音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

平成14年度
障害保健福祉部関係予算案について

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

1.障害者プランの着実な推進

 平成14年度の障害保健福祉関係予算については、平成8年度からスタートした「障害者プラン」を中心に、障害者の総合的な保健福祉サービスを推進するために必要な経費として6,601億円、対前年度伸び率4.1%の予算額を確保しているところです。

 平成7年12月に策定された「障害者プラン」については、平成8年度から現在に至るまで、設定された数値目標の達成に向けて必要な予算の確保に努めてきたところですが、平成14年度における障害者プラン関係予算については、3,050億円、対前年度伸び率5.9%の予算額となっています。障害者プランについては、平成14年度に最終年を迎えますが、確保した予算の適切な執行や自治体における各事業の実施状況などの的確な把握に努め、障害者プランの策定趣旨を達成できるよう、今後とも引き続き積極的な推進を図っていくこととしています。

2.自閉症等対策の実施

 自閉症については、従来、知的障害者福祉施策の中で、さまざまなサービスが提供されてきたところですが、自閉症やその周辺領域にある高機能自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害も含めて、その特性を踏まえたきめ細かい対応を図っていくことを目的として、都道府県・指定都市に「自閉症・発達障害支援センター(仮称)」を設置し、
●本人や家族あるいは関係機関等からの相談への対応及び助言指導並びに情報提供
●適切な療育及び就労支援
●関係施設職員等への情報提供及び研修
等を行うことによって、在宅の自閉症児(者)等の福祉の向上を図ることとしています。
 さらに、この取り組みを効果的に行うため、国立秩父学園では、自閉症・発達障害支援センター(仮称)の職員を対象とした実務研修を行い、これらの発達障害に対する深い専門的知識や技術を備えた職員を育成するとともに、自閉症児等への療育支援の取り組みを強化することとしています。

3.障害者の情報バリアフリーの推進

 情報化社会において、障害者が住み慣れた地域の中で自立して、積極的に社会参加していくためには、情報通信技術(IT)の活用を推進することが重要です。また、平成13年1月に施行された「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」においても、「身体的な条件に基づく情報通信技術の利用の機会又は活用のための能力における格差(いわゆる「デジタル・ディバイド」)の是正が積極的に図られなければならない」とされています。こうした社会的動向に対応して、平成13年度から、障害があるが故に必要となるパソコン周辺機器やソフト等の購入費用の一部を助成する「障害者情報バリアフリー化支援事業」を開始するなどの取り組みを進めてきたところですが、平成14年度予算においても、次の施策を実施することにより、障害者の情報バリアフリーの一層の推進を図っていくこととしています。

1.パソコンボランティア養成・派遣事業

 障害者がパソコンを使用するためには、障害特性に応じた周辺機器やソフト等を追加することが必要な場合があります。そういった場合に、障害者が身近な地域でパソコン本体や周辺機器等の使用方法等について相談することができるよう、これらのサポートを行うパソコンボランティアの養成を行うとともに、個々の障害者の要望に応じてこれを派遣する事業を実施するものです。

2.パソコンリサイクル事業

 障害者の情報バリアフリーを推進するため、企業等から譲り受けたパソコン機器をリサイクルして、必要とする障害者に無償で斡旋(あっせん)する事業を実施するものです。

4.精神障害者の社会復帰対策の充実

 平成11年に改正された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づき、平成14年度から、在宅福祉事業に居宅介護等事業(ホームヘルプ)及び短期入所事業(ショートステイ)が追加されることとなっていますが、これらをはじめとして、法改正の趣旨を踏まえて精神障害者の社会復帰対策の一層の充実を図ることとしています。

1.精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)の本格実施

 本事業は、平成11年度から試行的事業として実施するとともに、講習会の実施により、ホームヘルパーの養成などにも努めてきたところですが、平成14年度からの法定事業化に伴い、これを本格実施し、精神障害者が住み慣れた家庭や地域社会において日常生活の維持・向上ができるよう支援を行っていくこととしています。

2.精神障害者社会復帰サービスニーズ等調査の実施

 精神保健福祉施策の充実を図っていくうえでは、精神障害者の立場からの社会復帰に向けた具体的なニーズの把握が必要であるという観点から、平成14年度において、本調査を実施し、精神障害者の社会復帰に向けたサービスニーズの分析を行うこととしています。

