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福祉的就労面からの提言

朝日雅也

 社会就労センター(授産施設)や小規模作業所などのいわゆる「福祉的就労」については、「働く場」の確保として現行の障害者プランにもその整備にあたって数値目標が盛り込まれていたことは周知のとおりである。たとえば、「授産施設・福祉工場」については、プラン制定時には、4万人分であったのに対して、終了する今年度末までに6.8万人分が見込まれ、2002年度末では、約6万5000人分まで達成されている(厚生労働省資料)。また、小規模作業所については、助成措置の充実等が図られてきた。
 にもかかわらずプラン終了を終える今、福祉的就労の場の確保について量、質ともに不足感を禁じ得ないのはなぜであろうか。授産施設は絶対数の不足、地域偏在の中、他に適切な施設・サービスが不足しているため、多様なニーズを受け止めざるを得ない。根拠法の違いが複雑な体系に拍車をかけている。また、障害のある人々の「働く」ことを幅広く受け止める場としての小規模作業所は増加を続けている(全国で5868か所、きょうされん調べ)。昨年度から小規模通所授産施設としての法内施設化の道が開かれたとはいえ、構造的な不況に加え、脆弱な経営基盤の中でその多くは悪戦苦闘している。
 また、身体障害、知的障害の社会就労センターが中心となるが、来年度から始まる支援費支給制度の実施を前に、サービス供給の手法の検討に関心が集中している。しかしながら障害のある人が「働く」ことを実現する制度やシステムについて早急に検討を行い、福祉的就労が持つ機能を明確にしなくてはならない。
 その意味では、新しい障害者プランにおいては、量の確保だけでなく、職業的に見てどんなに障害が重くても、その人が選択できる「働き方」を提供できるような資源の整備が求められる。具体的には、障害種類や施設の種類によるサービスの格差の是正、地域で働くことと切り離すことのできない生活支援の仕組みの導入、仕事の受注を促進するための誘導策の策定、小規模作業所のネットワーク化を進めるための公的支援策の実施などである。
 新障害者プランには、全体として包括的な数字化することによって薄まってしまいがちな、こうした「質」を確保する具体的な施策について明記し、目標を掲げていくことを求めたい。そして、福祉的就労の場にある人が一般雇用の場で働くことを可能にし、また、一般雇用の場で働いていた人も、その人の必要に応じて福祉的就労を利用できるような仕組みについても積極的に盛り込む必要がある。「一般雇用施策では…」「福祉的就労では…」といった分離した切り口からの計画策定ではなく、働くことについての総合的視点をその出発点にしたいものである。

(あさひまさや 埼玉県立大学)