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視覚障害者のコミュニケーション機器【利用者の声】
パソコンを使ったコミュニケーション

竹村昭二

 障害をもって困ったことは「何をどう伝えればいいのか分からない」ということでした。それは目が見えないために周りの人との距離感がうまくつかめず、気持ちを相手に伝えきれないもどかしさでコミュニケーションがとれなかったのです。そんな時期に電子メールとインターネットを始めましたが、パソコンの操作方法もメールの仕組みも知らずに始めたので、聞き取りにくい音声に訳の分からない専門用語と、当初は戸惑うことばかりでした。
 しかしパソコンを使うことで、障害の有無を気にすることなくコミュニケーションがとれるようになってきています。パソコンを介すると、お互いが障害を意識せずに話し合えますし、時間や相手を気にすることなく自分のペースで楽しむことができます。好きなときに書いたり読んだりできることは、直接会う場合や電話で話すことに比べて気持ちに余裕が生まれ、自分の考えを文章にして読み返すことで、客観的に捉えることもできます。何度も読み返したり書いたりしていると、不快でさえあった音声が機械的な音声から人間的な音声へと感じられるようになってくるのは不思議な感覚でした。パソコンの発する合成音が私の心に入ってくるときには、人間の声として感じられるようになってきているのです。文字として発信されたデータがパソコンによって音声に変わり、私の記憶に刻まれるときには、相手と直接話しをしていたかのように再変換されて心に残るのです。何よりメールは瞬間的なコミュニケーションではなく、継続性のあるコミュニケーション方法として大きな楽しみがあります。 
 インターネットは出かけるときの事前準備には欠かせません。外出先で行動するためには、目印や起点になるところの情報が重要ですが、準備があれば道に迷っても余裕を持った対応ができるので、心配なく外出ができます。今までは、外出するのに恐怖感さえあったものが、楽な気持ちで出かけることができるようになりました。
 まだまだ情報を検索するのに苦労しますが、視覚障害者にとって、大量の情報を自分のペースでアクセスできることは何よりもうれしいものです。インターネットの多種多才な情報の中から、自分の求めている情報を探し出したり、偶然出会った情報を元に外出する気になったりと、いろいろな魅力があります。
 パソコンを利用するようになって、気持ちにゆとりができ、以前よりも多くの情報に接しています。視覚に変われるものではありませんが、障害を補う道具として、私の生活には欠かせないものとなっています。

(たけむらしょうじ 日本ライトハウスジョイフルセンター)