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自治体からの提言

野村龍太郎

 市町村主体の障害福祉が支援費制度の下で展開されようとしている今、自治体に必要とされているものは、その財源とポリシーである。そして、新障害者プランに期待する点もまた同じである。
 入所施設か在宅福祉かという二者択一の議論はもう止めたい。閉塞的で単調な長期の入所施設生活は、往々にして人の尊厳にふさわしい生活とはなりにくい。しかし、重度障害者の在宅生活も介護や参加の場が乏しければ、時として入所施設生活のほうがバラ色に見えることがあろう。最近府の計画作りのため調査をしたが、切々と生活の苦しさを訴える記述に直面すると、一人の自治体職員として、行政プランの綺麗な言葉は自己嫌悪と苛立ちを引き起こす。
 地域での自立と社会参加の促進が叫ばれて久しい。次の十年の理念は「ノーマライゼーションのいっそうの促進」基本方向は「障害者・児の介護の社会化の推進」以外に考えにくい。これからの障害福祉の課題は、まず多様な住まいの場づくりである。新障害者プランでは、旧来のサービス一体提供型の入所施設から生活の場と活動の場が分散された方向性を打ち出すことが求められる。在宅福祉の介護の供給も個人からグループホーム・福祉ホームへと進むにつれて入所施設の進化すべき姿と交差する。障害者施設の地域でのサテライト化とでも言おうか。
 基本的には、日本型ノーマライゼーション推進の道はこのような穏やかな方法が適していると考えているが、しかしそれは着実な変化を導き出すものでなければならない。そのため、新プランで住まいの場の近未来形として先の方向を研究課題としてでも打ち出されることを切に期待する。
 次に入所施設からの地域移行に際して、出身家庭や地域資源の活用や一般社会での息吹を感じるためには、外出のガイドヘルパーや家庭等でのホームヘルパーの活用が欠かせない。支援費においては、このような地域移行促進のため居宅生活支援との併給は不可欠である。
 基礎となる介護の社会化の推進には「過不足なき介護の提供」をめざすべき方向とした基盤整備が必要である。市町村で介護の財源確保の合意形成が図られるよう国レベルのリードが欠かせない。新プランの数値目標達成のため、市町村プランを積み上げるなど制度的・技術的仕掛けが必要であり、実現可能な方法で打ち出されることを望む。

(のむらりょうたろう 大阪府健康福祉部)