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国連ESCAP「アジア太平洋障害者の十年」
最終年ハイレベル政府間会合の結果について

矢野理恵子

 2002年10月25日(金)から28日(月)の4日間、滋賀県大津市において国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)による「アジア太平洋障害者の十年」最終年ハイレベル政府間会合が開催されました。以下、概要をご紹介したいと思います。
 会議には、ESCAP加盟、準加盟の27か国・地域より、閣僚級から本省課長級のメンバー、国連機関等、NGOほかより約350人の参加がありました。日本からは、矢野哲郎(やの・てつろう)外務副大臣、阿南一成(あなん・いっせい)内閣府政務官を首席代表とし、内閣府、外務省、厚生労働省、国土交通省、文部科学省等より政府代表団として参加しました。
 開会式において、キム・ハクスESCAP事務局長より歓迎あいさつがあり、阿南内閣府政務官より、小泉純一郎内閣総理大臣の開会あいさつを代読しました(あいさつ文参照)。また、受け入れた自治体を代表し、国松滋賀県知事の歓迎あいさつのほか、矢野外務副大臣からも歓迎のあいさつがありました。

(小泉総理あいさつ文)

ESCAP「アジア太平洋障害者の十年」
最終年ハイレベル政府間会合
小泉純一郎内閣総理大臣開会あいさつ

2002年10月25日(金)

 「アジア太平洋障害者の十年」最終年ハイレベル政府間会合の開催に当たり、日本政府を代表して御出席の皆様を歓迎いたします。
 本年は「アジア太平洋障害者の十年」の最終年です。この十年、我々は相互に協力しながら、障害のある人が、能力を生かし誇りをもって生活できるよう、教育、雇用、医療等の分野で積極的に取り組んできました。
 今回のハイレベル会合において、各国政府を始めとする関係者のこれまでの取組を顧みるとともに、今後の十年の障害者施策の方向性について活発な議論がなされることを期待します。
 今後も、日本政府は障害者の福祉向上に一層力を尽くします。今回の会合を契機に、障害のある人もない人もひとしく参加できる社会の実現に向けて、皆様方の一層の御尽力と御活躍を祈ります。

 さらに、八代英太「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム組織委員長より、第6回DPI世界会議札幌大会および「アジア太平洋障害者の十年」推進キャンペーン大阪会議並びに第12回リハビリテーション・インターナショナルアジア太平洋地域会議の結果を踏まえてのステートメント、福島智東大先端科学技術研究センター助教授より、ご自身の体験からの基調演説がありました。
 会議初日は開会式に続いて、阿南政務官が議長に選出されました。
 会議では三つの議題がありました。ひとつは現「アジア太平洋障害者の十年」(以下「十年」とする)のレビュー、次に「十年」行動課題のハイライトとして、障害者問題に関する立法と調整メカニズム、障害児及び障害のある青年の教育、移動の自由と独立した生活、訓練と雇用、情報・通信へのアクセス、貧困削減と農村での障害者の地域社会参加、障害者の自助団体及び障害女性に関する問題の7分野の好事例が紹介されました。
 最後に、次期十年の行動の地域的枠組みの検討がなされました。
 会議においては、各国・地域の事情や国連機関における事例、NGOからの意見など参加メンバーからさまざまな発言があり、活気あるものでした。わが国からは、議題に沿って障害者施策推進本部や身体障害者補助犬法、交通バリアフリー法、ハートビル法、盲・ろう・養護学校や障害者雇用対策について紹介しました。会場には、5メートル四方のスクリーンで国際手話通訳を写して、好評をいただきました。
 また、最終日には、阿南議長立会いのもとに、アフガニスタンが「十年」に新たに参加する署名式がアフガニスタン殉教・障害者大臣とESCAP事務局長との間で行われました。
 この政府間会合においての成果は、次期十年の地域的行動枠組みとなる「アジア太平洋障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた行動のための「びわこミレニアム・フレームワーク」(仮訳。原題は「BIWAKO MILLENNIUM FRAMEWORK FOR ACTION TOWARDS AN INCLUSIVE, BARRIER-FREE AND RIGHTS-BACED SOCIETY FOR PERSONS WITH DISABILITIES IN ASIA AND THE PACIFIC」)が、満場一致で採択されたことです。原稿を執筆している本日現在、会議で採択された文書の正本が各国・地域に配布されていませんので、残念ながら今回は全文のご案内はできませんが、概要をご紹介します(正本は英語。和文は当担当仮訳)。
 まず、タイトルにある「びわこ」ですが、この政府間会合が滋賀県大津市で開催されたことにちなんでいます。「ミレニアム」は千年紀の始まりに採択され、かつ「国連ミレニアム開発目標」を補完するように構築されていることを示しています。「インクルーシブでバリアフリーかつ権利に基づく社会」は、この枠組みの基本理念を示しています。「インクルーシブ」な社会とは、すべての人々のための社会を意味し、「バリアフリー」な社会とは、社会的、経済的、文化的なバリアのみならず、制度的、物理的、そして態度的なバリアのない社会を指しています。そして「権利に基づく」社会とは、すべての個人の人権に基づく社会を意味しています。
 この「びわこミレニアム・フレームワーク」は、そのための行動課題や目標を概説するもので、優先的領域として障害者の自助団体、女性障害者、早期対処と教育、訓練および雇用、建物環境及び公共輸送機関へのアクセス、情報通信へのアクセス、社会保障と生計プログラムによる貧困緩和の七つを掲げています。
 「びわこミレニアム・フレームワーク」は、域内各国・地域における重要な指針となるものです。政府では現在、新しい「障害者基本計画」を策定中ですが、この理念を反映させたいと考えています。

(やのりえこ 内閣府障害者施策担当障害者施策専門官)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年12月号(第22巻 通巻257号)