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カウントダウン AP10年

「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム
10月からキャンペーン活動開始!!

板山賢治 実行委員会委員長、本誌編集委員
松友了 実行委員会キャンペーン委員会委員長

 昨年12月6日に「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムの組織委員会が発足しました。2002年の会議開催まであと1年余りとなり、この10月からは、いよいよキャンペーン活動も始まります。
そこで同実行委員会委員長の板山賢治さんと同キャンペーン委員会委員長の松友了さんに、キャンペーン活動を中心にお話しをうかがいました。

第6回DPI世界会議札幌大会

(世界の障害当事者が集う会議)
2002年10月15日~18日 参加予定人数 約150か国から、約2000人 会場は、北海道立総合体育センター。

第12回RIアジア太平洋地域会議

(リハビリテーション分野の専門家が中心に集まる会議)
2002年10月21日~23日 大阪・堺市の記念施設を中心に開催。アジア太平洋地域の約50の国と地域を中心に、約1000人が参加の予定。

「アジア太平洋障害者の十年」推進キャンペーン大阪会議

(アジア太平洋地域各国の障害者関係NGOが中心に集まる会議)
2002年10月21日~23日 大阪・堺市の記念施設を中心に開催。アジア太平洋地域各地より約500人が参加の予定。

来年の10月に「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムが開催されます。まずはフォーラムの主旨とねらいについて簡単にお話しいただけますか。

障害種別を超えた取り組み

板山

 1993年に日本と中国の呼びかけで「アジア太平洋障害者の十年」がスタートしました。そして、来年は最終年にあたります。1999年に開かれたキャンペーンマレーシア会議のときに、最終年の会議は、アジア太平洋障害者の十年を言い出した日本で締めくくりをしてほしいという要望があり、お引き受けしたという経緯があります。一方で、世界の障害者の集まりであるDPIの世界会議が札幌で開催されることが並行して決まりました。
そこで私ども関係者は、DPIの札幌会議が開かれるとすれば、ホスト国である日本は、障害の種別を超え、イデオロギーを超えて障害者関係団体が一緒になって、世界の障害者を迎えようではないかということになりました。「小異を捨てて大同につく」という関係者の決断と合意が得られたのです。そうした動きを総合して「アジア太平洋障害者の十年最終年記念フォーラム」という名においてやっていこうということになったのです。
この会議にのぞむために、組織委員会というものができました。委員長は、車いすの国会議員八代英太さん、副委員長は日本障害者リハビリテーション協会の山下眞臣会長です。また、実行委員会は100人あまりのメンバーで構成されています。同時に、200人余の超党派の国会議員が障害者の国際会議を成功させるために、橋本元総理を会長に推進議員連盟をつくって応援をしてくださることになりました。
三つの国際会議は、来年の10月に札幌と大阪で開催されますが、「三つのキャンペーン」は今年の10月から1年をかけて活動しようということになっています。実行委員会の中には七つの委員会が設けられています。その重要な一つが「キャンペーン委員会」です。国際会議は1、2週間で終わってしまいますが、せっかくの機会ですから1年をかけてキャンペーンをすることになりました。そして、来年の10月の三つの国際会議につなぎ、その成果を国際会議の集約として共同宣言・アピールといったものに表現できたらいいなと思っています。さらにポスト十年をどうするかも、会議の中で決めていきたいと思っています。

松友

 戦後、日本は国連を中心とした世界的な動きの中で平和を中心として動いてきました。その流れの中で、障害のある人の活動もリンクしながら、日本の施策も進んできたと思っています。それが特に大きく出てきたのが、1981年の「国際障害者年」、それから83年に続く「国連・障害者の十年」そして今度の「アジア太平洋障害者の十年」です。こういう大きな流れからみて、わが国の戦後の障害者福祉は世界からいろんな形の影響を受けました。また、この十年はアジアの人々との連携を確認する意味で大変大きな意味があると思います。そこにDPIが札幌で世界大会を開くことになりました。これは日本にとってとてもいい機会です。世界のエネルギーを日本ではじけさせる意味でも障害種別を超えた取り組みをわれわれ障害関係者は積極的に行わねばなりません。会議自体はせいぜい1週間くらいですが、実際は、その準備、背景、それにまつわるさまざまな動きがあるからこそ、世界会議は大変であるとともに意義があるんですね。
世界ではIDAという世界組織、さらには、国連を中心とした人権条約への大きな動きがあります。そこにつないでいくエネルギーの結集という意味でも、今回の2002年のフォーラムが日本で開かれることは、大変意味があると理解しています。

