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列島縦断ネットワーキング

大阪
「サポーテッド・ライフ会議inおおさか」の開催

上田かおり

さまざまな立場から発言しあう会議

 カリフォルニアで毎年開かれる会議にならって、当事者中心のシステムづくりを進めるために、支援する人とされる人が同じテーブルで話をする集会を開催しました。
 5月18、19日の2日間にわたり大阪国際交流センターで全国から延べ350人が参加。福祉職員と大学の先生とが難しい話ばかりするのではなく、知的障害の人が自分の意見を言い「分かるように話してほしい」と言える、ざっくばらんな会議をめざしています。

カリフォルニアからの波にのせて

 どんな障害があろうとその人に合った支援があれば、普通の職場やお店で時給をもらって働くことが実現している様子をドキュメンタリー映像で紹介。百聞は一見にしかず、非常にわかりやすいビデオは好評でした。

障害者の生活とサービスの転換

 メインゲストのシャリーン・ジョーンズさんは「権利を主張することの大切さ~パワーを分かちあおう」というテーマで基調講演。彼女の講演内容を簡単にご紹介します。

 カリフォルニアで、障害者の生活にかかわる施策やサービスは、数十年の間に大きな三つの変革をとげました。40~50年前、障害は医者の治療を受けるべきものと考えられ、遠く離れた巨大な収容施設に入所する以外の選択肢はありませんでした。
 1960年代後半から公民権運動が広がる一方、大規模施設でのひどい生活実態が暴露され、障害があろうと人間的な権利は守られるべきという法律ができました。いくつかの地域施策ができ、巨大施設から地域の小規模ケア施設、グループホームや作業所への移行が始まりました。ソーシャルワーカー等の専門家集団がそれを進めていて、当事者や家族の考えを聞くことはまだありませんでした。
 90年代になると「地域社会の一員として」という考え方が広がってきました。障害をもつ人たち自身が、「障害者用」プログラムにあてはめられるのはイヤだと言い始めたのです。特別な場所に通う利用者としてではなく、他の人々と同じように「市民」として社会に参加したい! という欲求が本人や家族から出されています。支援はそのために必要なもので、地域の学校に行き、近くの職場で働き、遊び、アパートや自分自身の家で生活することが求められるようになりました。

××から → ○○へ、考え方と姿勢を変えよう

●市民である「あなた」へ

 自分はダメだと思い、絶望している、いろいろなことをあきらめている「あなた」から → 自分を信じ、長所を伸ばし、可能性にチャレンジし、希望に満ちた「あなた」へ
 何でもだれかにしてもらっていて、自分の考えはだれにも聞いてもらえない立場から → 自分の意見を言い、互いに守りあい、みんなのためにリーダーになる立場へ

●親と家族へ

 障害をもつわが子には期待しない親から → わが子の幸福で豊かな未来の可能性を追求する親へ
 孤独で心細く、専門家に答えを求めようとする親から → 本人や親たちと互いに守りあい、障害者の完全参加のための力強い勢力になるよう結束する親へ

●サービスと専門家へ

 「かれらのために」計画し正しい選択をするのは「われわれ専門家」 → 本人と家族が計画し選択する、当事者の望みとニーズに焦点をあてて、一緒に協力する円をつくるのが支援者の役割
 障害者を適応しそうなサービスにあてはめる → 障害者がコミュニティの一員になれるようなサービスに注目する

一人ひとりの「夢の力」を分かち合う

 「エンパワメント、自己決定、生活の質、セルフアドボカシー、インクルージョン」といった新しい流れの言葉がどんどん出てきています。しかし、一番肝心なことは、あなたたち=ここにいる一人ひとりが、「あなた」自身のために、あなたの子どものために、あなたが支援する人のために、「何を望むか、どうしたいか」というビジョンを持ち続ることです。
 障害者のこれまでの共通体験は、拒絶、孤立、貧困、差別でした。もう、私たちは「障害者」というレッテルを通して見てはなりません。支援やサービスを必要とする本人と家族が、自らの生活とサービスの方向を決めるのです。同じ地域社会の一員である当事者の「夢」が、何をなすべきかを指し示してくれるでしょう。

四つの分科会

 全国各地で活躍されている障害当事者と福祉関係者をパネラーに迎え、各分科会とも3、4人の発表者とコーディネーターを中心に活発な議論が交わされました。

●第1分科会「どこでどうやって生きていくか」

 枠組みのある施設ではなく、あくまで本人を中心に毎日を組み立てる地域生活で、本人が決めることと支援のあり方のバランスの難しさに悩む日々から見えること。

●第2分科会「社会の中で生き、働く、ということ」

 ジョブコーチをつくり出すことで現実に就労が進んでいくことを基調に、健常者中心の価値観を障害者に押しつける危険もあり、当事者中心が常に問われる最前線の課題について。

●第3分科会「障害者が政治を変える、まちをかえる」

 障害者やからアカンと扱われてきた原体験をもつ当事者だからこそ、今障害者の立場から発言し社会を変えていくことが大事だとアピール。非公開で当事者不在の行政施策立案のしくみを変えるためには、障害当事者の政治参加が重要。

●第4分科会「わたしたちがつくる21世紀」

 支援費制度への構造改革は障害者の自己実現を支援しようと意図されているが、サービスを受ける人の権利を規定するものになっていない。障害者差別禁止法のような明確な法制度と、「支えの共生社会」を創るんだという気概が必要。

 来年、支援費制度がスタートしてから、改めて当事者が生の声をあげ、関係者の間で議論、研鑽(けんさん )を深めていく場づくりが必要だと考えています。1年後、「障害当事者中心の支援のあり方」を考える研究集会には、さらに多くのみなさまに参加いただけますようご協力をお願いします。

(うえだかおり 障害当事者の支援システム研究会・(福)ぷくぷく福祉会)