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列島縦断ネットワーキング

石川
「第5回 医療・情報講演会&生活便利グッズ展」開催!!

稲垣和明

 もし、もしも、見えなくなってしまったら…!!―あたる疾患と診断された患者にとっては、日頃気にしないようにしていても、つい気になってしまう、そんな患者ならではの複雑な思いをサブテーマとした「第5回医療・情報講演会」は、色褪せた蝉時雨に夏の名残りが感じられる去る9月2日、ここ石川県社会福祉会館(石川県金沢市)において、地元石川県はもとより、福井、富山の両県から、事前の不安をよそに昨年を大きく上回る患者や医療関係者の方々、約130人の方々にご出席いただき、ほぼ満席の中で開催されました。

企画の意図

 近年の医療技術の発達は、目覚ましいものではありますが、眼の疾患の中には、網膜色素変性症や糖尿病網膜症など、いまだにその治療法が確立されていない疾患も多々、存在しています。しかしながら、現段階での眼科医療(福祉)は、そうした患者に対するケアはほとんどなく、患者はひとり途方に暮れるだけといった状況です。
 私たち患者自らが運営している「網膜色素変性症患者と家族の会石川県支部(支部長 丸山征四郎)」では、そうした痛切な悩みを根底に、同じような症状や悩みをもつ患者として万一にでも、そうなってしまったときや、またそうなってしまった後のさまざまな事柄に対し、少しでも朗報になればと、またより多くの関係各位の方々にこうした新たな動きがあることを知っていただきたく、この催しを企画・開催しました。

求められる“こころのケア”

 今回、ご講演いただいた新潟・信楽園病院内科部長の山田幸男先生は、専門は内科であるにもかかわらず、全国でも珍しい中途視覚障害者の総合的リハビリテーションの必要性に着目し、新潟県において“視覚障害者のこころのケア”をはじめとするさまざまな活動を行っておられます。
 今回の講演では、「当院における視覚障害者リハビリテーションの取り組み」として、視覚障害者のリハビリテーション外来の開設と内容、いまや視覚障害者にとっての必須アイテムとなった音声パソコンの講習、白杖歩行・誘導歩行の指導、そして「仕事や生活が困難になったとき、だれもが自殺を考える」という衝撃的なデータから、“こころのケア”の必要性についてのお話を熱弁されました。
 さらには、目が見える人たちに対してのさまざまなアプローチとして、子どもたちと視覚障害者とのふれあいの場となる“サマースクール”、目が見える人との交流ともなる“誘導歩行”などの多岐に渡る活動状況が紹介されました。こうした活動を通し、障害をもっても、なお前向き・積極的に社会参加し、広くより豊かな“人に優しい地域社会”を創造したいという山田先生の思い、その熱意が会場いっぱいに広がり、北陸・金沢の地にあってより強くアピールされたように感じました。
 また、お昼休みをはさみ午後から地元、金沢医科大学附属病院眼科助教授の中泉裕子先生には、「網膜色素変性症とハイテク治療の展望」についてお話いただきました。現在、一般に知られる糖尿病網膜症以上に、患者が多いといわれる網膜色素変性症、その諸症状並びに研究状況(現段階の治療方法・遺伝形式・遺伝子治療、網膜色素上川移植・人工網膜等)についての開設に始まった講演は、「ロービジョンケア」についての説明ともなりました。
 最後に、国立身体障害者リハビリテーションセンター・ロービジョンクリニックの柳島先生の「同センターのある所沢市では、白杖を持った人の後をノロノロと走る車とそれを見守るまちの人々がよく見受けられる」とのお話を引用され、「これこそが、ノーマライゼーションの理念なのではないか、と私は考えます」と締めくくられました。金沢医科大学附属病院では、すでにロービジョンクリニック開設に向けて準備を進めておられるとのこと、少しでも早い同外来の開設が待たれるところです。

正しく使ってこそ生かされる便利グッズ、使う側の立場での展示会

 そして、隣接する大ホールにおいて、私たちとしては初めての福祉機器展を開設しました。音声パソコンや拡大読書器・各種ルーペ・家庭用品・ステーショナリーグッズなど、不十分な点もありましたが、カテゴリー別に分けて展示、少しでも見やすいよう配慮しました。特に拡大読書器については、自らが患者であり、大活字本『見えない見えにくい人の便利グッズカタログ』の著者の1人でもある京都の森田茂樹さんに、拡大読書器やルーペ・単眼鏡の選び方、使い方のアドバイスを、また、視覚障害者がパソコン使用にあたって必要とされる音声ソフト開発のパイオニアとして知られる斉藤正雄さんにもその説明にあたっていただきました。
 このように行われた「第5回 医療・情報講演会&生活便利グッズ展」、微力ではありますが、これにより、いくぶんなりともこの地域に、北陸の地に、“ロービジョンケア”と“バリアフリー社会の創造”につながる何かを伝えることができたように感じています。
 今後は、北陸3県にわたるようなこうした活動の必要性を感じながらも、できるならば、地域の保健所や福祉施設との連携を持ちながら、各市町村に出かけ、小規模ながらも心通う交流と情報の提供を図っていきたいと考えています。
 最後に、ご協力いただきました関係各社・団体、ボランティアの方々、ご出席いただきました方々に心よりお礼申し上げ、金沢からのネットワーク通信を終わります。

(いながきかずあき 色変・ひまわりの会石川県支部)

網膜色素変性症の患者と家族の会

『色変・ひまわりの会』ごあんない

 『色変・ひまわりの会』は、網膜色素変性症をはじめ、さまざまな眼疾患の患者とその家族によって構成する民間ケアサークルです。視覚障害ならではの悩みや各種申請手続きなどに関する情報提供や医療講演・研修会・交流会を定期的に行い、会員各位の健全な暮らしの支援を目的に活動しています。

《お問い合わせ》

網膜色素変性症の患者と家族の会
色変・ひまわりの会石川県支部
事務局 光井峰生
小松市福乃宮町1-36(〒923-0865)
TEL 0761-24-1266
FAX 0761-24-6292

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2001年11月号(第21巻 通巻244号)