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カウントダウン AP10年

国連「アジア太平洋障害者の十年」 最終年キャンペーン大阪会議
隣国の人々と次の十年へつなぐ会議にご参加を

丸山一郎

 本誌では大阪フォーラムでのRNNの「アジア太平洋障害者の十年推進キャンペーン」をご紹介してきましたが、いよいよ参加申し込みが開始されました。アジア太平洋地域各国からの障害者団体の人々を中心とした参加者との交流と、この十年続けてきた最終キャンペーンの成功のために皆様の参加を期待いたします。また、最終のキャンペーンにより、これまでの十年の進展を評価して、さらに次の十年に向けたエネルギーを繋ぐことができますように、さまざまなご協力もお願いいたします。
 さて、国連・アジア太平洋社会経済委員会(ESCAP)は、去る5月22日の総会で日本政府の働きかけによって、本年最終年を迎えた「アジア太平洋障害者の十年」を2003年から2012年まで延長することを決議しました。1981年から「国際障害者年」・「国連・障害者の十年」・「アジア太平洋障害の十年」と継続してきた国際協調活動が途切れずに、さらに続くことになったのです。
 この総会決議のタイトルは「アジア太平洋地域の障害のある人々が、社会の全てに参加するバリアフリーで人権を守る〈21世紀社会の促進〉」という高い理想を掲げています。
 決議の内容は次の11項目です(全日本ろうあ連盟の翻訳をお借りしました)。

1.ESCAP地域において2002年以降も、障害者に関する世界行動計画およびアジア太平洋障害者の十年行動課題の実施をさらに活発化させることを視野に入れ、アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)をさらに10年間延長することを宣言する。

2.障害者の平等な権利のさらなる促進と擁護を視野に入れ、障害者の権利条約の起草を行う特別検討会の活動、さらに条約に関連する他の活動に支援ならびに貢献するよう政府に強く促す。

3.アジア太平洋障害者の十年最終年ハイレベル政府間会合へ積極的に参加すること、さらに以下の作業に積極的に関わることを、全ての加盟国と準加盟国に強く促す:
 (a)行動課題の実施結果の評価。
 (b)とりわけ以下の分野の強化を目的とした、次期十年の行動枠組みの考案ならびに採択。
  (1)教育、訓練と就労、建設環境と情報・通信技術へのアクセス、社会保障と持続可能な生計などの重要分野
  (2)地方協力と共同活動

4. これらの目標の実現において、ハイレベル政府間会合はとりわけ以下の点に強い関心を示すべきことを強調する:
 (a)21世紀の包括的なバリアフリー社会に完全な形で寄与できるメンバーとなれるようなエンパワーメントを視野に入れた、農村地域の貧困で様々な障害を持つ人々、とりわけ女性障害者の、自助団体やその連盟の設立支援と強化。
 (b)全国的な政策や事業の開発における早期発見や家族に対する支援の導入を含めた、障害児の完全な発育に必要な教育へのアクセスの積極的な促進。
 (c)アジア太平洋地域における社会への統合と人権促進を重要視した、障害を持つ女児や女性、障害者を持つ高齢者、発達障害や精神障害を持つ人々に対する特別な擁護の提供。
 (d)アジア太平洋地域における情報格差の排除と情報・通信技術の活用を通した、障害者の社会参加を実現するための促進活動。

5.ハイレベル政府間会合と、会合のテーマに関連する会議や研究の実施を含めたその準備プロセスに参加し貢献するよう、国連団体と特別機関、さらに他の政府間組織や障害分野の非政府組織に要請する。

6.アフガニスタンに対する全国的な再建支援において、80万人いると予想されるアフガニスタン人障害者を、支援の対象集団として明示するよう、国連機構、国際的な資金提供団体、供与国政府、非政府組織に要請する。

7.アジア太平洋障害者の十年の成果をまとめ、長期的なフォローアップを保障する実質的な施策としてタイに設立されるアジア太平洋障害開発センターの重要性を認識し、経済的支援、技術的支援、及び物資による他の支援の提供を通じ、アジア太平洋障害開発センターの運営と活動を支援するよう、全ての政府、国連機構、政府間組織に奨励し、さらに障害者組織、非政府組織、民間部門にも、センターの運営と活動に適切な支援を提供するよう奨励する。

8.障害に関するデータの収集と普及、さらにデータ収集と障害統計を行う方法の必要に応じた開発を含め、障害に関する統計の開発と、全国的なデータ収集システムのための国の能力育成において、アジア太平洋統計研修所との協力。

9.国連機構で関心をよせる全ての特別機関と団体、さらに政府間組織、地方組織、資金提供機関に、アジア太平洋地域で実施中のプログラムや事業、とりわけ貧困軽減や他の主流の開発問題の分野に関するものにおいて、その活動計画に体系的な形で障害問題を取り入れること、そして本決議の全国的な実施に対する支援を行うことを視野に入れ、プログラムや事業の見直し調査を行うよう強く促す。

