕が重要であるが、なんといっても第23条〔障害児の権利〕が最重要である。
 第23条〔障害児の権利〕
 1 締約国は、精神的または身体的な障害をもつ児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し、および、社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
 2 締約国は、障害をもつ児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況および父母または当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格をもつ児童およびこのような児童の養護について責任がある者に与えることを奨励し、かつ、確保する。
 3 障害をもつ児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母または当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害をもつ児童が可能な限り社会の統合および個人の発達(文化的および精神的な発達を含む)を達成することに資する方法で当該児童が、教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備およびレクリエーションの機会を実質的に利用し、および享受することができるように行われるものとする。
 4 締約国は、国際協力の精神により、予防的な保健ならびに障害をもつ児童の医学的、心理学的および機能的治療の分野における適当な情報の交換(リハビリテーション、教育および職業サービスの方法に関する情報の普及および利用を含む)であって、これらの分野における自国の能力および技術を向上させ、ならびに自国の経験を広げることができるようにすることを目的とするものを促進する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
 第2条〔差別の禁止〕
 1 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童またはその父母もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的見解その他の見解、国民的、種族的もしくは社会的出身、財産、心身障害、出生または他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、および確保する。
 2 締約国は、児童がその父母、法定保護者または家族の構成員の地位、活動、表明した意見または信念によるあらゆる形態の差別または処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
 第3条〔児童の最善の利益〕
 1 児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的もしくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局または立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
 2 締約国は、児童の父母、法定保護者または児童について法的に責任をもつ他の者の権利および義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護および養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上および行政上の措置をとる。
 3 締約国は、児童の養護または保護のための施設、役務の提供および設備が、特に安全および健康の分野に関し、ならびにこれらの職員の数および適格性ならびに適正な監督に関し、権限をもつ当局の設定した基準に適合することを確保する。
 第6条〔生命に対する権利〕
 1 締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利をもつことを認める。
 2 締約国は、児童の生存および発達を可能な最大限の範囲において確保する。
 第12条〔意見を表明する権利〕
 1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童が、その児童に影響を及ぼすすべての事項について、自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢および成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
 2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上および行政上の手続きにおいて、国内法の手続き規則に合致する方法によって、直接にまたは代理人もしくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

●障害分野における人的資源開発に関するタリン行動ガイドライン

 12月8日、国連第44回総会決議70「障害者に関する世界行動計画の実施と国連・障害者の十年」の付属文書。
 序(第1~5項)、指導理念(第6~9項)、方略A.障害をもつ人々の参加(第10~13項)、B.草の根の団体の率先性の強化(第14~16項)、C.統合アプローチの促進(第17~21項)、D.教育および訓練の促進(第22~32項)、E.雇用の促進(第33~37項)、F.基金の準備(第38~39項)、G.地域社会の意識高揚の促進(第40~44項)、H.人的資源開発のための方法の改善(第45~50項)、I.地方および国際協力(第51~56項)

 序

 第1項 1989年8月14日から22日にかけ、ソビエト社会主義共和国連邦、エストニア社会主義共和国、タリンで開催された障害分野における人的資源に関する国際会議は、障害分野とりわけ開発途上国における人的資源開発の状況を検討し、障害者の今後の発展と継続的進歩を促進するために、新しいまた改革的な行動と同じく、現存の行動の強化が必要なことを確信する。
 第2項 1982年12月3日の国連第37回総会決議52による、障害者に関する世界行動計画の採択に続いて、障害者の人的資源の開発とりわけ教育、訓練、雇用、科学、技術分野における人的資源の開発に与えられる高度の優先性に対するニーズが増大してきている。……

