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フォーラム2002

解説・身体障害者補助犬法

厚生労働省障害保健福祉部社会参加推進室

 わが国においては、障害者の日常生活を支援する動物としては、盲導犬が広く国民に知られており、現在、全国で、約900頭が活躍しています。一方、介助犬および聴導犬については、それぞれ30頭にも満たないことや、法的にも位置づけがないことから、十分に国民に知られているわけではありません。
 このため、盲導犬の同伴についてはホテル、デパート等の公共的施設や電車などの公共交通機関では、徐々に認められてきたところですが、数の少ない介助犬および聴導犬については、まだまだ円滑に受け入れられていない状況です。
 こうした状況を踏まえて、去る5月29日に「身体障害者補助犬法」および「身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律」が公布され、一部を除いて今年の10月1日から施行されることとなりました。

1 身体障害者補助犬法の目的

 この法律は、身体障害者補助犬の育成およびこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化を図ることで、身体障害者の自立および社会参加の促進に寄与することを目的としています。

2 身体障害者補助犬の定義

 身体障害者補助犬とは、盲導犬、介助犬および聴導犬の3種類の犬を指します。
 (1)盲導犬とは、道路交通法で定める盲導犬であって、厚生労働大臣が指定した法人から認定を受けているものです。ただし、当分の間は、国家公安委員会が指定した法人から認定を受けているものとなります。
 (2)介助犬とは、肢体不自由により日常生活に著しい支障がある身体障害者のために、物の拾い上げおよび運搬、 着脱衣の補助等肢体不自由を補う補助を行う犬であって、厚生労働大臣が指定した法人から認定を受けているものです。
 (3)聴導犬とは、聴覚障害により日常生活に著しい障害がある身体障害者のために、ブザー音、電話の呼出音等を聞き分け、その者に必要な情報を伝え、および必要に応じ音源への誘導を行う犬であって、厚生労働大臣が指定した法人から認定を受けているものです。

3 身体障害者補助犬の訓練事業者の義務

 訓練事業者は、身体障害者補助犬としての適性を有する犬を選択するとともに、医師、獣医師等との連携を確保しつつ、これを使用しようとする身体障害者の状況に応じた訓練を行うことにより、良質な身体障害者補助犬を育成しなければなりません。
 また、訓練事業者は、身体障害者補助犬を育成した後においても、その身体障害者補助犬の使用状況の調査を行い、必要に応じ再訓練を行わなければなりません。

4 施設等における身体障害者補助犬の同伴等

 (1)国・地方公共団体および独立行政法人、特殊法人等政令で定める公共法人(以下「国等」という)は、その管理する施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではなりません。
 また、国等は、国等の事業所等に勤務する身体障害者が当該事業所等において身体障害者補助犬を使用することおよび国等が管理する住宅に居住する身体障害者が当該住宅において身体障害者補助犬を使用することを拒んではなりません。
 (2)公共交通事業者等は、その管理する旅客施設および旅客の運送を行うための車両等を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではなりません。
 (3)不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではなりません。この部分は、平成15年10月1日より施行となります。
 (4)身体障害者補助犬には、その使用者のために訓練された身体障害者補助犬である旨を明らかにするための表示をしなければなりません。
 (5)施設等の利用等を行う場合において、身体障害者補助犬を同伴・使用する身体障害者は、その身体障害者補助犬が他人に迷惑を及ぼすことがないようその行動を十分管理しなければなりません。

5 身体障害者補助犬に係る認定等

 (1)厚生労働大臣は、身体障害者補助犬の種類ごとに、身体障害者者補助犬の訓練または研究を目的とする公益法人または社会福祉法人であって、身体障害者補助犬の認定の業務を適切かつ確実に行うことができると認められるものを指定することとなります。
 (2)指定法人は、身体障害者補助犬とするために育成された犬であって、当該指定法人に申請があったものについて、身体障害者がこれを同伴して不特定かつ多数の者が利用する施設等を利用する場合において、他人に迷惑を及ばさないこと、その他適切な行動をとる能力を有すると認める場合には、その旨の認定を行わなければなりません。

6 身体障害者補助犬の衛生の確保

 身体障害者補助犬を使用する身体障害者は、その身体障害者補助犬について、体を清潔に保つとともに、予防接種および検診を受けさせることにより、公衆衛生上の危害を生じないよう努めなければなりません。

7 国民の協力

 国民は、身体障害者補助犬を使用する身体障害者に対し、必要な協力をするよう努めなければなりません。
 身体障害者補助犬が世の中に広く受け入れられるためには、第一に国民一人ひとりの協力が必要です。そのために厚生労働省は、身体障害者補助犬法の普及・啓発に努めるとともに、身体障害者補助犬が多くの方に認知され、障害者の社会参加が促進されるための取り組みを引き続き行ってまいります。