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ハイテクばんざい

パソコンの特殊な入力装置いろいろ

伊藤英一

1.はじめに

 パソコンが重度身体障害者にとって役立つ機器であることはだれしも異論の無いことでしょう。しかし、どのような手段や方法で利用できるようになるのかという情報を知らないため、本来ならばパソコンが利用できるにもかかわらず、あきらめてしまうケースが多いのも事実です。
 また、政府は「すべての国民がITのメリットを享受できる社会」をめざし、e‐Japan重点計画1)を策定していますが、障害者がパソコンなどのIT機器を使いこなすためのリテラシー教育は十分とは言えません。さらに、IT機器の技術革新は予想以上に速いため、利用者に適した障害者用装置があったとしても最新のパソコンにつなげることができなかったり、地域のボランティアなどが開催する障害者向けパソコン講習会を受講していたとしても、最新の基本ソフト(OS)に戸惑ったりすることも多いのではないでしょうか。
 今回紹介する内容には、機器や装置固有の情報も含みますが、基本的には利用者の身体機能や用途に適している環境をいかにして実現するのか、その手がかりになれば幸いです。

2.障害者向けパソコン入力装置

 本年4月より、これまで日常生活用具給付対象であった「ワープロ」から「パソコン」2)に変更となりました。しかし、パソコンのOSに付属する障害者支援ツールの充実には感心しますが、通常のパソコンやソフトウェアだけでは解決できないことも多いのが実情です。1999年本欄の拙稿3)は、主にOSにおける支援ツールの紹介をしました。今回はキーボードやマウスに置きかえて利用する特殊入力装置の一部を紹介します。

3.「キーボードの操作ができないとパソコン操作は無理ですか?」

 いえ、キーボードの操作ができなくても、ポインティング操作や操作スイッチなどの利用でキーボードと同等の操作も不可能ではありません。マウスの操作ができるのであれば、ディスプレイ画面にキーボードと同じような文字盤(オンスクリーンキーボード:図1参照)を表示し、入力したい文字や記号をマウスでクリックすれば、キーボードを押すことと同じ操作となるソフトもあります。もちろん、Shiftキーなどのような同時操作3,4)が必要なキーもクリックのみで利用可能です。

図1 オンスクリーンキーボード (例:スクリーンキーボード、WindowsXP)

図 オンスクリーンキーボード

4.「キーボードの両端に指やスティックが届きますか?」

 もし、そのキーボードが自分にとって大きすぎると感じたら、無理せず届く範囲を調べてみましょう。もし、文字キーの範囲が操作可能なのであれば、市販品の小型キーボードが使えるかもしれません。ただし、機能キー(Fnキー)などの同時操作が必要なものもありますので、自分に適したものを検討しましょう。キー配列が覚えにくい場合は、50音配列の小型キーボードもあります。

5.「マウス操作が難しい場合でもWindowsは使えますか?」

 マウス操作は本体を掌で握り、机の上を前後左右に均等に移動させる必要があります。しかし、このような動作は健常者であろうとすぐに習得できるものではありません。そのために、トラックボールやタブレット、トラックポイント、ジョイスティックなど一般向けマウス代替装置もさまざまなものが商品化されています。また、それらをうまく工夫することにより障害のある人にも利用できるものとなるでしょう。
(ア)腕を広い範囲で動かせなくても大丈夫です。特に、肩や肘、腕などの筋力が弱いが、指先の機能が良いという場合には、軽い操作力のトラックボールがよいかもしれません。
(イ)掌で握り親指で操作するジョイスティック状のマウスがあります。このスティック部分を延長することによって、顎や口で操作することも可能になります。
(ウ)上肢にマヒがあっても、首を自由に動かすことができればマウスの操作が可能となるヘッドトラッキングシステムがあります。たとえば、首を上下左右に振ることでマウスポインタを上下左右に移動させ、呼気スイッチなどでクリックを実行します。

6.「目的以外のキーを頻繁に押してしまいませんか?」

 肩や腕、手などに震えがある場合、目的のキーとその周囲のキーを押してしまうことがあります。そのような場合、修正しようと試みても同様に目的としないキーまでも操作してしまうこととなり、なかなか正確に入力することができません。そのような場合、透明アクリル樹脂に指やスティックなどが入る程度の穴を開けたキーガードを利用します。キーボードの形状や大きさはパソコンメーカーやその機種により異なるため、購入時には注意が必要です。

7.「操作スイッチでパソコンを利用することは可能ですか?」

 操作スイッチをタイミングよく押すことが可能であれば、走査型選択方式により前述のオンスクリーンキーボードが利用可能になります。これはスキャン入力とも呼ばれるもので、ある時間間隔によりフォーカスが順次移動し、目的のキーにフォーカスが当たっているときに入力すると、それが選択されるというものです。
 その他にも、多くの障害者向けパソコン入力装置があります。インターネットからも検索5)できますので、そちらをご参照ください。そこには各種装置の情報のほかに、各種問い合わせ先や相談することができる機関、パソコンボランティア、利用者の声なども掲載されています。

(いとうえいいち 長野大学社会福祉学部)


【参考文献】
1)e‐Japan重点計画
  http://www.kantei.go.jp/jp/it/index.html
2)長野県社会部障害福祉課
  http://www.pref.nagano.jp/syakai/fukusi/osirase/pasokonn.htm
3)伊藤:肢体不自由者とパソコン~パソコン入力のための支援~、ノーマライゼーション、p.48-52、Vol.19、 No.12、1999
4)伊藤・梅垣・薗部編:障害者と家族のためのインターネット入門、全障研出版部、2001
5)こころリソースブック編集会編:こころリソースブック2002、こころリソースブック出版会、2002
  http://www.kokoroweb.org/