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視覚障害

大里晃弘

1.鉄道駅ホームからの転落防止

 新プランへの提言というテーマだが、プランは現行法制度の下で各省庁の施策を集めたものであり、プランの枠内だけで論じるのは無理がある。法制度の整備も含めた視野で提言したい。
 視覚障害者にとって大きなニーズは、移動と情報である。一口に移動と言ってもさまざまであるが、ここでは単独歩行者にとってのニーズを中心に論じたい。

 移動の問題の中で、駅ホームでの安全確保が最大のニーズである。確かに、上野訴訟を契機にホームには点字ブロックが敷かれ、誘導チャイムその他の設備も整備されつつある。しかし、転落事故は跡を絶たない。ホーム上で方向を誤ったり車両や自分の位置を勘違いするなどの錯覚による転落が多いためだ。それを防止するには、「欄干のない橋」とたとえられるホームにその欄干、つまり転落防止柵の設置が求められる。
 交通バリアフリー法に伴う省令「移動円滑化基準」の中でも、「視覚障害者の場合、プラットホームからの転落の危険性が高いため、ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロック等による転落防止措置を実施する」という文言が盛り込まれた。だが罰則はなく、法的拘束力は弱い。
 私たちは、ホームドアや可動柵の設置を求め、鉄道会社に話をする。すでに若干ながら一部の鉄道でこれらを設置している。しかしほとんどの鉄道会社は、経済的・技術的な理由をつけて設置しない。義務や責任をすべて事業者に押しつけるのではなく、国や自治体もこうした安全対策への予算措置や優遇制度を設けること、あるいは法改正で罰則を規定するなど、実現に向けて積極的な取り組みをしてほしい。そうでないと、事業者は代替物として安易に固定柵を設置してお茶をにごすことになるからである。

2.まちづくりのための要求

 前述以外に、歩行環境を製備するために、以下の要求の実現を期待したい。
 1.安全で安心のまちづくりのために、ハードの整備だけでなく、ソフトの充実を計ること(駅での人的配置、社会への啓発)
 2.転落防止柵を基準化(固定柵をやめること)
 3.点字ブロックの完全なJIS化(色や敷設方法なども含める)
 4.音響式信号機の方式の統一(メロディー方式ではなく、鳥の声の鳴きかわし方式)
 5.横断歩道上の誘導方法の研究・基準化
 6.音声誘導システムの基準化(業者による方式が乱立しているのが現状)

(おおさとあきひろ 茨城県視覚障害者の生活と権利を守る会)