 方略A.障害をもつ人々の参加

 第10項 障害者が完全な市民として、政策や計画の立案、実施、モニター、評価のあらゆるレベルでの決定に参加可能であるための法的基礎が準備される。
 第11項 障害者の完全参加を促進し、市民としての権利行使を可能にするためには、情報へのアクセスが必須である。この目的のためにあらゆる情報が適切なフォーマットに調整される必要がある。これら情報フォーマットには、点字、拡大文字、視聴覚メディアおよび手話通訳が含まれる。情報チャンネルには、テレビ、ラジオ、新聞および郵便が含まれるべきである。政府は、適切なフォーマットや、障害をもつ市民に到達するチャンネルを認定する際、障害者団体と協力すべきである。
 第12項 政府は、建物、街路ならびに路上、海上および空中輸送が、構造上も、他のあらゆる面でも障壁のないことを保障するため、障害をもつ人々に対するアクセスを促進する、法的に規定された基準や規則を採り入れ、施行し、基金支出をすべきである。また、コミュニケーション・システムと安全性および保安手段が、障害をもつ市民のニーズに合致するよう開発され、採用される必要がある。

 方略D.教育および訓練の促進

 第22項 障害児の全体的発達においても、また、障害児に対する肯定的態度の形成においても、人生の早い時期は、決定的に重要な時期である。この形成期である幼児・就学前期に、こうしたニーズに応ずる特別な計画や訓練材料が開発される必要がある。
 第23項 初等・中等レベルおよび、より高次のレベルの教育が、職業訓練プログラムの場合と同じく、通常の教育制度内で、通常の学校の場で障害者に利用可能にされるべきである。こうした教育が聾生徒に準備される際は、従来から用いられている手話に熟達している教師や通訳者が提供されなければならない。
 第24項 従来から用いられている手話および、これまで継承されてきている聾文化を促進する特殊教育プログラムや特殊教育学校が聾者に利用可能でなければならない。こうしたプログラムや学校に、聾者が雇用されるべきである。
 第25項 分離型の学校施設に代替可能な、経費のあまりかからない代替するものに、通常学校内で通常の教育を分担している教師のコンサルタントとしての特殊教育教師、専門家や特別な教材を備えたリソースルーム、特殊学級および聾生徒のための通訳者が含まれる。

 方略E.雇用の促進

 第33項 障害者は通常の労働の場で、同時に訓練され、働く権利をもっている。地域に根ざしたリハビリテーション計画は、開発途上国でのより望ましい職業機会の提供を奨励する必要がある。一般労働者のためにすでに存在している職業サービスや、ガイダンスと訓練、配置、雇用および関連サービスの活用がなされるべきである。また、伝統的な訓練よりも、仕事に従事しながらの訓練のほうがより効果的であるかもしれない。

1990年

●万人のための教育に関する世界宣言

 3月9日、ユネスコが主導し、ユニセフ、国連開発計画、世界銀行が共催した「万人のための教育に関する世界会議─基本的学習ニーズへの対応─」の終結にあたって出された宣言。
 全10項目で、世界会議の幅広い枠組みの中に特別なニーズ教育という考え方を位置づけた。開催地はタイのジョムチェン。

1991年

●精神障害をもつ人々の保護と、精神保健ケアの改善に関する原則

 12月17日、国連第46回総会決議119で採択。
 19の原則。原則1─基本的自由と基礎的諸権利 原則2─少数者の保護 原則3─地域社会での生活 原則4─精神障害の決定 原則5─医学的検査 原則6─守秘 原則7─地域社会と文化の役割 原則8─ケアの基準 原則9─(最も制約の少ない環境での)治療 原則10─医療 原則11─治療への同意(インフォームド・コンセント) 原則12─権利の告知 原則13─精神保健施設における権利と諸条件 原則14─精神保健施設への資源 原則15─入院の原則 原則16─措置入院 原則17─審査組織 原則18─手続き的保護 原則19─情報へのアクセス 原則20─犯罪者 原則21─苦情 原則22─監視と救済 原則23─原則の実行 原則24─精神保健施設に関する原則適用の範囲 原則25─現存する諸権利の留保
 精神障害をもつ人々の権利やその保護、対応の原則を包括的に示した基本原則である。