 2002年は、1981年の国際障害者年から20年の集大成となります。来年のフォーラムに期待することは、どのようなものがありますでしょうか。

日本の障害者団体の実力が試されるとき

板山

 今回のフォーラムの推進には、多くの当事者関係組織が賛同してくれました。それが今度のフォーラム組織委員会です。それに全国社会福祉協議会や日本障害者リハビリテーション協会が一緒になりまして、このフォーラムを実現しようと協同しています。私はこれを機に、日本の障害者団体がゆるい意味で大同団結をする、これが第1の期待です。
もう一つは、RIの会議は専門家の会議です。専門家とそのリハビリテーションの受益者である当事者が一緒になって一つの会議をもち、国連なり世界の国々に大阪宣言、日本宣言といったものを発信することができたらすばらしいなと思っています。これが第2の期待です。
三つ目は、これを機会にアジアの国々が世界の障害者の動向なり、日本のリハビリテーション、あるいはアジア太平洋地域の障害者施策の動向をより広く受け止めていただいて、それぞれの国々、地域に広げていっていただけたらいいなと思っています。新世紀に向けて、障害者施策のレールづくりをということですね。
最後に期待したいのは、「草の根」「手づくり」のフォーラムにしたいということです。「草の根」というのは、一人ひとりの障害者を含む市民みんなが参加するという活動です。その人々の手づくりのフォーラムにしていきたいと実行委員会は考えています。ですからお金を集めるにしても、今までのように政府や財界に最初からお願いするのではなく、障害者自身が草の根の運動として自分たちなりにお金を集めて、その足りない部分をお願いしますという形にしてみてはどうか。いわば、今回のフォーラムの成果は、日本の障害者を含む障害者関係団体の組織の力、自分たちの持っている実力がどの程度のものかを証明することになるのではないかと思っています。

松友

 まさにその通りですね。1981年の国際障害者年は、それまでまったくバラバラだった障害者団体が結集できました。しかし、いろんな意味での不完全さがありました。今度20年ぶりにそれをもっと拡大し、発展させようとしています。それから、2002年というのはご存知の通り、措置制度の最後の年なんですね。2003年から日本の福祉のしくみが大きく変わるわけです。アジア太平洋障害者の十年も2002年で一区切りがつきますが、わが国の戦後50年の福祉政策もある種の幕を引いて、大きく飛躍する前の年であるわけです。
それに先ほどから板山さんがおっしゃっていますが、この20年の動きとして障害者の自己決定、障害者主体といわれたものが、この大会で試されるという意義があると思います。

板山

 私たちが「草の根」「手づくり」と申し上げていますが、去る6月12日、政府・障害者施策推進本部も障害者の国際会議を成功させるための推進について申し合わせをしてくれました。これは外国からお客さんがくる、国内を移動する、資金集めをする、さまざまな問題・場面について、政府各省がバックアップする体制をつくってくれたということです。

 フォーラムの主な活動の一つにキャンペーン活動があります。キャンペーン活動はこの10月から始まりますが、その内容などについてお話しください。

各地の動きが一つになる

松友

 キャンペーン活動の紹介に入る前に二つほど説明させていただきたいと思います。いわゆる社会に対するアピール活動はいろんな意味で必要なんですが、その役割は二つあります。一つは全体的な広報活動です。先ほど板山さんが紹介されましたが、われわれは三つのテーマを中心にしてダイナミズムな動き方のキャンペーンをやっていこうとしています。ですから広報委員会と連携した活動をしていく。これが第一点です。
第二点ですが、ちょうど10年前に国連・障害者の十年の最終年のときに、私たちはキャラバンキャンペーンをやりました。北は礼文島から南は石垣島まで、文字どおり車で全国を回り、最終的には東京に集まるというたいへんな事業を実現させたわけです。それに合わせて各都道府県内で県内キャンペーンをやり、かなりいろいろな影響を与えました。文字どおりのキャンペーンができたわけです。前回はどちらかというと中央主導型だったんですが、今回はご存知のとおり、昨年4月から地方分権一括法が動き出しました。地方分権という形で地方がどう主体的に動けるようなしかけができるか、ということで苦慮してきたわけです。
ですから津波のごとく波状的に各地で動きが起こりだして、大きなうねりをつくっていけないか、そういうしかけを考えています。
キャンペーンのテーマは三つで、これを大きく政策とIT情報の二つに分けて小委員会を作って準備をしています。政策のほうは欠格条項の見直しと障害者計画の策定です。欠格条項の見直しは、昨年政府レベル、法改正などで大きく動きましたが、これを都道府県、市町村レベルにまで動きを広めていこうというものです。障害者計画は都道府県レベル、および政令指定都市レベルで義務設定で動いていますが、この中身を評価してみようということです。障害者計画はまだ制定していない市町村が3分の1くらいあるわけです。ですから、ここは制定する方向に刺激を与えるために、中央に評価委員会をつくり、各都道府県ごとに働きかけていく。すでに都道府県には社会参加推進センターがありますので、そのセンターを中心にすべての障害者団体が結集して実行委員会をつくって、そこが受け皿になる。10年前は、社会福祉協議会が受け皿になってくれましたが、今度は、障害者団体を中心とした実行委員会を都道府県につくって、市町村の動きに対する働きかけや都道府県の評価というものを中央の評価委員会と連携をしながらやっていく、これが大きな特徴の一つです。

