知的障害
藤原治
現障害者プランの検証
1995年(平成7年)12月に発表された「障害者プラン・ノーマライゼーション7か年戦略」は知的障害者分野にとって画期的出来事であった。それはノーマライゼーションの理念の実現のため七つの重点的な推進策を明確にし、それぞれに具体的な施策の内容と可能な部分の数値目標があげられたことである。基本的な方向は「障害の種別をこえた総合化」と「地域福祉の推進」「市町村の役割の重視」であり、いかに市町村で障害者計画が作られ、どこに住んでも同等のサービスが受けられ利用できるか重要であった。
用語の改正をはじめ、施設整備計画は年次・数値目標があり、それは計画どおり実現した。理念としての施設福祉から地域福祉へ、措置制度から利用契約制度の考えも関係者に周知した。しかし、理念やよしであるが実際は施設整備優先で、箱物中心は相変わらず、地域生活支援への方向は弱く、特に資金の流れが変わらない限りサービス提供者の意識は変わらない。対等な関係である利用契約制度も支援費のほうに力点が移り当事者の消費者意識への昇華もなく、まだまだ地域福祉は低迷している。
新障害者プランへの期待
いろいろな批判・不満はあっても1981年(昭和56年)の国際障害者年や障害者プランによって、確かに国民の障害者への理解は進んだ。私は次なる新障害者プランに大いに期待する。それは大きくは、知的障害のある人の市民権の復権である。すなわち、20歳になればどんなに重度と言われようとも支援付き自立生活ができる支援策の実現である。そのために具体的には、1.知的障害の定義を確立し法制化してほしい。2.療育手帳の療育という名の変更とともに国内統一規定と利用しやすいカード化を制定してほしい。つづいて地域福祉の理念を実現し、地域でふつうの生活をするためには、お金の問題の解決が必要である。3.就労支援策をはじめ所得保障の問題を解決せずして支援付き自立生活は絵にかいた餅である。そして、4.扶養義務制度がある限り、彼らは常に扶養される人で自立した市民として認められない。これの撤廃こそ重要で、国際的に実現しつつある障害者差別禁止法の制定にまで踏み込んでほしい。
以上を基本として、成人すればいろいろな支援を利用しながら地域でふつうに暮らせる目に見えた施策の実現を願う。特に今回は、市町村に事務委託が行われるだけに、新障害者プランの市町村計画こそキーポイントと思われる。努力目標でなく義務づけが必要かと思われる。目に見える施策は当事者と家族の安心を得て、よき理念の地域福祉実現へと向かうものと確信する。
(ふじわらおさむ 全日本手をつなぐ育成会)