1993年

●ウィーン宣言および行動計画

 6月25日、ウィーンで開催された世界人権会議の最終日に採択された。
 会議には171か国の代表、841のNGO、その他が参加した。
 1の宣言の第22項「障害者が社会のあらゆる面に積極的に参加することを含め、障害者への非差別、あらゆる人権の平等な享受と基本的自由を保障することに特別な注意が払われる必要がある。」2の行動計画のB:平等、尊厳、寛容の6に「障害者の権利」が記されている。2の第63項「世界人権会議はあらゆる人権と基本的自由が普遍的なものであり、これには障害者も当然含まれることを再び確言する。すべての人は生まれながらに平等であり、生存、福祉、教育、労働、自立的に生活すること、社会のあらゆる面への積極的参加に同等の権利をもっている。そこで、障害者へのなんらかの直接的差別もしくは他の否定的・差別的取り扱いは、彼もしくは彼女の権利の侵害である。世界人権会議は各国政府に必要な際は、障害者がさまざまな権利にアクセスすることを保障する法律を成立させたり、調整することを要求する。」第64項「障害者はいたるところに存在する。障害をもつ人々は、社会への完全参加をさせない、あるいは制限する物理的・経済的・社会的・心理的・社会的に規定されたあらゆる障壁を撤廃することを通して、平等な機会を保障されるべきである。」第65項「第37回国連総会で採択された「障害者に関する世界行動計画」を想起し、世界人権会議は、国連総会と経済社会理事会に対し、1993年の会期に、障害をもつ人々の機会均等化に関する基準規則草案を採択することを要求する。」

●障害をもつ人々の機会均等化に関する基準規則

 12月20日、国連第48回総会決議96「障害をもつ人々の機会均等化に関する基準規則」によって、同名の付属文書が採択された。
 序─背景と現在のニーズ 従前の国際的行動 基準規則に向けて 障害をもつ人々の機会均等化に関する基準規則の目的と内容 障害に関する政策における基礎的概念
 前文 1.平等な参加に対する前提条件─規則1.意識の喚起 規則2.医療 規則3.リハビリテーション 規則4.支援サービス 2.平等な参加のための対象分野─規則5.アクセスできること 規則6.教育 規則7.雇用 規則8.所得の保障と社会保障 規則9.家庭生活と個人の人格 規則10.文化 規則11.レクリエーションとスポーツ 規則12.宗教 3.施行基準─規則13.情報と調査・研究 規則14.政策制定と立案 規則15.法律制定 規則16.経済政策 規則17.調整作業 規則18.障害をもつ人々の団体 規則19.人材養成・研修 規則20.基準規則実施における障害に関する計画の国としての監視と評価 規則21.技術的・経済的協力 規則22.国際協力 4.監視機構
 序が27項目、前文を除き1が29項目、2が52項目、3が51項目、4が13項目、合計172項目にわたる具体的で詳細な記述がなされている。
 原則6の教育では統合教育を原則とするが、通常の学校内では十分にニーズへの対応ができない場合は、当分の間、特殊学校内での教育が考えられるかもしれないこと、聾者や盲聾者は特有なコミュニケーション・ニーズがあるため、特別な場や方法での教育が適切かもしれない、といった指摘がなされている。
 この基準規則実施にあたり、各国と相談・助言にあたり、実施状況を調査・報告し、今後の方向性を示すための特別調査報告担当者が任命され(1994年から97年まで、次いで1998年から2000年まで)、報告書をまとめている。
 またこの規則は国連により中国語版、英語版、フランス語版、ロシア語版、スペイン語版、アラビア語版が出されているだけでなく、英語、フランス語、スペイン語の点訳版出版、簡約版出版がなされている。さらに各国政府などによってギリシャ語、デンマーク語、エストニア語、フィンランド語、ドイツ語、アイスランド語、オランダ語、ノルウェー語、スロバキア語、スロベニア語、シンハラ語、スウェーデン語、トルコ語、ヒンズー語などの翻訳が出されている。

●女子に対する暴力の撤廃に関する宣言

 12月20日、国連第48回総会決議104。
 全6箇条で、その第6番目に障害をもつ女性、高齢の女性、施設に入っている女性、拘留中の女性への特別な配慮の必要性が指摘されている。

