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『日本聴力障害新聞』

高田英一

1 「日本聴力障害新聞」の歩み

 日本聴力障害新聞は1948年5月1日に創刊されました。創刊当時は「日本聾唖新聞」という紙名で、タブロイド2頁でした。月刊で、発行部数は約300部、購読料は年間60円でした。49年6月1日に「日本聾唖ニュース」と改題するとともに、購読料は120円となりました。
 50年1月号からページ数が4ページに増え、52年1月号から「日本聴力障害新聞」と改題し、この紙名が現在までずっと続いています。57年6月1日から、全日本ろうあ連盟の機関紙になりました。実は、それまでは、個人の経営する新聞だったのです。
 74年1月1日に編集部の専従職員(ろう者)を採用、読者の拡大運動が組織的に取り組まれるようになります。85年5月1日には、念願の読者1万人を突破しました。読者拡大の組織活動が強化され、90年5月1日には読者1万5000人を突破しました。93年10月1日に購読料が3000円に改定され、96年5月1日には読者が2万人を突破しました。
 97年1月号からカラー印刷を試行、ただし新年号の1面、12面をカラーにする程度でした。その後、2001年10月号(通巻610号)から、毎号2頁のカラー化に踏み切りました。現在の全国有料読者数は約2万4000人となっています。

2 運動体の機関紙としての役割

 ろう者の運動は、ろう者に対する差別や偏見をなくし、ろう者の人間としての人権を守り、社会参加と平等を推進することにあります。こうした運動の中核を担ってきたのは、50年を超える歴史をもつろう者の全国組織・全日本ろうあ連盟です。
 日本聴力障害新聞は、全日本ろうあ連盟の機関紙として、全日本ろうあ連盟の運動方針に沿って発行されています。
 日本聴力障害新聞の「綱領」は、次のように定めています。
 「日本聴力障害新聞は、真実を守り、すべてのろうあ者に親しまれ、愛されるよう努力する。日本聴力障害新聞は、すべてのろうあ者の社会的地位の向上に貢献し、ろうあ者への理解をひろめ、ろうあ者の真の幸福を追求するよう努力する」
 機関紙の編集の方針としては、
(1)連盟組織の機関決定方針に従い、運動の目標、方向を示す。
(2)運動を組織する「紙」の武器として、真実を伝え、運動の「きっかけ」をつくり、運動の「起爆剤」となる。
(3)運動の成果を伝え、運動との原因・結果の関係を明らかにし、運動のさらなる発展に結びつける。
(4)構成員相互の団結を強める。
(5)国民との連帯を深める。
 などが、挙げられます。
 日本聴力障害新聞は、その創刊当初から、ろう者の活動や社会参加を拒むものに立ち向かい、世論を喚起し、社会的不公平を是正する役割を担ってきました。
 具体的な例をあげれば、風疹児童を対象に設置された沖縄県立北城ろう学校の硬式野球部を、学校教育法の規定「ろう学校」という理由だけで加盟拒否した日本高校野球連盟の問題、ろう者の教員志願者を「門前払い」にした北海道教育委員会の教員採用規定、ろう者を海外旅行から事実上排除している大手旅行会社の「誓約書」問題など、不公平な事実を把握し、報道することによって世論に問いかけ、世論の包囲網の中で不条理を改めさせてきました。
 こうした日本聴力障害新聞の報道活動によって、連盟・ろう者・関係者の運動と組織も発展し、広く国民大衆との結びつきを強め、連帯を深めています。

3 国際的な障害者運動の報道

 日本聴力障害新聞は、国連や関係機関の動き、世界ろう連盟の動きを中心として、海外のろう者の様子など、最新の海外情報をいち早く報道しています。
 実は現在、日本聴力障害新聞の編集長が、世界ろう連盟(WFD)の理事をつとめ、国連専門家パネル等の国際的な重要な役職をも担っていることから、国際的な最新の情報をいち早くキャッチし、新聞にて広報することが可能となっています。
 このほか、海外から送付されてくるろう者団体の機関紙や、インターネットによる海外情報など裏付け取材のうえ報道、障害者運動の国際連帯にも一役買っています。

(たかだえいいち 全日本ろうあ連盟機関紙「日本聴力障害新聞」編集長)