音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

カウントダウン AP10年

ESCAP「アジア太平洋障害者の十年」
最終年ハイレベル政府間会合のわが国開催について

矢野理恵子

開催経緯

 2002年5月16日(木)から22日(水)まで、バンコクの国連会議場において開催された国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)第58回総会において、わが国の主唱により「アジア太平洋障害者の十年」(以下、「十年」という)をさらに10年延長するとともに、この十年の行動課題の達成状況を評価し、現「十年」終了後の行動の枠組みを決める最終年ハイレベル政府間会合を、本年10月25日(金)から28日(月)の4日間、滋賀県大津市において開催する決議が採択されました。
 この会合は、国連ESCAPの主催の下に、加盟・準加盟61か国/地域の代表者が出席して開催されるものです。わが国においては、国内障害者施策の総合調整を行う内閣府が、国際会議の経験も豊富で障害者施策の先進的取り組みをしてきた滋賀県、大津市と協力・連携してホストすることとなりました。
 「アジア太平洋障害者の十年(1993~2002年)」は、「国連・障害者の十年(1983~1992年)」が障害者への認識を高め、ESCAP域内での障害者施策が進展したものの、なお立ち遅れている当該地域の障害者施策の水準向上をめざすため、1992年の国連ESCAP第48回総会において、わが国及び中国が主唱し決議されたものです。
 これまで、1992年に北京において「十年」開始年会議を、1997年ソウルにおいて「十年」中間点高級事務レベル会合が開催され、それぞれこの十年の行動課題の提案や、行動課題の実施状況の進捗状況の評価がなされてきました。
 最終年に向けて、1998年の国連ESCAP第54回総会において、2002年末までにハイレベルの地域会議を開催するよう努力することが決定されたことを受け、2001年の第57回総会において、「十年」提案国であるわが国は、本邦誘致を表明していました。

会合概要

 ここで、簡潔に今回の会合の概要をご紹介いたします。

主催:

国連アジア太平洋経済社会委員会

目的:

「アジア太平洋障害者の十年」行動課題の実施状況の報告及び評価並びに「十年」の次の政策的枠組みの検討

開催日:

2002年10月25日(金)から28日(月)

開催地:

滋賀県大津市

参加者:

ESCAP加盟・準加盟の61か国/地域の閣僚級から本省局長級の政府関係者、国連機関、NGO等から約250人(ESCAP事務局見込み)

 会議内容については、今後ESCAP事務局が各国政府と協議のうえ決定される見込みですが、政府としましては、この会合をホストすることにより、アジアの先進国であるわが国に期待される国際的貢献を果たすとともに、国内施策においては、現行政策の評価と次の十年の中核となる政策を周知し、障害者施策に対するこれまで以上の国民の理解と、ノーマライゼーションの促進を図りたいと考えています。

会合の特色

 今回の政府間会合は、先のESCAP総会において、会議を活性化する旨の決議がなされたことを踏まえての開催となります。ホストとしましては、これまで以上に充実した会議内容になることを期待し準備しています。
 政府間会合会場は、大津プリンスホテルのコンベンションホールですが、地元自治体独自のサイドイベントが予定されており、こちらは近隣のホテル等に会場を移して行われます。
 また、障害のある方の参加が多数見込まれますので、設備のバリアフリー対応や案内表示の工夫など、障害のある方も参加しやすいような配慮を努力してゆきます。
 いずれにしましても、本会合が成功し、障害者施策がさらに発展するよう、関係各位の御理解と御協力を得ながら準備を進めていく所存です。

(やのりえこ 内閣府政策統括官障害者施策専門官)

資料(外務省仮訳)

(※ESCAP/第58回総会(2002年5月16~22日)で採択されたもの)

決議58/ .21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のための統合的で、バリアフリーな、且つ権利に基づく社会の促進