10月にキャンペーン会議を開催

 二つ目が、国内をブロックごとに分け、こちらと強力な連携をもったキャンペーンの会議を開いていく。どのブロックで、どういうテーマでやるかというのは中央と連携しながら、都道府県の実行委員会主導の中で進めていく形にもっていきたいと思っています。
実は10月に第1回のキャンペーンをはじめるわけですが、これはもう一つのキャンペーンの小委員会である「情報」です。情報化社会の中でいわゆる「デジタルディバイド(情報格差)」を起こさせてはいけない。そのためには大きく技術的なものとシステム的なものに対して強力的に働きかけようというキャンペーンをやるわけです。そのスタートとして、テレビ放送の中でBS放送というシステムに切り替えていく大きな技術革新の中で、障害のある方に対する情報保障をきちんとアピールすることにまず焦点を合わせたキャンペーン会議を10月19日に設定しているわけです。これをスタートとして、先ほど述べた各地のブロックでのキャンペーン会議を連続的に進めていこうと考えています。
さらにこれは組織委員会、そしてキャンペーン委員会がしかけていくブロックの動きでもあるんですが、これを本当に生かしていくためには、都道府県の実行委員会の動きとともにもう一つは、ある種の自発的な、そこに連なっていくさまざまな自主的な動きが無数に開かれていかないと、全国的なうねりとなって浮き上がってこないのです。すでに北海道の札幌大会の組織委員会では、自主的にDPI世界大会のキャンペーン会議をいくつか開いています。そのような動きと相乗りしていくのがわれわれの考えです。かつて国際障害者年のときに1年間、国際障害者年協賛事業としていろんなキャンペーン会議が無数に繋がっていったのと同じように、各団体・グループがやる事業も来年のフォーラムに向けた一連のキャンペーンにつなげていくような形でネットワークをつくっていく。これが三つ目のしかけと考えています。

板山

 キャンペーンの三つのテーマの中で特に大事なのが「欠格条項」の問題です。制度が変わっても地方自治体や民間企業や各種の専門職団体がそれを的確に受け止めて、改善のための努力をしなくてはいけないんですね。一方、「障害者計画」も平成12年3月末現在で、未計画の自治体が3分の1くらいありました。最近の調査では、4分の1くらいになってきたんです。でも計画ができても精神障害者を対象にしない計画であったり、数値目標を織り込んだ計画になっていないんです。それらを見直して総点検をすることはキャンペーンとして非常に大切なことですから、これは松友委員長を中心にぜひ推進してほしいと思います。
ただし、中央が音頭をとっておしまいということではなくて、都道府県の社会参加推進センターがそのための拠点として残っていくことが大切なんですね。そういう意味でこのキャンペーンの成果に大きく期待をしているわけです。

 今回は、社会参加推進センターの動きがポイントになりそうですね。

各地での動きが次へのステップにつながる

松友

 社会参加推進センターは、日身連、全家連、育成会などそれぞれ歴史のある大きな団体が中心になりながら、いろんな団体が参加して中央に、そして都道府県に作っているものです。今まではうちうちの事業が中心でしたが、最近はスポーツなど、かなり広がりがでてきています。そして今度は、キャンペーン活動の受け皿となれば、もっと社会にアピールでき、団体としても活性化されていくし、なんと言っても社会の人たちに見える形となって強い啓発の形になるんじゃないかと思っています。

板山

 この社会参加推進センターというのは、中央にもあるんですよ。これは厚生労働省が日身連に経営を委託をしているんですね。そのために知的障害や精神障害の分野からは、「あれは身体障害者のセンターだ」と誤解を招いているんです。都道府県もそのきらいがないわけでもありません。今回、このフォーラム、キャンペーンを通して、都道府県の社会参加推進センターが全障害者のものであることを、ソーシャルアクションを通じて改めて認識していただきたいと思っています。このキャンペーンがセンターのてこ入れにもなりますね。

