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ニーズに対応したサービス提供への転換に向けて  
―障害認定・等級制度の抜本的改正へ―

岩崎晋也

 福祉サービスは、ニーズに対応して提供される。実際に対象者がそのサービスを必要としているのかが問題なのである。しかし現行のサービス提供では必ずしもそうなっていない。障害種別ごとの認定と等級制度が二重の障壁となっており、その二つの障壁を通り抜けて、初めてニーズ判定の対象となっている。
 障害種別による制限は、繰り返し指摘されていることではあるが、身体障害・知的障害・精神障害という縦割りの障害認定により、同じニーズを有していても障害種別が異なればサービスが提供されないことがある。さらに3障害のいずれにも当てはまらない難病、自閉症、てんかん等のいわゆる「谷間」の障害が生じるのも縦割りの障害認定が原因である。さらにサービスの対象となる障害をもっていても、「重度・中度」に限定されたサービスが現存するなどの問題がある。障害の程度が「軽度」であってもサービス・ニーズがないと推定する根拠はない。
 こうした問題が生じるのも、戦後の身体障害者福祉法の制定において、本来すべての障害者を対象として法制化すべきところを、緊急避難的に対象を制限したこと。さらに、機能障害が比較的軽度な人の職業的リハビリテーションを主とし、軽度の人は職業的自立、重度の人は施設や家庭で保護することを施策の基本としたことにある。主に機能障害の程度により、障害等級が判定され、サービス・ニーズを推定する資料としたのである。
 しかし現在の障害観では、機能障害の軽重は、サービス・ニーズの軽重とはリンクしない。障害をもつ人をとりまく環境の改善によっても、社会生活上の困難を減らすことはできる。機能障害を改善することが目的ではなく、参加の促進が重要なのである。
 社会福祉基礎構造改革が、戦後半世紀のシステム転換をめざすものであるのなら、措置見直しにとどまるだけでなく、つぎはぎによって作られた現行の三つの障害者福祉法を抜本的に見直し、ニーズに対応したサービス提供への転換を明確化すべきである。具体的には、障害者福祉法への一本化(障害種別による制限の廃止)、障害等級制度の廃止と、ニーズに対応したサービス提供を保障するケアマネジメントシステムの確立が必要と考える。

(いわさきしんや 法政大学現代福祉学部)