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会議

日本脳外傷友の会
設立一周年記念総会・講演会
開催

東川悦子

 昨年4月1日に発足した「日本脳外傷友の会」も1年の間に着々とネットワークを広げ、全国8県に友の会ができました。
 6月17日、その八つの会と7月1日設立予定の岡山の会「脳外傷友の会・モモ」の代表も加え、設立一周年記念総会が、横浜みなとみらい地区はまぎんホール・ヴィアマーレで開かれました。
 前日に、各地の代表者による運営委員会が行われ、1年間の活動の成果、今後の運営方針等が協議されました。
 その内容は、総会での「共同アピール」としてまとめられ、当日、各地の会から参加した当事者の若者たちにより、舞台上で読み上げられ、満場の拍手で採択されました。
 各地の「友の会」の活動状況も報告され、特に札幌「コロポックル」の若者たちの共同作業所での取り組みとして、廃油せっけんの製作、保険の代理店業務等が紹介されました。
 また「しずおか」の代表からは、県民性のためか、会員の拡大が図られず、県の行政からの支援も得にくいと悩みが語られました。
 神奈川の「ナナ」の会は、ボランティアを交じえた若者たちが舞台に上り、昨年の活動の中で作成した文集の中から詩を朗読し、さらに合宿して協同製作したテーマソング「明日へ」を歌いました。一瞬の事故で挫折せざるを得なかった、夢を失った若者の気持ちが素直に表現されている歌で、目頭をぬぐうご家族の姿も多く見られました。
 午後は、講演会に先立ち、後援名義をいただいた厚生労働省から、担当の障害保健福祉部企画課課長補佐、重藤和弘氏よりごあいさつをいただきました。今年度開始された国の高次脳機能障害対策モデル事業についての概要説明もしていただきました。
 記念講演は、ニューヨーク大学のベン・イーシャイ教授による脳外傷のグループカウンセリング、セラピーについてご紹介いただきました。
 神奈川リハビリテーションセンターの大橋正洋先生の解説で、昨年4月放映の「クローズアップ現代」で紹介されたプログラムの主人公Kさんの姿が再現され、障害受容と、その後の生活ぶりが会場に感動を与えました。
 さらに、イーシャイ先生が持参されたビデオが上映されましたが、こちらの主人公は、大学病院の優秀な女医さんで、事故により、重度の脳損傷になられた方でした。セラピーを受けた結果、メモ、ベル等の代償機能を活用して、記憶を補い、自己の存在意義を見い出し、積極的に生きるようになったという内容のものでした。逐次通訳も、とても分かりやすい、すばらしい通訳でした。
 参加者との質疑応答も活発に行われましたが、「アメリカに行って、セラピーを受けることが重要なのではない。日本国内において、リハビリテーションのシステムを作ることが重要である。国の事業も始まり、「友の会」の組織も拡大していることは、今後に大きな希望が持てる」と語ってくださいました。
 記念品を贈呈した「ナナ」の若者を優しく何度も抱きしめ、また、若者の歌に合わせて手拍子を打っておられたイーシャイ先生、優しく気さくなお人柄が感じられました。
 午前中は空席も目立ちましたが、午後の講演会は専門の方々の参加も多く、満席状態でした。当会としては、初の大イベントでしたが、大成功でした。特にリハビリテーション医学会のご好意によりイーシャイ先生をお招きできたこと、その仲介をしてくださった大橋先生、ご協力くださった皆様、助成金をくださった諸団体には、本当に感謝申し上げます。
 今後総会は、友の会の設立順に沿って毎年各地で開くことに決定しました。来年は「みずほ」設立五周年のお祝いと共催で(6月9日・名古屋)行います。

(ひがしかわえつこ 日本脳外傷友の会会長)

日本脳外傷友の会設立一周年記念総会 アピール

 日本脳外傷友の会設立一周年記念総会の名において、次のようなアピールを提案いたします。本日お集まりの各地の会員・関係者のご賛同を得て採択いたしたく、お願いいたします。

1 脳外傷の障害認定制度の創設を求めます。

 脳外傷は現行福祉制度の谷間におかれた障害です。高次脳機能障害は多岐にわたりますが、精神保健福祉制度の範疇で考えていくという現状には、不都合が多すぎます。今回のモデル事業は、脳外傷などの高次脳機能障害の症例を集積し、評価・診断の基準、および支援プログラムの確立を目指しているはずです。有効なモデル事業の推進と、今後の福祉制度創設につながる研究・実践を求めます。

2 脳外傷の就労・生活支援システムの早期確立を求めます。

 脳外傷者は若年層に多く、自立に向けた就労・生活支援システムが不可欠です。アメリカやヨーロッパ諸国に比べ、わが国の脳外傷問題への取り組みは、かなり遅れています。急性期からの一貫したリハビリテーションシステムや社会復帰へのプログラム・社会保障制度、当事者団体の役割などの情報を収集し、導入可能なものを活用するよう求めます。

3 研究・実践体制の充実・専門家の養成・医療保険制度の改善を求めます。

 脳外傷は広汎な研究・実践体制の充実が必要です。臨床心理士・作業療法士・言語聴覚士、ソーシャルワーカーなどの不足は大きな問題です。現行の医療保険制度の改善が不可欠です。

4 脳外傷者の増加をもたらす社会状況の改善を求めます。

 交通戦争と呼ばれる、我が国の交通事故状況を改善し、事故多発地点の改善、安全性の高い車の開発などを求めます。転落等の労災事故の防止対策の強化も必要です。

5 全国の脳外傷者・家族が孤立することなく、ネットワークをひろげて力を合わせましょう。障害者が、明日に希望の持てる社会の実現を目指して、連帯と行動の輪を広げましょう。

平成13年6月17日

日本脳外傷友の会