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入学試験の健康診断を廃止せよ

北沢一利

 欠格条項の見直しが進んでいる。完全とまではいかないが、障害者を理由もなく「門前払い」するような法律が少しずつ改正されている。少なくとも、本人に能力がありながら、障害をもつという理由だけで資格を認めない制度が不合理であることは広く理解されてきたと言える。私はこれをさらにもう一歩進め、国立大学の入学試験の際に行われている健康診断も廃止すべきであると考える。
 欠格条項見直しの議論は、資格認定を「能力だけで判断する」ことが、障害者に対する恣意的な差別を撤廃し、健常者と同じチャンスを与えることにつながると主張する。この議論は、大学の入学試験にも同じように当てはめることができる。障害者といえども、大学が用意した学力試験を通過しさえすれば、障害の如何を問わず合格が認められるべきである。それが健常者と同じ選抜であり、「能力だけで判断する」ことにつながる。
 しかし、国立大学の多くでは、受験の際に健康診断書の提出を義務づけている。選考過程でどのように健康診断書を利用するかは大学によって異なるが、ほとんどの場合、学生生活に支障や困難が予想される障害や疾病をもっていないかどうかを事前にチェックするために使われる。そのため、仮に学力試験を通過したとしても、健康診断書の内容次第で不合格になることもあり得るのである。
 これまでは、障害者が遠慮して受験しなかったこともあり、入学試験の健康診断が批判されることはあまりなかった。しかし、だからといってここに問題がないわけではない。これからは、大学校舎内のバリアフリーをすすめ、障害者が自分の力で通学し、大学生活を送れるような機会を保障すべきである。健康診断は、入学後の学生の健康管理のために行うべきものであり、入学前の受験生の選抜に用いるためのものではない。
 健康診断は、ほかにも公務員試験や教員試験などで無批判に行われている。私は、将来的には教員試験でも健康診断を廃止すべきであると考える。もし、それができない場合は、学力以外の能力として、どのような身体資質を満たすことが必要なのか、そしてそれが教員の「能力」とどのような関係があるのかを事前にはっきり示すことが必要である。私には、教員の「能力」として要求すべき身体資質があるようには思えない。
 ところで、「能力だけで判断する」というのは、なかなか厳しい世界でもある。障害者は、これからは大いに試験勉強してほしい。そして、大きな顔をして大学に通学しよう。そうすれば、教員免許も取得でき、がんばり次第で教員試験も合格し、あなた方が望むような教育ができるだろう。

(きたざわかずとし 北海道教育大学)