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ケアについての一考察

自分らしく生きていくための介助システムを望む

下山奈穂子

私の障害

 ウェルドニッヒ・ホフマン病-これが、生後約3歳で診断を受け、以来、ずっと付き合っている私の病気の名前です。進行性の脊椎性筋畏縮症のひとつであると言われており、この病気のため、私には、全身の筋力がほとんどありません。体幹にわたって重度の障害があります。
 具体的に言いますと、ふだんは電動車いすに乗って生活しています。自分一人でできることはとても少なく、着替えやトイレ、ベッドや車いすへの乗り降りなど、日常生活に必要なほとんどの動作に介助を受けています 。
 先ほど「進行性の病気である」と書きましたが、そのスピードはとてもゆっくりで、私の場合、幼い頃とくらべても障害の程度にそれほどの差はありません。物心ついてから、ずっと今と同じように、何をするにも介助してもらわなければならない生活だったせいか、介助してもらうことにも、障害そのものに対しても、今の私にとっては、とりたてて特別なものではなくなっているような気がしています。

私の生活

 2年半ほど前の春、私は、すでに自立生活を始めていた友人の言葉をきっかけに、25年という長い期間を過ごした施設を離れました。そして、民間のアパートを借りて一人暮らしを始めました。 地域の中で一社会人として 「自分の生活は自分で決める」といった、だれもが当たり前に手に入れられる生活を私もしたいと強く思ったのです。
 私は、今も変わらずにそのアパートで一人暮らしを続けていますが、毎日ほぼ24時間、だれかの手助けが必要で、体力的にもとても弱い私が、今の生活ができるのは、医療や介助などさまざまな福祉サービスがあるからです。
 今回は、その生活をしていくうえで、私自身が受けている公的な介助サービスを中心にお話しします。

介助サービスの内容

 毎日の生活の基本となる、起床・就寝やトイレなどの身体介助と、炊事・洗濯などの家事援助については、市のホームヘルプサービスを利用しています。土日・祝祭日に関係なく、毎日、1日に4、5回、決まった時間にほぼ決まった内容の介助を受けています。私が住む市では、特に利用時間に上限を設けてはいませんが、派遣される事業所の都合により、実際には時間帯も時間数も制限され、急な対応には限界があります。そのため、出先から帰ってくるのもヘルパーが来る時間にこちらが合わせてしまうことが多いです。
 外出時には、同じく、市のガイドヘルプサービスがあります。主に買い物や社会参加活動の目的で利用しています。こちらは、1日の利用時間に制限があることと、指名はできても全身性のガイドヘルパーとして登録されている人数がまだまだ少ないことがとても残念です。その他、定期的に自立生活センターから、介助者を派遣してもらっています。介助料は生活保護の他人介護料から支払いをしています。
 しかし、これらのサービスだけでは、どうしても補えない空白の部分がたくさんあって、その場合は、ボランティアに頼らざるをえません。生活の基盤であり、それがなくては本当に困ってしまう最低限の「介助」をボランティアに頼らなければならないのは、とても不安なものです。

私の望むサービス

 「自分はどんな生活をしたいのか」
 「どんな生き方をしたいと思っているのか」
 もっとも大切なことは、それを決めるのは、介助を受ける当事者自身であるということです。自分自身の責任において、自分らしく生きていくには、実際にその生活を介助していく介助者を自分で選ぶことができるシステムが必要ではないでしょうか。そうすることによって、自分たちの生活の幅が広がり、さらなる社会参加と自立につながっていくと思うのです。残念ながら、私の住んでいるところでは、まだ、それに該当するサービスがありませんが、都市部や当事者の力が大きな市町村では、すでにホームヘルパーの自薦登録方式や、全身性介護人派遣制度が行われています。
 今後は、そのような、当事者自身が自分の介助をコーディネートしていけるサービスを確立していけるように、私自身ももっと勉強し、力をつけていきたいと思っています。

(しもやまなおこ NPOピアネット)