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ケアについての一考察

登録ヘルパー制度の確立と費用負担を考える

渡辺正直

障害の状況

 私の障害は「進行性筋ジストロフィー症」です。全身の筋肉が徐々に萎縮して筋力が低下して、最終的には寝たきりの状態となって、多くの場合、呼吸不全や心不全を起こして死に至る、原因も治療方法も確立していない難病です。
 私の場合、発病は6歳頃でしたが、たまたま病気の進行が遅く、20歳頃までは介助はほとんど要らない状態でした。生活全般にわたって介助が必要となってきたのは、障害者運動の世界に飛び込んで行った20代の中頃です。1995年には気管切開をして、夜間だけ人工呼吸器を使用する生活をするようになって、現在に至っています。しゃべることと電動車いす、パソコンの操作以外は、すべてに介助が必要です。

現在の介助体制

 前置きが長くなりましたが、ここで、現在の介助体制について触れたいと思います。介助者は現在8人、全員静岡市が実施している全身性障害者登録ヘルパー制度(以下、登録ヘルパー)に登録をしている私の推薦したメンバーです。
 ローテーションは朝8時~夜9時までの13時間、夜9時~朝8時(宿泊)、夕方5時~夜9時までの4時間、の三つの時間帯を8人が交代で行い、入浴は週2回、訪問看護婦さんと登録ヘルパーとで行っています。そのほか、社協ヘルパーが週2回、夕食の仕度に入っています。
 基本はあくまでも登録ヘルパーが介助を担っています。しかし、静岡市では登録ヘルパーの利用できる時間数は、月当たり210時間です。そのため時間給を下げたりなどの工夫をしながら24時間の体制を組んでいます。その費用は、ヘルパー制度の自己負担額約20万円と自己負担金(生活保護受給時の他人介護加算大臣承認分)、合わせて毎月40万円程になります。
 制度発足時には、行政側は登録ヘルパー制度はこれまで行われてきたホームヘルプ事業を補完をするモノとして考えていると言っていました。今年の6月で制度ができて7年、利用者も年々増えて20数人を超え、登録されているヘルパーの人数も250人を数えています。また、全国的にも障害者自身が介助者を選び、自分の生活を主体的に築くことのできる制度として急速に登録ヘルパー制度が拡がっており、自治体によっては、24時間の介助保障が実現しているところもあります。

社会参加と費用負担

 介護保障の問題では、これまで介助派遣のあり方や24時間介助保障に見られる時間数の確保が大きな課題でしたが、その費用負担の問題については、あまり語られてきませんでした。今、私のように、月200時間以上のヘルパー利用者で、ホームヘルプの自己負担が発生している障害者は、全国に数人しかいないと思います。
 近年、障害者自身が運営する自立生活センターの多くが「市町村障害者生活支援事業」の委託を受けたりまた、介護保険事業分野への進出などによって、今後、長時間介助の必要な重度障害者もその職員として給料を得る仕事についていくことが考えられます。
 ホームヘルプの自己負担金の仕組みは、週18時間の上限があったころから変更されていません。この仕組みは単身障害者などの長時間利用を想定していません。今の基準では、たとえば年収360万円の場合、自己負担額は1時間あたり950円、静岡市では月210時間ですので、月当たり約20万円年間240万円になります。なんと収入の65%近くの負担となります。それ以外の時間数介助者を確保するための負担を考えると、年収をオーバーしてしまうのは明らかです。このことは、障害者の働く意欲を阻害し、結果的に重度障害者の社会参加を進めるうえで、今後の大きな課題の一つとなると思います。 
 2003年からの支援費支給方式の導入を目前にした今こそ、自立生活を実現するのにもっとも最適な方法である登録ヘルパー制度を、全国共通の障害者のための制度として確立させるとともに、今述べたように、その費用負担のあり方について改善に向けた議論が必要だと思います。

(わたなべまさなお 静岡市市議会議員、静岡障害者自立生活センター運営委員)