1994年

●特別なニーズ教育における原則、政策、実践に関するサラマンカ声明と行動の枠組み

 6月10日、ユネスコとスペイン政府による「特別なニーズ教育に関する世界会議:アクセスと質」の最終日に採択された。
 特別なニーズ教育というのは、教育的に特別なニーズをもつとみなされる子どもたちへの教育ということである。これには障害児だけでなく、英才児、ストリート・チルドレン、労働している子どもたち、人里離れた地域の子どもたちや遊牧民の子どもたち、言語的・民族的・文化的マイノリティの子どもたち、他の恵まれていないもしくは辺境で生活している子どもたちなどが含まれている。
 声明では「特別な教育的ニーズをもつ児童・青年・成人に対し通常の教育システム内での教育を提供する必要性と緊急性とを認識し、……以下を信じ、かつ宣言する。」として「すべての子どもたちは誰であれ、教育を受ける基本的権利をもち、また、受容できる学習レベルに到達し、かつ維持する機会が与えられなければならず、すべての子どもは、ユニークな特性、関心、能力および学習のニーズをもっている。」「教育システムはきわめて多様なこうした特性やニーズを考慮に入れて計画・立案され、教育計画が実施されなければならず、特別な教育的ニーズをもつ子どもたちは、彼らのニーズに合致できる児童中心の教育学の枠内で調整する、通常の学校にアクセスしなければならず、このインクルーシブ志向をもつ通常の学校こそ、差別的態度と戦い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段であり、さらにそれらは、大多数の子どもたちに効果的な教育を提供し、全教育システムの効率を高め、ついには費用対効果の高いものにする。」
 声明に付随する「特別なニーズ教育に関する行動の枠組み」は1.特別なニーズ教育における新しい考え方 2.国家レベルでの行動指針 A.政策と組織 B.学校という要因 C.教職員の任用と養成・研修 D.外部からの支援サービス E.優先度の高い分野 F.地域社会からの展望 G.資源の必要性 3.地域レベルと国際レベルでの行動指針という構成で、全85項目からなっている。
 インクルージョンという基本方針ではあるが、障害をもつ子どもについては「国家から地方まで、あらゆるレベルでの教育政策は、障害をもつ子どもが近隣の学校、すなわち、その子どもが障害をもたなかったならば通ったであろう学校もしくは特別な施設での教育だけが個々の子どものニーズに合致できるかどうかは、ケースごとに検討されるべきである。」(第18項)、「子どもたちが特殊学校に措置されるといった例外的な場合においてさえ、この子どもたちの教育は完全に分離されたりする必要はない。また、訓練計画と同じく、中等教育や高等教育への特別なニーズをもつ青年や成人のインクルージョンを保障するため、必要な設備が用意されるべきである。また、障害をもつ少女や女性に対しアクセスや機会の平等を保障するため、特別な配慮がなされるべきである。」(第19項)といった記述がなされている。
 「教育政策は、個人差と個別の状況とを十分に考慮するべきである。例えば、聾者のコミュニケーション手段としての手話の重要性が認識されるべきであるし、また、すべての聾者が彼らの全国的手話で教育にアクセスできることを保障する準備がなされるべきである。聾者および盲聾者は特有のコミュニケーションニーズがあるため、彼らの教育は特殊学校もしくはメインストリーム校内の特殊学級やユニットでより適切に提供されるかもしれない。」(第21項)。
 この会議には各国代表のほか、ユネスコ、国連開発計画、ILO、国連パレスチナ難民救済機関、世界銀行などが参加、さらにヨーロッパ共同体委員会、OECDや非政府組織(29人)も出席した。

1995年

●社会開発に関するコペンハーゲン宣言と世界社会開発サミットの行動計画

 3月12日、世界社会開発サミットで採択された。
 コペンハーゲン宣言は、A.現在の社会状況とサミット開催の理由、B.原則と目標、C.コミットメント(10項目)で構成され、Aの特別な配慮が必要な人々の中に障害をもつ人々も入っている。障害をもつ人々は、世界の最大のマイノリティの一つであり、10人に1人以上の割合で存在しているし、貧困、失業、社会的孤立を強いられている。

(なかのよしたつ 佐野国際情報短期大学)

〈参考〉

 Theresia Degener and Yolan Koster-Dreese(eds.) Human Rights and Disabled Persons. Essays and Relevand Human Rights Instruments. (International Studies in Human Rights. Vol. 40) Martinus Nijhoff Publishers. 1995
 中野善達著『国際連合と障害者問題─重要関連決議文書集─』エンパワメント研究所、1997年

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2001年8月号(第21巻 通巻241号)