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体験
第三の人生の始まり
―人工内耳装用者(66歳男性)の手記―

 私は37年前、サラリーマン時代の29歳の時、慢性中耳炎の根治手術を受けた後、突発性に全ろうになりました。1年7か月に及ぶ入院治療をしましたが聴力は戻らず、以来37年間、耳鳴り以外の音とは無縁の生活でした。従って補聴器の使用経験はありません。虎の門病院での人工内耳の手術は、平成12年9月27日、音入れ*は10月18日でした。
 音入れ後、2か月経った現在は、慣れた人との会話なら大体分かります。最近、同窓会があったとき、筆談が要らなくなり、これは奇跡だと皆に言われました。
 テレビの場合は、TVコードを使用するとよりよくわかりますが、スピードや話し方の違いによって難易があります。ニュースや司会のアナウンサーの喋る声は良くわかるようになりました。
 音入れから3週目に、先生に電話のテストをしていただき自信がついたので、時々掛けますが、簡単な言葉や予想できる内容の場合はわかります。
 仕事で、お客さんと品物の受け渡しが音声だけで済むようになり、有り難いです。
 バスのガイドは大体わかりますが、電車のような大きな空間でのアナウンスは、人の多いときはわかりにくいです。同様に、講演のマイクの話ははっきりしません。
 孫の童謡のCDはよくわかったので、昔の映画音楽のCDを買ってきました。はっきりした旋律の音楽はわかりますが、オーケストラだけの演奏は少し難しいです。しかし、何回も聞いているうちにわかるものもあります。昔聞いた音そのものではないですが、音楽も楽しめることがわかったので、これからも大いに挑戦したいと思います。
 ラジオを買ってきた当日は、雑音ばかりでさっぱりわからなかったのですが、翌日、宮沢賢治の詩の朗読がわかり、40年ぶりのラジオに思わず感涙にむせんでしまいました。
 考えていたより早く、言葉や音が分かるようになり、たった2か月で、難聴の家内より私のほうが聞こえるようになってしまいました。そして毎日のように、いろいろな聞こえの発見をしては、私は聞こえるのだと実感し、第三の人生の始まりに感動しています。
* 初めて音声処理プログラムを作り、人工内耳に送信すること。