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ケアについての一考察

社会参加、子育て支援の制度の充実

田渕規子

 私の障害は脊髄損傷です。脊損というと事故ですか?と聞かれますが、6歳の時に突然歩けなくなり、原因は分かりませんでした。
 その頃は幼くて歩けなくなったことへのショックを感じた覚えはないのですが、車いすに乗ることをイヤがって、どこへ行くのも父に負ぶってもらっていた記憶が残っています。
 脊髄損傷と言ってもその障害はさまざまで、頸椎なら上肢や体温機能、呼吸器にも障害をもつ人もいます。私の場合は腰椎だったため上肢に障害はなく、着替えや食事は自分ですることができるし、整った環境であればトイレや入浴も自力で可能です。
 しかし、脊損の多くは排せつと床ずれ(褥創)で悩まされていて、小さなかすり傷でも生活が一変してしまうことがあります。私もその1人なのですが、マヒしているので悪化は早く、一晩で腫れ上がり皮が剥けてしまうこともあります。そうなると、少しでも安静と圧迫を避けるため、ほとんどの人は24時間横になっていなければならないし、入院する必要も出てくるでしょう。

 私は10年前に結婚をして、今は夫と息子2人(9歳、5歳)と車いす住宅に住んでいます。結婚と同時に実家を離れ、家事をやるようになると、ジッと座っていることがなくなり、以前のように床ずれに悩まされることはなくなりました。
 子どもが生まれてからは、さらに忙しく子どもに追われる毎日になりましたが、お風呂に入れることと散歩以外は、時間はかかっても自分でこなしていました。その頃の私にとっては、それが普通のこと、当たり前のことであり、日中は近くに住んでいる私の両親の助けを借りることで、特別困ることはなく毎日が過ぎていました。
 そんな生活が原因したのか、4年前に生命に危険が及ぶほどの床ずれが出きたことで、それまでの生活を見直す必要に迫られました。下の子も生まれていたので、子どもたちと離れての入院はとても辛く、大変なものでした。子どもたちも私と離れていたことで精神的に不安定になり、それが小学生になっても続いていました。

 そんな様子を見ていると、肉親の助けを借りるだけの生活はもう続けていけないと考えるようになりました。
 それまでの私は、障害者が子育てしてるんだからと、周りから言われたくない思いで必死でした。子どものことはできるだけ私たち夫婦でやり、それが子どもたちにとって一番望ましいことだと信じていました。
 しかし、入院をきっかけとして、子どもたちの側にいること、身体がシンドくて横になっていることが多い母親でも、子どもの近くにいることが大事なんだという考えに変わっていきました。このことを病院のケースワーカーに相談したところ、市のヘルパー制度が使えることを知り、少しずつ来ていただくようになりました。
 最初は、私が人に頼むことに慣れず遠慮があったり、後ろめたさがあったりして、ヘルパーが帰られた後はグッタリしてしまい、何のために来てもらってるんだろうとため息ばかりでした。

 ヘルパー制度で私が必要としていたのは、子育ての部分でした。今は子どもたちも大きくなりましたが、その頃は、まだ下の子は離乳したばかりで、オムツを替えたり、砂場で遊んでいる時は見守っていてほしい、と市に訴えました。しかし前例がないということで、なかなか受け入れてもらえませんでしたが、私にとってそれが一番のニーズであり、サポートがほしい場面だったのです。ヘルパーさんにも、「私は障害をもっているあなたの介助で来てるんだから、なんで障害がない子どもたちのことをやる必要があるの…」と言われたこともありました。
 現在は月~金曜の毎日、夕方4時間枠でホームヘルプサービスを使っているので、日中はCIL(自立生活センター)で仕事をすることができます。
 ところが、子どもたちに手がかからなくなり、私が外へ出ることが多くなってくると、今のホームヘルプサービスでは十分なサポートが得られなくなってきました。仕事で急な予定が入ってもヘルパーの時間には自宅に戻らなければならないので、私がその時間に縛られてしまうのです。
 3年前から、CILで仕事をさせていただくようになり、徐々にですが、私の考え方も変わってきました。
 障害があってもなくても1日に与えられた時間は同じ24時間です。できないところを手伝ってもらうだけでなく、できることでも多くの時間と体力を費やすのであれば、介助の助けを求め、その分を余暇活動や社会とのかかわりに充てたいと思うようになったのです。今は、子どもとキャッチボールの時、ボールを拾うことだって私の介助で必要なんだと、声を大にして言いたいのです。
 現在、東京都では全身性障害者介護人派遣事業という制度がありますが、私のような障害では利用することができません。
 障害のある私たちが、学校の行事やPTA、地域での活動に積極的に参加できるよう、ホームヘルプサービスでは対応しきれない、社会参加、子育て支援の制度を充実させていけるよう、暮らしの中やCILの活動で考え、社会にもアピールしていきたいと思います。

(たぶちのりこ 自立生活センター・東大和)