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新プランへの共通課題としての提言

佐藤久夫

(1)障害者差別禁止法の制定

 欧米先進国の多くにはすでにあり、発展途上国でもこれをもつ国が増えている時代である。国連も障害者権利条約の準備を始めた。障害だけの単独法か性別、人種なども含めた包括法かは問わず、実効性のあるものが期待される。
 なお、障害者雇用率制度は差別禁止法と併存させるべきで、それにより重度障害者の雇用への参加が保障される。

(2)評価活動を組み込むこと

 「計画」には「評価」が伴わなければならず、「評価」は「施策」の実施状況によってだけでなく、最終的には障害者の「生活とニーズ(の変化)」によってなされるべきである。このため、2003年の出発時点、2007年の中間見直しに際して、さらに2012年の最終年の前、という三つの時点で、身体・知的・精神の3障害と難病患者も含めて、統一的な生活・要望実態調査を行うべきである。

(3)障害者総合福祉法の制定

 2003年度からの知的障害者福祉の責任が都道府県から市町村に移管され、3障害とも市町村による実施体制となる。しかも近年の法改正で法目的も統一的に「自立と社会参加」とされた。障害種別の独自のニーズへの十分な配慮をしつつ、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、および精神保健福祉法の福祉部分を統合し、ニーズに基づくサービスを身近な市町村・福祉圏で利用できるようにすべきである。

(4)扶養義務制度の見直し

 社会生活と価値観の変化および国際的動向を考慮して、障害者を個人として尊重するために民法の扶養義務制度を見直し、扶養義務は配偶者間および未成年者に対する親にのみ課すべきである。この改正作業と平行して、障害者福祉制度などでの各種費用負担における扶養義務者の範囲を見直すべきである。

(5)当事者団体・支援団体の政策決定への参加

 国・自治体の政策決定や障害者関係施設等の運営方針の決定に際して、障害者団体・利用者団体の参加を義務づけ、それらの団体の政策提言活動への財政補助を行う必要がある。

(さとうひさお 日本社会事業大学教授)