 ESCAPは、
 「障害者に関する世界行動計画」の採択に関する1982年12月3日付国連総会決議37/52、及び同行動計画の実施に関する2001年12月19日付同決議56/115を想起し、
 また、アジア太平洋障害者の十年(1993~2002年)を宣言した1992年4月23日付ESCAP総会決議48/3、及び同行動課題の承認に関する1993年4月29日付同決議49/6をも想起し、
 1994年10月にマニラで開催された「社会開発サミットに向けた地域準備会合」にて採択され、各国政府が、障害者による、教育、保健、職業訓練、及びその他の分野でのサービスへのアクセスの確保に向け効果的な策を講じる決意を示した、「ESCAP地域における社会開発に関する行動計画」を想起し、
 「十年」の開始以来、国内調整及び立法の分野では重要な進展が見られ、また予防、リハビリ、周囲へのアクセス、及び障害者の自助団体設立といった分野でも幾らかの改善が見られた一方で、障害児の教育へのアクセスは継続的且つ危機的に低く、行動課題の実施状況における地域格差となって現れ、達成状況は不均等ながら、それでも行動議題の全12カテゴリーにおいて全般的な改善が見られたことは明かであることを認識し、
 2001年12月10~15日に越・ハノイにて開催された「アジア太平洋障害者の十年キャンペーン会議2001」の「ハノイ宣言」が、同会議出席者により採択され、そしてそれは、各国政府に対し、障害者の権利条約の精緻化・実施促進のための地域メカニズムとして「十年」を延長するよう強く促したことに留意し、
 また、最近の世銀の見積もりによれば、世界の最貧困者の5分の1までもが障害者であり、障害は教育や雇用へのアクセスを制限し、人を経済的・社会的疎外へと導き、また貧困層の障害者は貧困と障害の悪循環に捕らわれることに留意し、そして、障害者問題と貧困対策事業を統合するという世銀及びアジア開発銀行の取り組みを歓迎し、
 2001年12月19日付国連総会決議56/168「障害者の人権及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約」の採択、及び同条約案につき検討するアドホック委員会の設立決定を歓迎し、
 タイ政府と日本政府の協力による、「十年」の成果としての、障害者のエンパワーメント及びアジア太平洋地域のバリアフリー社会を促進するための「アジア太平洋障害者センター」の、2004年までのバンコクへの設立に向けた努力を歓迎する、
 障害者に関係する事業の計画・評価に関する迅速且つ信頼できるデータの重要性、並びに障害者人口に関するデータの収集・蓄積のための実践的な統計手法のさらなる発展の必要性を認識し、
 さらに、情報通信技術が、障害者による情報、教育及び雇用機会へのアクセスを改善し、彼らの社会参加を促進する新たな可能性を提供することを認識し、
 障害者のアクセス改善策は、高齢者や幼児、妊婦及び乳幼児を持つ親にも裨益することに留意し、
 紛争が、特に障害者の人権を侵害し続けていることに重大な憂慮の意を表明し、また長期の破壊的な紛争の後の、アフガニスタンの再建に向けた国際的な努力を認識し、
 日本政府及び滋賀県のホストによる、2002年10月25~28日、滋賀県大津市での「十年」最終年ハイレベル政府間会議開催を、感謝の意とともに歓迎し、
 2002年が「十年」の最終年であることに留意し、

1.2002年後もESCAP地域での「障害者に関する世界行動計画」及び「十年行動課題」の実施にさらなる原動力を与える観点から、1993~2002年の「十年」を、2003~2012年のもう10年延長することを宣言する。

2.障害者の権利をさらに促進・保護する観点から、各国政府に対し、障害者の権利に関する条約案を練る等のアドホック委員会の業務を支持し、また右に貢献することを強く促す、

3.全てのメンバー国・地域政府に対し、
(a)1993~2002年の「十年」行動課題実施の成果をレビューし、
(b)特に、(1)教育、職業訓練、周囲環境や情報通信技術へのアクセス、安全保障、及び持続可能な生活を含む、主要な戦略的分野、並びに(2)準地域での協力・協調、といった目標に関し次の十年のための行動の枠組みを設定・採択するため、ハイレベル政府間会合に積極的に参加することを強く促す、

4.またハイレベル政府間会合は、特に
(a)農村の障害者、特に女性の障害者及び彼女らの団体が、21世紀の統合的でバリアフリーな社会に貢献するメンバーとなる観点から、彼女らの自助団体形成支援・強化、
(b)国の政策や事業において、障害児の初期段階での治療や彼らの家族の支援を含む、障害児の育成に向けた教育へのアクセス促進、及び
(c)障害を持つ女性・女児、障害高齢者、精神病患者の社会への統合と彼らの人権擁護を含む特別な保護の供与、
(d)ITを活用した障害者の社会参加の促進及びその基礎としてのITに関する地域格差の是正、
  に注意を払うべきである旨強調する、

5.障害者分野で活動する国連機関や国連専門機関だけでなく、政府間機関やNGOを、ハイレベル政府間会合及び同会合のテーマに関した会合の開催・調査の実施を含む準備プロセスに参加し、貢献するよう招待する、

6.国連システム、国際融資機関、ドナー国政府、及びNGOに対し、アフガニスタンの国家再建に向けた彼らの支援の主要なターゲット・グループとして推定80万人のアフガニスタンの障害者を含めることを要請する、

7.アジア太平洋障害者センターが、「十年」の成果を整理し、長期的な右フォローアップを確保する現実的な手段として、タイに位置する重要性を認識し、全ての政府、国連システム、政府間機関に対し、同センターの運営・活動を財政的、技術的、現物的に支援することを慫慂する、また、障害者団体、NGO及び民間セクターに対しても、センターの運営や活動のために適切な支援を供することを慫慂する、

8.各国政府に対し、障害者に関する統計の開発において、「アジア太平洋統計研修所(SIAP)」と協力し、技術支援や研修を実施する事務局的能力を強化し、データ収集と障害者統計方法の開発だけでなく、障害者に関するデータの蓄積と発信を含む、国のデータ収集能力を整備するよう強く促す、

9.国連専門機関や国連機関だけでなく、政府間・準地域間機関、融資機関に対し、障害者問題を自らの事業にシステマティックに統合させ、各国の施策を支援する観点から、ESCAP地域における、特に貧困軽減やその他の主流な開発分野での既存の事業・プロジェクトを点検するよう強く促す、

10.ESCAP事務局に対し、利用可能な財政資源の限りにおいて、
(a)次の十年において、ESCAPメンバー各国がその行動計画を立案・追求する能力を強化するよう、また
(b)1999~2009年の「アフリカ障害者の十年」の実施における成功例の共有を含む、障害者問題の分野での、他の地域の取り組みとの協力を強化するよう、
 要請する、

11.ESCAP事務局長に対し、新たな「十年」の終了時まで隔年に、ESCAP総会に対し、本決議の実施状況につき報告し、要すれば、「十年」の原動力を維持するため、総会に対し勧告を行うよう要請する。