音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

めざせ生活の達人

藤村和靜

 8月下旬の横浜駅近く、滝のような汗を流しながら電動車いすを操作している方々とご一緒した。行き先は駅から15分の社会福祉会館、ここで第6回療護施設と人権シンポ&全国交流集会が開催された。大会の主催者は療護施設自治会全国ネットワークと同職員ネットワーク、参加者は北海道から九州まで全国の療護施設利用者、職員や関係者で285人と盛況である。
 開会式、基調報告の後、シンポジウム「めざせ生活の達人! ~契約時代をどう生きるのか~」が始まる。シンポジストとして国の立場から支援費制度の趣旨や目的の説明、施設の立場からは、より良い施設サービスに向けた取り組みの紹介など。注目すべきは、その後に続いた利用者の立場からの発言。まずは自治会全国ネット会長から、行政が示す理念と事業者が取り組む姿勢、つまり「利用者本位」の考え方に事業者と利用者の間に大きな溝があるとの指摘。具体的には、集団支援の下で奪われてきたすべての個別支援を取り戻すことと訴える。続いて自立生活センター代表からは、選択できるだけの幅広いサービスを障害当事者の積極的な参加のもとで構築しなければならないと訴えた。
 その後、契約時代の権利保障、施設の選択、オンブズマンの活用や初心者講座など、支援費制度に向けた関心の高い事項をテーマにした分科会が開かれた。参加者からはさまざまな不安や疑問が寄せられた反面、自己管理や自己責任を強調した積極的な意見表明もあった。最後に、集会アピール「支援費制度に当事者の声を! ~当事者の声を結集した支援費制度の構築と新制度への当事者の自己変革~」が満場一致で採択されて2日間の幕を閉じた。
 この大会の数日前に市町村職員対象支援費セミナーが開催されていたが、基準額等の骨格は示されず、職員に焦りが目立つとの新聞報道がなされている。大詰めにきた支援費制度、とにかく利用者の声が届いていることを願うばかりである。
 シンポジウムでの「利用者主体にある溝」発言、溝の存在は否定したい。だが、ある事実を知り愕(がく)然とした。大会参加者は285人と発表があったが、配布された参加者名簿には119人の名前しか掲載されていない。主催者に確認すると、前回の大会参加が施設に知られて不都合(?)があったので、今回は名簿掲載の諾否を確認した結果であるとのこと。参加者の6割にある不都合という溝、関係者の一人として心したい。

(ふじむらかずよし 丹沢自律生活センター)