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電子投票機のバリアフリー化について

森島隆之

はじめに

 本年6月23日、岡山県新見市の市長選挙と市議会議員選挙でわが国初の電子投票による選挙が、電子投票普及協業組合のタッチパネル式電子投票システムを使用して実施されました。
 電子投票普及協業組合は、その前身である電子投票研究会から足掛け14年にわたり電子投票の研究開発を進め、この12年間に国米外で実証試験、模擬投票、さらに英国ノリッジ市における選挙実施などの演習を積み上げました。141か所で6万8000人の方々が操作した記録になります。特に視覚障害者、肢体不自由者、高齢者約1600人を対象とした実証試験を、平成13年2~3月、全国46施設・団体で実施しました。

電子投票機の開発について

 技術開発が合理・採算性を追求するあまり、かえって「バリア」となるというデジタルデバイドの解消が、電子投票システム開発の最優先コンセプトでした。開発の目的が、政治参加促進「共生」理念の実現にあったからです。そのため、前記のような実証試験を繰り返して当事者のご意見を拝聴し、専門家の方々の協力をいただき、投票方法・手段を開発した次第です。
 今後、増加かつ長寿化する高齢者の投票便宜の向上が、バリアフリーに次ぐ開発課題です。音声案内に加え、候補者の顔写真を確認画面に表示するようにしました。「記憶の減退を助け」「錯誤を防ぐ」ためです。顔写真表示は、文字による識別が不得手な聴覚障害者や知的障害者の投票も容易にします。しかし、民主党の反対で、顔写真の表示が禁止されました。バリアフリーは、当事者の熱意がなければ、第三者の提案だけでは実現しないのです。
 タッチパネル式投票なら、鉛筆を持てない肢体不自由者や、文字を書けなくなった高齢者も画面を触るだけで投票できることは、言うまでもありません。

視覚障害対応の開発

 視覚障害者が平滑なタッチパネルを操作するのは不可能ですから、専用スイッチを用意する必要があります。そのボタン数や形状などにはさまざまなご意見があり、多くのご意見をまとめて現在の形の音声投票用キーボードを開発しました。スイッチ数は、|スイッチ|機能というご意見があれば、スイッチは二つくらいに局限して機能を兼ねさせたほうがよいというご意見もあり、正反対の意見ですから、どのようにまとめたらよいか苦心しましたが、△、↑、↓、×、○のスイッチに落ち着きました。選挙で使用される回数が増えて電子投票が当たり前になり、視覚障害者が操作に習熟したら操作案内音声は簡略化できる可能性があり、現在の形が最終形ということではなく、今後も改良を加えていきたいと考えています。

今後の展望

 わが国における電子投票制度はまだ始まったばかりです。しかし、地方選挙で電子投票を認めた特例法は、正確には、バリアフリーを認めていません。
 第1回の電子投票による新見市選挙で視覚障害者対応が認められたので、今後もこの方向性は変わらないと考えられます。しかし、機器選考にあたって、米欧のように視覚障害者が参加する仕組みがありません。当事者重視の投票バリアフリーを拡充するためには、次回以降、当事者の声が反映される仕組みを当事者自身が要求して実現する必要があります。
 電子投票機器を提供する立場として、電子投票普及協業組合はバリアフリーのソリューションを用意しております。しかし、実際にどの程度のバリアフリー的要素が認められかは、地方自治体の判断に委ねられています。電子投票のバリアフリー機能を生かすには、障害をおもちの方々自身が直接地方自治体に要求する必要があります。

(もりしまたかゆき 電子投票普及協業組合運用部長)


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