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風を追いかけて!

林三千代

 私が走ることを始めたのは、3年前の11月のことでした。最初はウォーキングだったのです。というのも、毎日の通勤電車で、ふと声をかけられたのでした。
 「一緒に走ってみませんか?走るのが嫌なら歩いてみませんか?」。知り合いもたくさん走ったり歩いたりしておられたようなので、「それじゃぁ、お散歩でもいいのなら?」そんな気持ちから、10月の練習会に参加させていただくようになったのです。
 伴歩の方と、それはそれは、いろーんなお話をしながら、そよ風が肩に髪にとっても心地よかったのを、つい昨日のことのように覚えています。もちろん伴走者さんも、たくさん来ておられて、「今度の練習会では、はや歩きしてみない?」「はや歩きぐらいならできるかなぁ…」。そして11月の練習会で、はや歩きをしていただきました。
 「これなら十分走ってるって言えるよ」「えっ?こんなゆっくりで走ってるって言えるんですか?」。なにか、これまでに感じたことのない不思議な自信のようなものがわいてきたのです。「もしかして?私にも走れるかもしれない?」。
 それ以来、伴走者さんに励まされ、そして、なにより季節のうつろいを教えていただき、とっても楽しく走らせていただいています。
 春は、水色の空に溶け込むように咲いた桜のベールのその下を沈丁花の香り漂うその中を、梅雨時は、自在にその色を変えてゆく、あじさいのつぶやき、夏は、色鮮やかな、ひまわりに見守られて、秋は、情熱をたたえた曼珠沙華の咲き乱れるその中を、冬は小雪舞散る時も走っていただきました。これまで、ひとりでは感じることなどできなかった季節のうつろいを、体いっぱいで感じさせてくださる伴走者さんには、どんな言葉を尽くしても足りないくらい感謝しています。
 私のもう一つの趣味は、俳句です。俳句の手法など、なんにも知らなくて、感じたまま、思ったまましか表現できないのですが、ランで生まれた俳句もいくつかあります。
 「蒲公英の絮毛舞ふよな別れかな」
 「雨浴びてときめきを待つ七変化」
 「いつまでも走っていたい落ち葉坂」
 「小春日に誘われ君と野を駆ける」
 これらの俳句はすべて、伴走者さんに周囲の景色をお話ししていただいて生まれた句です。私ひとりでは生まれなかった句なのです。伴走者さんは、いわば、季節のメッセンジャーなのです。
 私の夢は「いつの日にかウルトラを走ってみたい」です。その日がいつかわからないのですが、これからも伴走者さんと、春は、雪柳、夏は真っ赤なサルビア、秋はコスモス咲く中を、冬はけなげに咲いた山茶花に見守られて、季節を、風を求めて駆けてゆきたいです。

(はやしみちよ 武庫川SC所属)


◆ホームページで、マラソンや俳句のことを紹介しています。メグり愛のページ
 http://www.megsweet.tuu.jp/