音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

医療面からの提言

樫本修

 ノーマライゼーション7か年戦略と言われた障害者プランの保健・医療面での達成状況をみると、地域における自立の支援の分野では、重症心身障害児(者)等の通園事業の整備が不十分であり、今後に課題を残した。一方、精神障害者の社会復帰促進においては、社会復帰施設、精神科デイケア施設の整備がほぼ目標値に到達したが、精神科救急医療体制の整備はいまだに不十分である。リハビリテーション関係ではリハビリテーション医療の充実、総合的リハビリテーションの体制整備が進められたが、地域格差が激しいのが現状である。理学療法士、作業療法士等の養成所の整備に加え、卒後教育のあり方が今後の課題である。言語聴覚士の資格の法定化がなされ、平成14年度の診療報酬改定でも急性期、回復期のリハビリテーションの重要性や言語療法が認知された内容となった。
 新障害者プランでは心身障害の発生予防、早期発見および研究の推進、医療・リハビリテーション医療の充実、精神保健対策の推進がうたわれている。予防医学の観点から周産期医療体制の充実や高齢者の体力づくりと健康増進の研究、在宅医療の整備、精神科救急医療体制の整備などが期待される。また、リハビリテーション医療の充実の観点からは医学教育の中でリハビリテーションや障害、保健、福祉に関するカリキュラムをもっと充実させ、リハビリテーションを専門とする医師の増加と医師全体の意識改革が必要と考える。さらに、保健・医療・福祉分野の専門従事者の資格制度の整備に加え、医療機関から地域に戻る際にリハビリテーションの視点が途切れることなく提供され、継続されるシステムの整備に期待したい。医療から介護保険、福祉制度等のリハビリテーションを提供する各ステージがそれぞれの役割分担を果たし、生活能力の向上、機能の維持、体力づくりや健康管理、QOLの向上を図りながら障害者が地域で安心して暮らしていけるシステムが望まれる。
 現在、「地域リハビリテーション体制整備推進事業」が進められているところであるが、地域に戻るとリハビリテーションの視点が途切れてしまうことが多い。また、モデル事業が進行中である高次脳機能障害者への対応を整備することが急務であり、介護保険、老人保健事業の対象外となる頭部外傷者、若年障害者、重複障害者においては機能低下や二次的障害発生の予防を目的としたリハビリテーションが受けられないことも問題である。これらの問題を解決するためには医療だけでなく、地域住民を含んだ多方面の連携が必要なことは言うまでもなく、関係省庁、各課の横断的なプランづくりを期待したい。

(かしもとおさむ 宮城県障害者更生相談所長)