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1000字提言

自主的変革のお勧め

福原誠二

 今難聴と言われる人は日本全国で1,000万人を超えると言われています。障害にもいろいろありますが、聴覚障害ほど健常者に認識され難い障害はないでしょう。聴覚障害は外見的には判断し難い障害です。見た限りでは健常者と変わりありません。そのためか、聴覚障害者へのバリアフリーは他の障害に比べて遅れているようです。
 バリアフリーの実現は、健常者がその障害者にとってのバリアを認識して初めてできるものと考えます。認識や理解が遅れている場合は、やはりバリアフリーの実現も遅れてしまいがちです。世の中の動きに合わせていると、どうしてもなかなか希望が叶わないことが多いのが現実です。国や民間も一生懸命取り組んではいるのでしょうが、こちらの思い通りにはなりません。
 ではどうすればよいのか? 私は、実現の早道は欲している人が自ら行動を起こすことだと考えています。だれかが何かをしてくれるのを待つのではなく、自分たちでその環境を変えて行くことこそが大切なのではないでしょうか? プロセスは次の通りです。(1)自主的に環境に変革をもたらす。(2)環境の変化に周囲が気付く。(3)変革の必要性を周囲が認識する。(4)理解が広がり、新たな環境変革を生む。このことは簡単なことではないと思います。
 今は見えない大きな壁があるかもしれません。しかし、それを恐れて躊躇(ためら)っていてはいつまでも変化は起こりません。環境は自らが変えるものではないでしょうか? そして同じ思いの人が集まって大きな力となって行くのでしょう。
 私はまだまだ勉強不足ですが、知ってる範囲の知識で会う人たちに聴覚障害の方にとっての字幕の必要性を話しています。そして、その実現に向けての協力を求めています。現在取り組んでいるのは、TVCMへの字幕付けです。話をしていて分かったことですが、TVCMに字幕は必要ないと思っている人は少なく、ほとんどの人が気が付いていないだけです。私の話を聞いてくれた人の多くは、内容を理解してくれると同時に、CM字幕実現に向けて協力的です。まず今は、ホームページ上で字幕付きCMが見れるようにするべく取り組みを進めています。
 活動を通じて強く感じたことは、自らが動いていないと物事は進まず、人も耳を傾けてくれないということです。まずは自分自身が一歩を踏み出すことからすべては始まると考えます。バリアフリーは障害の当事者とその周囲が相互に理解し、共に歩み出すことで実現に向けて加速すると思います。「障害という個性」を持つ方々に教えられ励まされ、そして勇気づけられながら、毎日の仕事に取り組んでいる今日この頃です。すでに歩き始めてる方も、まだ歩き出していない方も、みんな一緒に歩いて行きませんか?

(ふくはらせいじ 株式会社カンバス)