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保育・療育面からの提言

中村尚子

〈障害者プランの問題点〉

 障害者プランは「地域生活」という観点からの計画化という点でそれまでの行政管轄ごとの施策を前進させるものと期待された。しかし「障害の発生予防・早期発見」などにかかわる保健領域の計画や通園施設の整備、一般の保育所における障害児保育の改善等々に関する具体案が盛り込まれなかったことにみられるように、乳幼児期の障害児にかかわるプランは関係する記述が少ないという不十分さがあった。
 人口30万人に2か所という目標が設定された障害児(者)地域療育等支援事業も、この事業を児童の通園施設を軸に展開するという点では遅れがみられ、さらに数値目標が掲げられた通園事業(デイサービス事業)は年度ごとの設置状況が発表されたが、最終年度末に至っても目標数値の1002か所には及ばない。

〈新プランへの期待〉

 今後の10年を見通したとき、具体的な施策を語る前提として、乳幼児期の障害児の権利保障の裏付けとなる制度を整備すべきだと考える。「子どもの権利条約」第23条にあるように、居住する自治体・地域にかかわりなく、教育、訓練、保健サービス、リハビリテーションなどが無償で受けられるという基本原則を児童福祉法等に明記すべきであろう。
 そのうえで、新プラン上に、市町村、あるいは保健福祉圏域ごとに、障害の早期発見と療育・保育のネットワークを形成するための計画を明確に位置づけるべきであろう。その内容には、1.集団健診を中心とした乳幼児健診の受診率の向上、2.子育ての困難などによる発達上のつまずきのある子どもへの対応を含んだフォローアップ体制の確立、3.障害児通園(デイサービス)事業、通園施設、保育所の整備と改善などについて、新たな数値目標が書き込まれる必要がある。
 早期対応の重要性は指摘するまでもなく、乳幼児期は障害児とその保護者に対して手厚いサービスが必要とされる。しかし6歳以降の学齢期と比較しても財政的な措置が不十分であり、現今の「地方分権」政策は市町村格差をますます広げる方向に作用している。新プランの施策はいずれも市町村の責任で進行すると思われるが、子どもの権利を平等に保障するためには、国の責任において「質の高い最低基準」と、それに対応した予算措置が講じられるべきであることを強調したい。

(なかむらたかこ 全国障害者問題研究会)