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「門戸開放」から「情報保障」へ

早瀬久美

 「門戸開放」「情報保障」この二つの言葉は、私が学生時代にかかわっていた学生団体でよく使われていた言葉だ。
 学生時代、全日本ろう学生懇談会という全国組織の関東支部で活動をしていた。聴こえない学生が集まり、学生生活のうえで起きるさまざまな問題に取り組む。その中で大きな問題とされていたのが、この二つの言葉だ。一つは「門戸開放」で、大学に入学する段階で入学を断られる問題。私自身も大学受験時にいくつかの大学に問い合わせたところ、やはり断られた経験がある。これは昔と比べて最近ではだいぶなくなってきたが、まだまだ根強く残っているところもある。そしてもうひとつの「情報保障」とは、大学での講義が聴こえないため十分に講義を受けることができない問題である。これは大学に限ったことではなく、小学校から高校まですべてにおいて在学する聴こえない子どもに起きている問題でもある。授業や講義が満足に受けることができないということは、学校生活において大変困難なことである。個人の努力では到底カバーしきれない。そこで制度として、手話通訳なりノートテイクなりをしっかりと確立していく必要がある。
 今年の7月に欠格条項が改正された。最近まで法によって障害者は国による資格を制限されていたが、関係者の甚大な力により幾分かやわらげられたおかげで、障害者の専門の道が広がったといえる。しかし、その専門を学ぶところでしっかりとした情報保障がなければ、問題が解決したとはいえない。情報保障制度がしっかり確立されてこそ、専門の道もより広がっていくだろう。
 全国には多くの聴覚障害をもつ学生がいる。毎年夏に行われる全国ろう学生の集いは、全国から学生が一同に会して交流・討論・研究を行うもので、今年で21回目の開催になる。学生の「学びたい!」という思いは大変強く、学生活動の大きなエネルギーとなっている。学生の問題と片付けたりするのではなく、すべての人が学問を学ぶことができるためにも、これからは、情報保障の問題を大きく取り上げて解決していくようにしていかなければならないだろう。

(はやせくみ 製薬会社勤務、東京都聴覚障害者連盟青年部委員)