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体験
「わかるんです」で、分かるんです

天野亨

 私の名前は天野亨、仕事は歌い手、現在アイメイトのアンディと共に、全国各地でバリアフリーコンサートをさせていただいている。
 正直に言って、私が「わかるんです」を手にした時、「あまり役立たないのではないだろうか」と感じた。日常生活にはそれほど困っていないと思っていたからだ。しかし使い始めて2か月、すでに私の生活になくてはならないものになっている。
 まず、食品。特に冷凍の物や缶詰類などの区別ができる。冷凍のうどんだと思って解凍してみたら煮物だったとか、トマトの水煮だと思って熱いフライパンに入れたらホワイトソースだったということは、一人暮らしの視覚障害者なら、だれでも体験したことがあるはず。酒のつまみに「かに缶」を空けたつもりが「さば」だったりしたら。しかしもう愕然(がくぜん)とすることはなくなった。もちろん点字のテープを貼り付けておくという方法もある。しかし、「わかるんです」は、タグを機械の上に乗せ、ボタンを押して録音するだけ。とてもお手軽だ。
 「わかるんです」のタグは冷蔵庫にも入っている。ハムやヨーグルトは触ればわかるが、触って分からないのが賞味期限、すっぱいイカの塩辛、固まってしまったドレッシング、酸化したバターなど、「わかるんです」を手に入れる前、私の冷蔵庫には危険がいっぱい潜んでいた。
 そして洋服、男性の洋服は形の変化があまりない。触っても何色のYシャツなのか、どのスーツ・ネクタイと組み合わせればいいのか皆目分からない。オシャレな?私としては、とても困るのである。女性の場合、話はもっと切実だろう。たとえば「ネクタイの1番」とか「靴下の3番」というように番号をつけておき、その組み合わせを録音しておけばいいのである。「スーツの6番。ネクタイは1番、靴下は2、5、7番が合う」などのように。これで自分でコーディネートができるのだ。
 このタグは洗濯はもちろんドライクリーニングも可という優れもの、実はマクドナルドの制服を種別するのに使われているとか。とてもありがたい。しかし、問題がないわけではない。その最たるものが値段である。メーカー側でもコストダウンに努めてくださっているものの、個人で購入するにはちょっと高額なのは確か。日常生活用具として認定してくださることを接に念願してやまない。
 以上お話してきたように「わかるんです」は、私たちの生活をより豊かにしてくれる。中途失明者が増えている現在、「わかるんです」は画期的な商品であると言えるだろう。

(あまのとおる アウローラ音楽文化研究所)