3.精神障害者社会復帰施設の充実

 精神障害者社会復帰施設については、従来から行ってきた運営費の改善及び職員の計画的増員を引き続き行うとともに、次の施策を実施することにより、一層の充実を図っていくこととしています。
●精神障害者社会復帰施設は、施設の設置にあたって地元住民の理解が得られにくいなどにより設置が進まない状況が見受けられることを踏まえ、その設置にあわせて「住民開放型地域交流スペース」を付置する場合に、その整備に要する経費に対して補助を行うこととしています。これにより、地域ぐるみでの精神障害者の自立と社会参加への理解と支援体制の充実を図ることとしています。
●精神障害者短期入所事業(ショートステイ)については、従来は精神障害者生活訓練施設においてのみ実施してきたところですが、平成14年度から精神障害者入所授産施設においてもこれを実施できることとしています。

5.精神医療対策の強化・充実

 精神障害者が緊急時において適切な医療等を受けることができることを目的として、従来から「精神科救急医療システム整備事業」により、その体制整備を図ってきたところですが、平成14年度から、この事業に24時間の医療相談事業を追加し、本人や家族からの医療相談に適切に対応していけるよう、体制整備の充実を図ることとしています。
 また、現在のわが国においては、精神科急性期医療に関する専門家が少ないという現状にあり、欧米先進国においてはすでに実施されている司法精神医療を含めた最先端の精神科医療を修得した専門家の養成が急務であることから、国立医療機関等の精神科医、精神保健福祉士等を海外の司法精神医療施設に派遣し、急性期医療等の研修を行い、専門医等を養成することによって、わが国における精神医療の向上を図ることとしています。

6.保健福祉施策と雇用就業施策の一体的推進

 厚生労働省では、従来から保健福祉行政と雇用行政の連携を進めてきたところであり、その一環として、障害者に対する就労面と生活面の一体的な支援を展開するための体制整備を検討するため、「障害者就業・生活支援の拠点づくり試行的事業」を平成11年度から実施してきたところですが、平成14年度においては、これまでの事業実施の成果を踏まえて、試行的事業から一般対策への移行を図ることとし、「障害者就業・生活支援センター(仮称)事業」として本格実施し、身近な地域で関係機関のネットワークを形成し、障害者の就労支援と生活支援を一体的に推進することとしています。

7.支援費制度の施行に向けて

 平成15年4月から「支援費制度」が開始されることとなっていますが、本制度を円滑に実施するためには、都道府県、市町村における準備は欠かせません。このことから、都道府県、指定都市、中核市及び市町村における制度施行の事前準備に必要な経費を計上することによって、支援費制度の円滑な実施に資することとしています。
 また、支援費制度に関連するものとして、障害者の自己決定権の尊重やノーマライゼーションの確立等を実現するために、知的障害者等について、成年後見制度の利用促進を図ることが重要であることから、現在、高齢者施策において平成13年度から実施されている「介護予防・生活支援事業」の中の「成年後見制度利用支援事業」の対象に「知的障害者」を追加し、広報啓発や成年後見制度の利用に係る経費の補助を行うこととしています。

8.その他、新規施策等主要事項

1.小規模通所授産施設の活動支援

 小規模通所授産施設については、平成13年度から利用者10人以上20人未満の小規模通所授産施設に対し補助を行っているものですが、平成14年度予算案においては、対前年度比で倍増の身体、知的、精神の三障害合わせて240か所分の予算を確保したところです。

2.短期入所(ショートステイ)事業における遷延性意識障害者等単価の設定

 遷延性意識障害者(児)については、常時の医学的管理を必要としますが、これらの方が短期入所事業を活用することができるよう、医療機関において短期入所事業を実施し、遷延性意識障害者(児)を受け入れる場合の単価を新たに設定することとしています。

3.「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念事業の支援

 平成14年は「アジア太平洋障害者の十年」の最終年にあたりますが、これを記念する事業として、障害者の方々や関係団体が中心となり、「第6回DPI世界会議札幌大会」、「第12回RIアジア太平洋地域会議」、「「アジア太平洋障害者の十年」推進キャンペーン大阪会議」の三つの国際会議が日本において開催されることとなっています。これらの会議について、政府としては、平成13年6月12日の障害者施策推進本部会議において、必要な協力を行う申し合わせを行ったところであり、厚生労働省としては、これらの会議を支援するための経費を計上しているところです。