10.利用可能な資金的資源に応じて、以下を強化するよう事務局長に要請する:
 (a)来たる10年の全国的な行動プログラムを開発ならびに推進する、加盟国と準加盟国の国家能力。
 (b)アフリカ障害者の十年(2000-2009)の実施運動との最良の慣行に関する情報共有などを含めた、障害分野の他の地域イニシアチブとの共同活動。

11.さらに、本決議の実施の進捗状況について、委員会への隔年報告を十年の最後まで続けること、また、十年の運動の勢いを維持するための行動勧告を必要に応じて提出することを、事務局長に要請する。


 同決議はESCAPが「アジア太平洋障害者の十年」を決めたことと「アジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等に関する宣言」がなされたことに対して高い評価を示しています。そして実際の取り組みについては、「十年」開始以来、行動課題の12の政策分野において、国家調整と法律の分野で大きな成果があり、また、障害要因の予防、リハビリテーション・サービス、物理的環境へのアクセス、障害のある人々の自助団体については一部で成果が見られたとしています。
 しかしながら、特に課題として指摘しているのは、障害をもつ子どもや青年が教育を受けることが今もなお極めて低いこと、また行動課題の実施状況には各国に著しい格差があることです。世界で最も貧しい人々の5人に1人は障害者であり、障害により教育と就労へのアクセスが制約されるため、経済的社会的に隔離が起こること、また、貧困と障害は相互に原因であり結果であるので、貧しい障害者が貧困・障害という悪循環から抜け出せないことを世界銀行とアジア開発銀行が明らかにしていることも指摘しました。
 また、障害に関する信頼できるデータの重要性と、障害者人口に関するデータの収集と処理のため方法を発展させる必要性や、情報と通信技術が、情報、教育、就労機会へのアクセス改善、そして社会における完全参加の促進に新しい可能性を障害者にもたらすこと。さらには、障害者によるアクセスを改善する施策は、高齢者、幼い子ども、妊娠中の女性、幼児をもつ親などの利益ともなることの理解を推進することを強調しています。
 また、この地域での今もなお存在する武力紛争が障害者の権利にとりわけ深刻な被害を与えていること、特に長期で破壊的な紛争状態からアフガニスタンを再建するための国際的な運動に留意することも述べています。
 これまで、長々と決議を紹介したのは、こうした決議が成されるに至ったことを、この十年のキャンペーンが働きかけてきたことだからです。
 決議文のなかに、昨年のベトナムでのキャンペーンが次のように示されています。「2001年12月10~15日にハノイで開催されたアジア太平洋障害者の十年キャンペーン2001の参加者が採択した、障害者の地域社会への統合促進に関するハノイ宣言の中で、アジア太平洋障害者の十年を、国際障害者権利条約の起草と施行を促進する地域メカニズムとして、さらに10年延長することが政府に強く促されていることを心に留める。」
 最終年の大阪でのキャンペーンはこの十年のまとめでありますので、NGO(非政府組織)としての十年の評価と今後の課題、そして新しい協力推進態勢を作り上げる予定です。その成果を大阪フォーラムでの決議(大阪宣言の予定)として、大阪府と滋賀県の主催で10月25~28日に滋賀県大津市で開催される、〈アジア太平洋障害者の十年最終年ハイレベル政府間会合〉にも提出することになっています。
 皆様の積極的なご参加を重ねてお願いいたします。

(まるやまいちろう RNN(アジア太平洋障害者の十年推進NGO会議)事務局長)

これまでのキャンペーン会議開催一覧(本誌2001年2月号20頁~21頁より)

開催年度 開催地 テーマ 参加国 参加人数
1993年 沖縄
(日本)
「障害者の社会参加を進める沖縄会議」 16か国 309人(うち障害のある人200人)
1994年 マニラ
(フィリピン)
「地域協力と社会啓発」 10か国 300人(うち障害のある人160人、日本人98人)
1995年 ジャカルタ
(インドネシア)
「すべての人への支援の実現」 41か国 500人(うち障害のある人200人、日本人101人)
1996年 オークランド
(ニュージーランド)
「参加:平等へのステップ」 88か国 1400人(うち障害のある人400人、日本人166人)
1997年 ソウル
(韓国)
「アジア太平洋障害者の十年:後半5年の成功に向けて」 45か国 1000人(障害のある人260人、日本人324人)
1998年 香港
(中国)
「2つの世界―地域の課題の地域的解決、地球的課題の地域での解決」 36か国 1621人(うち障害のある人350人、日本人165人)
1999年 クアラルンプール
(マレーシア)
「工業社会への障害者の参加促進」 16か国 260人(うち障害のある人200人、日本人139人)
2000年 バンコク
(タイ)
「なくそう社会の障壁(バリア)」 30か国 505人(うち障害のある人300人、日本人162人)
2001年 ハノイ
(ベトナム)
「障害者の社会統合の促進」 37か国 1759人(うち障害のある人は約80%、日本人201人)
2002年 大阪
(日本)
「障害者の権利実現へのパートナーシップ」   2000人(予定)