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フォーラム2002

障害者雇用機会創出事業の概要
―3か月のトライアル雇用で企業への就職のお手伝い―

日本障害者雇用促進協会職業リハビリテーション部指導課

■はじめに

 厚生労働省では、平成11年1月から障害者の緊急雇用対策として、職場実習から試用的な雇用(トライアル雇用)を通じて本格的な障害者雇用に取り組むきっかけとすることを目的とした「障害者緊急雇用安定プロジェクト(以下、「プロジェクト」という)」を日本経営者団体連盟(日経連)に委託して実施しました。
 プロジェクトは、1か月間の職場実習(対象障害者には手当が支給される)と3か月間のトライアル雇用(実施事業主には奨励金が支給される)から成り、プロジェクトが終了した平成13年3月までの間に、プロジェクトを利用して全国で4,176人の障害者が常用雇用されました。
 障害者雇用機会創出事業は、プロジェクトのトライアル雇用による障害者雇用のきっかけ作りを引き継ぎ、平成13年4月から厚生労働省が日本障害者雇用促進協会に委託して実施しています。
 本稿では、障害者雇用機会創出事業の概要と平成13年度の事業実施結果についてご紹介いたします。

■障害者雇用機会創出事業の概要

 障害者雇用機会創出事業は、障害者の雇用経験が少ない等により、今一歩雇用に踏み切れないでいる事業主に、3か月間の試用的な雇用(トライアル雇用)を実施することによって、障害者の雇用機会の創出と拡大を図り、本格的な障害者雇用のきっかけを作ることを目的としています。
 トライアル雇用は、障害者と事業主が実際に雇用契約を結んで行うので、障害者は賃金を得ながら自分に合った仕事、職場を確認することができ、また、事業主は障害者の実際の仕事ぶりを確認することができ、双方でその後の継続雇用を検討することができます。

【トライアル雇用の対象者】

 トライアル雇用を利用できる対象者は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」第2条第1号に定める障害者で、公共職業安定所に求職登録をしている者になります。

【トライアル雇用の実施対象となる事業主】

 トライアル雇用を実施する事業主は、次の条件をいずれも満たしていることが必要です。
1.労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険に加入し、又はこれらと同様の社員共済制度を保有していること。
2.労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法等労働基準関係法令を遵守していること。

【トライアル雇用実施期間】

 トライアル雇用の期間は原則として3か月間です。ただし、事業主がトライアル雇用期間を途中で終了させて常用雇用に移行する場合は、この限りではありません。
 3か月の期間を経過し、常用雇用に至らなかった場合は、契約上期間満了による終了となります。ただし、契約期間中に事業主の都合で中止した場合は解雇の扱いとなります。

【トライアル雇用の実施申込み手続き】

 トライアル雇用を希望する事業主は、次の手続きを行う必要があります。
1.「トライアル雇用計画書」を作成し、地域障害者職業センターに提出します(FAXで可)。
2.1と併行して、トライアル雇用に係る求人申し込みを当該事業所を管轄する公共職業安定所で行います。

【トライアル雇用の実施】

 公共職業安定所は、トライアル雇用に係る求人事業主に実施対象者を紹介します。
 事業主は、トライアル雇用を開始したことを、トライアル雇用開始通知書により地域障害者職業センターに通知します(FAXで可)。

【トライアル雇用奨励金の支給】

 トライアル雇用を実施した事業主に対しては、トライアル雇用の終了後、トライアル雇用奨励金が支給されます。
 奨励金の額は、対象者の出勤した日数に応じて算出します。1か月の出勤日数が16日以上の場合、月額5万9,000円(8~15日の場合4万4,300円、1~7日の場合1万4,700円)が支給されます。

【職業リハビリテーションサービスの提供】

 公共職業安定所が行う求人開拓、職業紹介と密接に連携しながら、各都道府県にある当協会の地域障害者職業センターが、必要に応じてトライアル雇用前の職場実習の実施、受け入れ事業主や対象障害者に対する各種の支援サービスを提供します。

【各種助成金の活用】

 トライアル雇用を終了して常用雇用へ移行した場合、要件を満たせば、特定求職者雇用開発助成金や身体障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用することができます。

■平成13年度実施結果

 平成13年度は、全国で2,181人の障害者がこの事業を利用しました。
 障害別では、知的障害者が最も多く1,141人で52%を占めています。次いで身体障害者が874人で40%となり、精神障害者が153人で7%となっています(グラフ1)。
 トライアル雇用を実施した事業所の産業別内訳をグラフ2に示します。製造業が最も多く41%を占めています。次いでサービス業が27%、卸売・小売業が21%となっています。
 トライアル雇用後の常用雇用への移行状況等をグラフ3に示します。トライアル雇用対象者のうち約8割が常用雇用に移行しています。

〈グラフ1〉トライアル雇用実施対象者の障害別内訳
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〈グラフ2〉トライアル雇用実施事業所の産業別内訳
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〈グラフ3〉トライアル雇用後の状況
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■障害者雇用機会創出事業の活用例

 具体的なトライアル雇用の活用例を紹介します。

1.障害者雇用のきっかけ作りとしての活用

 トライアル雇用を利用した事業所には、初めて障害者を受け入れる事業所も少なくありません。また、身体障害者の雇用経験はあるが、知的障害者や精神障害者を初めて雇用する事業所もありました。こうした事業所では、障害に対する配慮、仕事の教え方、周囲の従業員の障害への理解などに不安をもつため、すぐ雇用してよいものかどうか慎重になりがちですが、トライアル雇用は3か月の期限付きの雇用であり、手続きが簡便であることから社内でも負担感を持つことなく、事業の活用に踏み切り、円滑な受け入れが進んだとの声が事業主から聞かれました。

2.トライアル雇用と地域障害者職業センターが行う援助を組み合わせての活用

 トライアル雇用を実施する前に事業所は、従業員の障害への理解、職務内容、指導方法、危険等への配慮などを検討・調整して、障害者を受け入れる準備を整える必要があります。このような事業所の取り組みに対して、地域障害者職業センターのカウンセラーが職場を訪問して、さまざまな課題の解決に向けた援助を提供しています。
 精神障害者のトライアル雇用実施の際に、労働時間の設定や通院時の欠勤等の配慮を実施前に事業主と調整して、対象者の負担が少ない形でトライアル雇用を進めることができた事例がありました。

■さいごに

 平成14年度は、より多くの障害者の雇用の拡大をめざし、全国で2,200人の障害者に対して障害者雇用機会創出事業の実施を予定しています。利用については、管轄の公共職業安定所または地域障害者職業センターまでお問い合わせください。