音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

自閉症

石丸晃子

 「ノーマライゼーション7か年戦略」として挙げられた緊急に整備すべき障害者施策のうち、施設整備等は早々に目標数値達成の進捗状況と聞いている。私たちは制度にはない自閉症者施設を標榜して、平成元年から全国自閉症者施設協議会を組織しているが、会員施設53のうち15施設がこの間に駆け込むように設立された。利用者主体の支援と地域生活への移行という大きな理念を掲げて社会福祉基礎構造改革が具体的に動き始め、市町村への権限委譲も含め、これまでとは違う全く新しい発想の共生の時代到来の予告がされている。私たちもその展望に希望を繋ぎたい。
 しかし措置から契約への改革を目前にして、果たして自閉症児・者が必要とするサービスが保障されるのであろうかという不安は極めて大きい。ほとんどの自閉症者は自ら選択する力、社会に訴える力を持たず、時には排除される行動で意思を伝えようとする。この人たちをノーマライゼーションをめざす社会はどのようにして受け入れていくのだろう。本人が望んだことではないにしても、学齢期を過ぎ、どこにも居場所のない人たちのために、現行法での施設運営にさまざまな困難は承知のうえで、まず専門性のある援助をめざした施設づくりが次々と進められてきたのは当然の成り行きであった。
 自閉症がわが国で報告されてから50年を経過したが、障害は現在に至ってもなかなか理解されがたい。通常の発達であれば3、4歳時に形成されるはずの人の気持ちを理解したり状況を判断する能力に重い障害を抱えている。知的には測定不能の重度の人から、高機能自閉症と言われる高い人まで社会適応や自立生活の困難な方が多い。発達障害が定説となり、自閉症児施設の法制化も20年余前、青年期以降の施策は何も無い。彼らと身近に生活を共にしてきた私たちは、生活支援の専門性の必要や、生涯にわたるサポートがあれば地域で働き、普通の暮らしに伍していける人たちであることも実感してきた。そのための人材の確保と育成を痛感し、施策の必要を訴え続けている。
 今、自閉症者施設はこの人たちの地域生活支援の拠点の役割をもめざしている。折しも平成14年度予算で、自閉症・発達障害支援センター事業の実施が確定したことは、自閉症関係者に大きな希望と意欲をもたらした。各都道府県に少なくとも1か所という目標はぜひ実現してほしい。どんな障害の人も、援助を受けて地域で暮らせる社会の構築をより鮮明にめざすプランとその具体化を望んでいる。

(いしまるあきこ 全国自閉症者施設協議会)