編集後記
子どもの部活のチームメイトがクラスで悪質ないたずらを受けました。最初は物が隠されたり、移動させられたりというのがだんだんエスカレートし、ついには、給食の残りがかばんの中に入れられ、水も入れられて教科書がずぶぬれになってしまうという、書くほうも気が滅入るような事件でした。子どもからこの話を聞いて、ちょうど1週間くらいたった時に、林間学校の保護者会があり学校に集まりました。その最後にチームメイトのお母さんがみんなに向かってこの事を話しました。まさか自分の子がこういう目に会うとは思っていなかった、何かあるのならはっきりといってほしい、それぞれの家庭でもこの話をしてほしいというような内容でした。その勇気にまず拍手を送りましたが、だれもがどうしてあの子が・・ということを聞くと、この事はいつわが身に降りかかってくるかも分からないこと、だから自分のこととして考えてほしいということを言いたかったのだと思います。痛みを共有すると言いますが、難しいですね。大切なことは、自分の身に置き換えて想像してみる力、この力を子どもと考えてみたいと思います。
(S)
先日、4月にオープンしたろう重複者の生活・就労の場である「たましろの郷」を見学する機会がありました。施設内は明るく温かい色調で統一され、各部屋の前にはイラストが目につきます。彼らのコミュニケーション方法は、手話をはじめボディランゲージあり、独特な表現あり、私が使う手話がなかなか伝わらなくて、未熟な手話のせいかと思ったのですが、仲間によっては、使用する言葉の数が少ないので、手話のうまいへたよりも、相手にどう伝えるかが大切で、言葉と同じくらいにスキンシップも大切だということを教えていただきました。イラストが多く使われている理由がわかります。
去る5月25日に行われた「たましろの郷」の落成祝賀会場。仲間たちがステージにあがり、関係者・来場者の人たちにお礼のあいさつがありました。仲間の一人は、ステージ上をピョンピョン飛び跳ねています。彼のうれしい気持ちが伝わってきました。ろう重複の人たちにとって、居心地のいい場所があって、働く場があり、地域の人たちと交流ができる新しいまちづくりへの第一歩がはじまりました。
(K)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年6月号(第22巻 通巻251号)