松友

 国際障害者年以降の一つの大きな課題は、障害種別におけるさまざまなサービスのあり方だったんですね。個別にプログラムを組むのは当然ですが、それを基本とする動きとして法体系であるとか、運動の連携であるとか、これは総合化され大きな流れとしていかなくてはならない課題で、それぞれ努力がなされてきたわけです。
今度の実行委員会もその成果であるわけです。それは社会参加推進センターが中心に動くことによって、形として実のあるものにしていくのが大きなねらいです。大きなものとしてそれが残れば、大きな成果として次のステップになるだろうと考えています。大きな目的(ゴール)が設定されているわけですから、これは必ず各地の動きが高まることを期待しています。
今回のキャンペーン活動は、国連の基準規則であるとか、障害者計画の評価であるとか、国内活動はもとより国際的なつながりでやっていこうとしています。国連においては人権条約制定への動きがあります。やはり一番の基本は「人権」という視点から欠格条項を見直すとともに、障害者計画についても大きく切り込んでいこうと考えています。
課題は主体である当事者自身がいかにそこに参加するかです。その参加というのは、一つにはいろんな形のキャンペーンの具体的な行動の呼びかけにかかわっていくことがあります。もう一つは、これは日本ではあまり評価されませんが、フォーラムそのもの、キャンペーン活動を成功させる財政的な部分をきちっと自分たちが持ち寄ってくるということが重要ではないかと思います。
文字通り七つの委員会を重ねていきながら、この1年間がいい意味でのアピールになり、障害当事者や家族が自らを鍛えて、大きく成長させていく、そして国民社会に対してその理解と参加を喚起していく、それが実現できることをめざしています。
最終的には、自分に関係する意義のある年なんだという主体性と、この事業自体には意味があるんだという確信をもって社会全体にアピールできる、深みのあるキャンペーンができると確信しています。

 最後になりますが、本誌読者の方に一言お願いします。

みんなで参加して盛り上げる

板山

 先ほど申し上げましたが、今回のフォーラムのモットーは、「草の根」の「手づくり」のフォーラムということです。必要とする総経費は、三つの国際会議・キャンペーンを合わせて6~7億円くらいかかると思いますが、その半分は、参加者や障害者自身の努力で集めたい。ただし足りないところは関係の団体や助成団体、経済界のご協力をいただきたいと思っております。ぜひその点のご理解をお願いしたいと思っております。すでに個人や一部の法人からそれなりの協力をしますという申し入れがあり、ありがたいと思っています。そのためには、みんなが参加しやすい簡単な仕組みを私たち自身が工夫しなければなりません。
最近、新しい動きがあります。この十年の評価とポスト十年のあり方も含めて、アジア太平洋地域の政府レベルの会議(ESCAP評価会議)を琵琶湖で開くことが決まったようです。政府も外務省などを含めてこれに協力することになったようです。この政府レベルの会議に障害者団体の代表が参加するチャンスが得られるということになりますと、この最終年記念フォーラムというのは今までにない障害当事者と専門家、ボランティア、NGOそして政府レベルが同一の地域において一緒にものを考える格好の機会になりそうです。そしてこれからの十年、また、新世紀における障害者施策のありようをみんなで考え、世界に発信する機会が作られそうでありまして、たいへん期待を深くしているところです。それには日本の障害者関係団体があるいは専門家団体が手を組んで一緒に参加しなければその盛り上がりは期待できないし、意味がありません。「ノーマライゼーション」の読者のみなさんも一人のメンバーとして参画し、ご協力をいただきたいと思います。

松友

 2002年は国際会議が三つ、先ほどの政府レベルの会議を入れると四つになります。全部とはいいませんが、ぜひ参加をしてほしいと思います。余裕のある方は、今年の12月にベトナムのハノイで開かれる9回目のキャンペーン会議に参加していただきたい。とにかく参加して一緒に動いて共感・共有していただきたいと思います。
それと2002年で「アジア太平洋障害者の十年」は終わりますが、アジアとの関係は逆にこれから始まるんだという感覚で、ぜひ具体的なつながりをそれぞれが模索してほしいと思います。そのためにはアジアの方と知り合いになり、お友達になって、それぞれの国の状況を知ることが必要です。今回のフォーラムをアジアに向けた行動の一つのステップとする。ぜひとも今度のフォーラムにかかわりを持ってほしいと期待しております。

 本日は、ありがとうございました。