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自然との一体感がうれしい障害者カヌー

伊藤清文

 「障害者のあなたがカヌーをやっているの?」「カヌーって怖そう!」「してて楽しい?」などなど周りの人から私がカヌーをすると聞くとよく耳にする言葉です。
 私はいつも笑って「楽しいで。よく沈(ちん)して川に流されている時間のほうが長いけど。とにかくおもしろいし、一緒に遊ぼうよ!」というのも何回話をしたかわかりません。
 私にとってカヌーというのは何かというと、今は自分自身の人生で欠かせないものとしか言いようがないほど楽しいスポーツです。
 私は、生まれつきの脳性マヒにより、歩行障害があり、艇も細い艇だと沈をしたときに脱出できないので、太い艇に乗っていて、腰付近にパッドを入れてできるだけ艇の操作が安定するよう工夫しながらカヌーを楽しんでいます。
 これまで、カヌーを始めて6年になるのですが、全国各地で開催されているパラマウント・チャレンジ・カヌーに参加するとともに、そこで知り合った仲間たちと、川へツーリングと本当に楽しさが広がっていくとともに、川に住むものしか知りえない川の上での自然の雄大さ、川の美しさを自分が味わっていることに幸せを感じ、なびく風がここちよい心の洗浄をしてくれます。また、急流になってくると、心臓がバクバク言いながら、教えてもらった漕ぎ方などを思いだし、この大きな流れを漕ぎきろうと波へチャレンジし、乗り切ったときのうれしさ、沈したときの悔しさなどを胸に、自然との一体感と楽しさを味わっています。
 そして、何よりも一緒に遊んでいる仲間が障害者も健常者も関係なく一緒に行動し、遊んでいるということにとても普通のことですが、私にとってなによりもうれしさを感じます。カヌーを始めたとき、「水の上では障害者も健常者もない。艇に乗ってしまえばみんな一緒!」その言葉に勇気づけられたこと、そして今でも忘れられない言葉です。
 とにかく、カヌーに乗ることによって自然と共感できる感動と、障害者も健常者も関係なく一緒に遊べる仲間たち、そして、何よりも各地で開催される大会で、カヌーに初めて乗った障害者が川へ出たときの笑顔が力を与えてくれることに、障害者カヌーをやってきて、とてもよかったと思うとともにうれしいことです。
 これからもずっと川の上また河原で、仲間たちとともに一緒にぜひ遊べることを心の支えとして楽しみます。興味のある方、一緒に遊びましょう!

(いとうきよふみ 障害者カヌー協会理事)


●障害者カヌー協会
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