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難病

坂本秀夫

 国の難病対策は、難病対策要綱に基づく予算措置として、昭和47年に開始された。それから30年、小泉内閣の財政構造改革による補助金の毎年1割削減の財政措置で、難病対策の根幹でもある難病医療費助成(特定疾患治療研究事業)が崩壊しようとしている。
 日々、原因も治療方法も不明な病気に苛(さいな)まれ、もがき苦しんでいる難病患者を救済する道はないのか。
 平成6年、「難病対策専門委員会中間報告」は、以下の通り現状を分析している。
 平成5年の「障害者基本法」の附帯決議において「…難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるもの」は、障害者基本法の障害者の範囲に含まれることとされ、きめ細やかな施策の推進に努めることが要請されている。また、平成6年の「地域保健法」には、「治療方法が確立していない疾病その他の特殊な疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項」が加えられ、難病対策における保健所の役割が明記された。
 しかし、8年経過した現在も、この附帯決議に基づく障害者施策からの難病対策が全く存在しない。また保健所の難病対策は、個々の保健所での自然発生的な取り組みとなっており、とても国から難病対策推進の統一した指導が存在しているとはいえない。
 難病対策30年の歴史は、診断基準や治療指針、対症療法の確立等により、確かに患者の生存率も延びている。しかし、これは一方では、難病という病気を長期に抱えて、生きていかなければならないことも意味する。また、病気そのものを治すことができない一方で、薬のコントロールや軽い症状から重篤な病状へと病気が進行することへの対応などの新たな課題も生じている。これら新たな課題は、これまでの「調査研究の推進」「医療施設等の整備」「医療費の自己負担の軽減」と合わせて、「地域における保健医療福祉の充実・連携」「QOL向上をめざした福祉施策の推進」の取り組みの強化を求めている。
 しかし、これらを総合的に推進し、難病患者が病気を抱えて生きていける社会を構築するためには、現在の難病対策要綱だけでの対応では不十分な状況となっている。そこで今後は、新障害者プランの中に難病対策を位置づけるのか、または難病対策推進という法律を制定し対応を図るのか、これ以外に難病患者を社会的に救済する道はないと考える。

(さかもとひでお 全国難病団体連絡協議会事務局長)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年8月号(第22巻 通巻253号)