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ブックガイド

発達障害に関するおすすめ本

藤村出

 発達障害に関する本は、たくさんあります。
 やさしい入門書から、難しい本や学術的な本までさまざまに出ているので、読者のみなさんはどれを読むのがいいか迷われることでしょう。
 その目的や得たいと思うことによっておすすめの本が違うのですが、今回は読んで理解しやすい「やさしい本」を主に選びたいと思います。
 発達障害の概念はその捉え方によって違いがありますが、狭義には、運動機能の問題や言語機能の問題は含めず、精神遅滞(知的障害)、広汎性発達障害(自閉症など)、その他の特異的発達障害(学習障害や注意欠陥多動障害)を指します。
 これらの障害は、みんな近接領域の障害として近い状態像をもっているのですが、発達障害全般を扱ったやさしい本というのはなかなかなく、多少のオーバーラップはありながらも、それぞれの障害として扱っている本が分かりやすいと思います。

 LD(学習障害)を扱った本では、『LDとは何か―基本的な理解のために』(日本LD学会/日本文化科学社、1,750円+税)がタイトル通りベーシックなことについて理解しやすいでしょう。
 単にLDだけというよりは周辺の障害とあわせて理解することが重要ですが、ADHD(注意欠陥多動障害)を扱った本では、『落ち着きのない子どもたち―多動症候群への理解と対応』(石崎朝世編/すずき出版、1,600円)がやさしく理解しやすいと思います。姉妹書も数書出ていますが、どれも読みやすく入門向けです。
 『きみもきっとうまくいく―子どものためのADHDワークブック』(キャスリーン・ナドー、エレン・ディクソン/東京書籍、1,000円+税)は、子どもが自分の障害を自分で理解し、その障害とうまくつきあっていくために書かれた本です。小学校の高学年ぐらいであれば、なぜ自分がつっかえているのか、どうすればうまく暮らせるのかを考えるのにいいきっかけを作ってくれます。また、親子で一緒に読める本としてもおススメです。
 また、学校での対応などの実例を集めた、『ADHD及びその周辺の子どもたち―特性に対する対応を考える―』(尾崎洋一郎ほか/同成社、900円)は、具体的な対応例がふんだんにあり、学校の先生が現場で参考にしやすいのではないでしょうか。もちろん多動のコントロールはADHD児だけでなく、自閉症や他の発達障害の人たちにも参考になります。また、この本は、LDを扱った姉妹本もあります。

 知的障害全般について書かれた本では、『知的障害児・者の生活と援助―援助者へのアドバイス』(手塚直樹、青山和子/一橋出版、1,000円+税)は、いろいろな角度から書かれていて参考になるでしょう。
 また、これは入門書ではないのですが、『精神遅滞第9版―定義・分類・サポートシステム』(アメリカ精神遅滞学会AAMR編/学苑社、4,200円+税)という本は、機会があったらぜひ、読んでいただきたい本です。本来はアメリカの知的障害を定義するマニュアルなのですが、障害という概念を理解するために重要な示唆を与えてくれます。ポイントは、障害を定義し、ラベルするだけの考え方ではなく、どんな援助が必要かを導きだすことが重要であるという視点です。また、「障害は環境との相互作用」という考え方は、WHO(世界保健機構)のICF(国際生活機能分類)にも影響を及ぼしています。

 自閉症の本は、最近になってたくさん出ています。基本的なスタンスとしておすすめするのは、新しい本から読むということです。自閉症の世界はどんどん新しい情報が更新され新しい知見が認められていくのに、古い間違った考え方に沿って書かれている本が一部まだ出回っているので、注意が必要です。ただし、新しいからといってすべてが正しいわけではありません。
 とっつきやすく、やさしく読める本は、拙書になりますが、『やさしい自閉症のススメ』(藤村出/仲町台発達障害センター、500円)です。新しく自閉症の子どもを持ったお父さんお母さん、新任教職員など、自閉症のことを知らない人がまず読む本としてすすめられる本です。また、勉強を続けているけれど自閉症は難しくて分からないと思っている人には目から鱗。書店には並ばないので直接ご注文をください(仲町台発達障害センター、TEL 045―943―9220、FAX 045―943―9228)。

(掲載者注:現在は、連絡先が変わっています。  社会福祉法人横浜やまびこの里 【書籍担当】〒224-0024 横浜市都筑区東山田町270 TEL:045(591)2728 FAX:045(591)2768)

 障害を知る本7『自閉症の子どもたち』(茂木俊彦監、太田昌孝編/大月書店、1,800円+税)も自閉症の入門書として障害の理解をしやすいでしょう。絵や写真が理解を助けてくれます。
 自閉症をもつ本人が書いた本が数書出ていて、自閉症の人の側から見た自閉症の世界が表されているのですが、中級向き。理解しやすいのは、高機能の人の様子をまとめた『自閉症―成人期に向けての準備』(パトリシア・ハウリン/ぶどう社、2,700円+税)でしょう。自閉症の人たちの生活の様子がよくわかります。

(ふじむらいずる 仲町台発達障害センター)